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第四十一話 次の航海に向けて

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 数日の間王城に通い、秋護の言葉の勉強をした結果、片言ではあるが、日常会話は問題ないくらいになっていた。

 そして、春虎と秋護が勉強をしている間に、ラジタリウスからの使者が秋護の扱いについての返事を持ってきていた。

 使者のもたらした返事は、「今後の生活の保障はする。ただし、永遠という訳にはいかない。期限はこれより5年とする。その間に、故郷に帰るなり生活手段を得るなりしてほしい。この度は、こちらの不手際でご迷惑をかけてしまい申し訳ない」と、言った内容だった。

 これを聞いた秋護は、微妙な表情をした。
 しかし、これで心置きなくゴールデン・ウルフに乗れると喜んでもいた。

 ラジタルスからの保障金はすべてギルドが管理する銀行に振り込まれることになった。
 ユリウスは、「きちんと管理するんだぞ」と忠告をしていたが秋護はギルドの銀行に振り込まれた金額を見て目を輝かせた。
 その目は、『何を買おうかなぁ~』と雄弁に語っていたのだった。

 レオールはと言うと、取引が無事に完了して肩の荷が下りたといった状態だった。
 イグニス王国側は、ラジタリウス王国から派遣される研究者を受け入れることになった。
 期間は約三年間。

 ラジタリウス王国は、魔石と魔宝石を一定数提供する事になった。
 これも期間は約三年間。研究者が技術を無事に修得した後は、格安での提供をすることも決まった。
 この取引は、事実上双方の和平協定となっていた。

 こうして、取引が終了してラジタリウスの艦隊はイグニス王国を去って行ったのだった。

 レオールはイグニス王国を去るときに、少し名残惜しそうにしながら旗艦に乗っていったのだったが、それに気がついたものは誰もいなかった。

 すべての問題が片付いたことで、ゴールデン・ウルフは再び海に出ることになった。
 船の整備は万全の状態だったので、食料の調達だけとなっていた。
 買い出しには、ユリウスと春虎の二人で行くことになった。

 ウィリアムは一緒に行くと言っていたが、ドレイクに呼び出されていて行くことが叶わなかった。
 ものすごく、ものすごく残念そうな表情で肩を落として王城に向かう姿は、ウィリアムの残念な実態を知らない女性たちには、「憂いを帯びた表情がすごく素敵」と、ウィリアムを見た女性たちは惚れ惚れした表情で見つめていたのだった。

 二人で街に行き、買い物を済ませて船に戻ると頭を抱えたウィリアムが何故かキッチンにいた。
 買い出しから戻った、春虎とユリウスはその姿を見て首を傾げた。

 ユリウスは、「何故、船長室ではなくここで頭を抱えているんだ?あっ、あれか。いつもの残念な行動か」と一人納得していた。
 春虎はと言うと、「待てないくらいお腹を空かせていたんですね」と、完全にウィリアムのことを残念な人と印象づける結果になっていた。

 ウィリアムはキッチンにやってきた二人に気が付き、顔を上げた。
 その表情は、絶望と言っていいくらいのものだった。
 顔は青ざめ、瞳は暗く光をなくしていた。
 いつものウィリアムであれば、春虎を見ると大抵の場合表情を輝かせるが、今日のウィリアムは違った。

 そんな、いつもとは違うウィリアムにユリウスは少し心配になり、声をかけた。

「おい、提督のところでなにかあったのか?」
「ユーリ……」

 いつにない、暗い表情と覇気のない声に更に心配になり、体調でも悪いのかとウィリアムの額に手をあてた。
 特に熱はないようだったが、なにか悪いことでもあったのかと理由を聞くことにした。

「おい、本当にどうしたんだ?」
「ああ、それがな……。提督に俺の呪いのことが知られてしまった……」

 ウィリアムはこの世の終わりとでも言うような表情と声で答えた。
 しかし、答えはユリウスの予想したこととは全く違うものだった。
 予想の斜め上の答えに、どう返事をしていいのか思いあぐねていると、ウィリアムは更に悲壮感が漂う調子で続けていった。

「しかも、女王陛下にも知られた……」
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