10 / 16
05 兄弟喧嘩の理由はしょうもないことだったそうです(前編)
しおりを挟む
後もう一歩というところで、メリッサからの告白を聞くことが出来なかったあの日から、二年の歳月が流れていた。
ファニスは27歳。メリッサは17歳となり、身長も伸びお似合いの二人となっていた。
告白が中断された日から、あの手この手で続きの言葉を聞こうと頑張っているファニスだが、何かしらのハプニングが起こり、なかなか聞くことが出来ないまま時だけが過ぎてしまっていた。
メリッサはというと、恥ずかしがってあの時の続きを言ってくれないどころか、とうとう一年前から一緒に寝ることも禁止されてしまっていた。
さらに、ファニスに追い打ちを掛けるかのように、お役目に着く頻度が上がり、現在では教会ではなく、屋敷で過ごすことが殆どとなっていたのだ。
そんな中、王城では第一王子が、始まりの聖女が残した秘術で異世界から力のあるものを呼ぶべきではないかという話まで出ているという。
しかし、ファニスにとってそんなことはどうでもいい話だった。
現在の問題は、どうやってあの時の続きを言ってもらうかということと、忌々しい弟をどう排除するべきかという二点のみだ。
そう、弟のフィーニスは、始まりの聖女好きが行くところまで行き、とうとう始まりの聖女研究の第一人者になっていたのだ。
その、聖女マニアの弟が召喚術の研究のためと、現在屋敷に滞在しているのだ。
メリッサは、久しぶりに再会した幼馴染のフィーニスと楽しそうに話している。
そのことが、ファニスを最悪の状態にしていたのだ。
そもそも、フィーニスは始まりの聖女が好きなのであって、準聖女が好きな訳でも、メリッサの事を女性として好きな訳でもなかった。
それは分かっているが、メリッサのためなら心の狭さは世界最小になるファニスはご機嫌斜めを通り越して、魔王と化していたのだった。
そんな、ファニスの魔王化が進むある日の昼下がりのことだった。
その日は、魔物討伐もなく、ファニスと騎士達は訓練という名の、八つ当たりで騎士団員達は泣きごとを言いながらもファニスの扱きに堪えていた。
そこに、メリッサが「みなさん、いつもありがとうございます」と、差し入れを持って現れたのだ。
それを見たファニスは、騎士達に休憩をすることを許可した。
「メリッサ、わざわざすまない。今日のお役目は?」
「ふふふ。いつも守ってもらっているし、これくらい何でもないわ。今日は、巫女の方達がやってくれているから大丈夫なんです」
「そうか、それならメリッサもここで一緒に休憩を――」
「メリッサ~。さっきの続きなんだけど~」
「フィーニス君、今行くね! お兄ちゃん、さっき言いかけた事って?」
―――フィーニスの奴、空気を読め!! 折角メリッサ成分を摂取する機会が台無しだ!! いや、召喚関係の話なら仕方なくもない……はぁ。
「いや、何でもない。フィーニスはなんて?」
「えっと、準聖女にだけ閲覧が許されている資料についていろいろ教えて欲しいって」
「そうか。第一王子からの命令だからな。頑張れよ。俺にも手伝えることがあったら遠慮なく言えよ」
「第一王子からの命令?」
「ん? 召喚関連の話しじゃないのか?」
「ううん? 始まりの聖女様の好みのタイプ? を知りたいって?」
―――思いっきり趣味の話だった!! フィーニスにはお仕置きが必要だな!
「そうか。俺もフィーニスに用事があったことを思い出した。一緒に行こうか」
そう言って、二人でフィーニスの元へ向かったのだ。
フィーニスは、メリッサの姿を見て顔を輝かせた後、その隣にいるファニスの姿を見て、顔を引き攣らせていた。
ファニスは27歳。メリッサは17歳となり、身長も伸びお似合いの二人となっていた。
告白が中断された日から、あの手この手で続きの言葉を聞こうと頑張っているファニスだが、何かしらのハプニングが起こり、なかなか聞くことが出来ないまま時だけが過ぎてしまっていた。
メリッサはというと、恥ずかしがってあの時の続きを言ってくれないどころか、とうとう一年前から一緒に寝ることも禁止されてしまっていた。
さらに、ファニスに追い打ちを掛けるかのように、お役目に着く頻度が上がり、現在では教会ではなく、屋敷で過ごすことが殆どとなっていたのだ。
そんな中、王城では第一王子が、始まりの聖女が残した秘術で異世界から力のあるものを呼ぶべきではないかという話まで出ているという。
しかし、ファニスにとってそんなことはどうでもいい話だった。
現在の問題は、どうやってあの時の続きを言ってもらうかということと、忌々しい弟をどう排除するべきかという二点のみだ。
そう、弟のフィーニスは、始まりの聖女好きが行くところまで行き、とうとう始まりの聖女研究の第一人者になっていたのだ。
その、聖女マニアの弟が召喚術の研究のためと、現在屋敷に滞在しているのだ。
メリッサは、久しぶりに再会した幼馴染のフィーニスと楽しそうに話している。
そのことが、ファニスを最悪の状態にしていたのだ。
そもそも、フィーニスは始まりの聖女が好きなのであって、準聖女が好きな訳でも、メリッサの事を女性として好きな訳でもなかった。
それは分かっているが、メリッサのためなら心の狭さは世界最小になるファニスはご機嫌斜めを通り越して、魔王と化していたのだった。
そんな、ファニスの魔王化が進むある日の昼下がりのことだった。
その日は、魔物討伐もなく、ファニスと騎士達は訓練という名の、八つ当たりで騎士団員達は泣きごとを言いながらもファニスの扱きに堪えていた。
そこに、メリッサが「みなさん、いつもありがとうございます」と、差し入れを持って現れたのだ。
それを見たファニスは、騎士達に休憩をすることを許可した。
「メリッサ、わざわざすまない。今日のお役目は?」
「ふふふ。いつも守ってもらっているし、これくらい何でもないわ。今日は、巫女の方達がやってくれているから大丈夫なんです」
「そうか、それならメリッサもここで一緒に休憩を――」
「メリッサ~。さっきの続きなんだけど~」
「フィーニス君、今行くね! お兄ちゃん、さっき言いかけた事って?」
―――フィーニスの奴、空気を読め!! 折角メリッサ成分を摂取する機会が台無しだ!! いや、召喚関係の話なら仕方なくもない……はぁ。
「いや、何でもない。フィーニスはなんて?」
「えっと、準聖女にだけ閲覧が許されている資料についていろいろ教えて欲しいって」
「そうか。第一王子からの命令だからな。頑張れよ。俺にも手伝えることがあったら遠慮なく言えよ」
「第一王子からの命令?」
「ん? 召喚関連の話しじゃないのか?」
「ううん? 始まりの聖女様の好みのタイプ? を知りたいって?」
―――思いっきり趣味の話だった!! フィーニスにはお仕置きが必要だな!
「そうか。俺もフィーニスに用事があったことを思い出した。一緒に行こうか」
そう言って、二人でフィーニスの元へ向かったのだ。
フィーニスは、メリッサの姿を見て顔を輝かせた後、その隣にいるファニスの姿を見て、顔を引き攣らせていた。
10
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる