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03 守護騎士様はマジギレしたようです(後編)
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しかし、そんなファニスとメリッサを見守る人々の中に、たまたまファニスの本性を知っている人間がいたのだ。
そう、準聖女のミリアだ。彼女は砂を噛んだような何とも言えない微妙な表情でその場をやり過ごしていた。
そしてこう思ったのだ。
―――やばぁぁい!! 着実に、メリッサの洗脳が進んでるわよ!!
そんな、きゃっきゃうふふ(?)で甘やかな毎日を過ごすファニスの幸せ空間が突如として崩れ去ることになったのだ。
何と、騎士団が教会にファニスの事で文句を言ってきたのだ。
しかし、ファニスとしては、騎士団は脱退済みで、文句を言われる筋合いはないと言ったところだだった。
ただし、騎士団側は「あの時の相談を断らなければ、優秀な副団長を失わずに済んだ」と。
「団長、俺はもう騎士団を脱退した身。そちらに何かを言われる筋合いはないのですが?」
「おいおい、俺はお前の脱退を認めたつもりはない。勝手に抜けられては困るのだ」
「別に俺がいなくても、別の団員が―――」
「そんなことはない。お前ほど、仕事熱心な団員はいないさ。だから、騎士団に戻ってこい。ここに居たってつまらんだろう? 子供のお守などお前の仕事ではない」
「…………」
騎士団長の言葉を聞いたファニスは、黙り込んだと思った途端に殺気を放っていた。
メリッサとの甘く心躍るような、薔薇色の毎日を否定されただけではなく、愛するメリッサを虚仮にされたのだ。
殺意が芽生えるのは当然とばかりに、一瞬のうちに殺気をみなぎらせたのだ。
しかし、このやりとりを見てしまったメリッサは、「自分のせいで、お兄ちゃんが怖いおじさんに責められている」と目に映ったのだ。
「おっ、おじさん!! お兄ちゃんをいじめないで!! わっ、私……、私が悪いの!!」
「ん?」
「ひっ!!」
勇気を振り絞ったメリッサがそう言ったが、それを聞いたガルドが、何事かと思い「ん?」と疑問の声を上げただけだったのだが、むくつけきおっさんにそう言われただけで、まだまだ子供のメリッサは脅えた声を上げてしまった。
これは、誰が悪いわけでもない。子供なら、だれしもがするガルドへ向ける反応だった。
ただ、この場には、メリッサ至上主義のファニスがいたことが、悲劇の始まりだった。
怯えたメリッサの声を聞いた瞬間、ファニスの身体は反射的に剣を抜いていた。
ファニスの発する殺気に警戒をしていたお陰で何とか、その一撃を防ぐ事が出来たガルドだったが、まさかファニスが本気で剣を抜くとは思っていなかったため、反応が少し遅れた。
「団長……。これは俺が決めたこと。文句を言うなら、俺だけにしてください」
そう言って、ファニスはすぐに剣を引いた。
あまりにも早い動きだったため、周りにいた人間は、ファニスが剣を抜いたことには気が付かなかった。ただ、気が付いた時には金属のぶつかる音が鳴っていて、ガルドが何故か剣を抜いて立っていたことしか分からなかっただろう。
そう、傍目にはガルドが突然凄い形相で剣を抜いたようにしか見えなかったのだ。
幼いメリッサにはその光景がとても恐ろしいものとして、目に映っていた。
「ひっ!! うっ、うわ~~~~~ん!! こっ、こわいよ~、こわいよ~~~~!!!」
次の瞬間、火が付いたようにメリッサは泣きだしていた。
これには、ファニスも、ガルドも、そしてその声が聞こえた者全員が驚いていた。
今まで、メリッサは辛いことがあっても泣くこともなく、笑顔で過ごしていた。ニコニコした顔以外では、怒ったり、むくれたりと表情をころころ変えていたが、ここまで泣きじゃくることは今まで一度もなかったのだ。
ファニスが宥めても、抱きしめて背中を優しく撫でても、泣きやむ気配がなかった。
ファニスはメリッサを優しく抱きしめていたが、泣きやまないため徐々にある一部、元凶のガルドに向けて殺気を強めて行った。それに比例するように、ガルドの顔色は、青から、白、土気色へと、変わって行った。
結局、泣き疲れて、意識を失うまでメリッサは泣き続けたのだった。
そう、準聖女のミリアだ。彼女は砂を噛んだような何とも言えない微妙な表情でその場をやり過ごしていた。
そしてこう思ったのだ。
―――やばぁぁい!! 着実に、メリッサの洗脳が進んでるわよ!!
そんな、きゃっきゃうふふ(?)で甘やかな毎日を過ごすファニスの幸せ空間が突如として崩れ去ることになったのだ。
何と、騎士団が教会にファニスの事で文句を言ってきたのだ。
しかし、ファニスとしては、騎士団は脱退済みで、文句を言われる筋合いはないと言ったところだだった。
ただし、騎士団側は「あの時の相談を断らなければ、優秀な副団長を失わずに済んだ」と。
「団長、俺はもう騎士団を脱退した身。そちらに何かを言われる筋合いはないのですが?」
「おいおい、俺はお前の脱退を認めたつもりはない。勝手に抜けられては困るのだ」
「別に俺がいなくても、別の団員が―――」
「そんなことはない。お前ほど、仕事熱心な団員はいないさ。だから、騎士団に戻ってこい。ここに居たってつまらんだろう? 子供のお守などお前の仕事ではない」
「…………」
騎士団長の言葉を聞いたファニスは、黙り込んだと思った途端に殺気を放っていた。
メリッサとの甘く心躍るような、薔薇色の毎日を否定されただけではなく、愛するメリッサを虚仮にされたのだ。
殺意が芽生えるのは当然とばかりに、一瞬のうちに殺気をみなぎらせたのだ。
しかし、このやりとりを見てしまったメリッサは、「自分のせいで、お兄ちゃんが怖いおじさんに責められている」と目に映ったのだ。
「おっ、おじさん!! お兄ちゃんをいじめないで!! わっ、私……、私が悪いの!!」
「ん?」
「ひっ!!」
勇気を振り絞ったメリッサがそう言ったが、それを聞いたガルドが、何事かと思い「ん?」と疑問の声を上げただけだったのだが、むくつけきおっさんにそう言われただけで、まだまだ子供のメリッサは脅えた声を上げてしまった。
これは、誰が悪いわけでもない。子供なら、だれしもがするガルドへ向ける反応だった。
ただ、この場には、メリッサ至上主義のファニスがいたことが、悲劇の始まりだった。
怯えたメリッサの声を聞いた瞬間、ファニスの身体は反射的に剣を抜いていた。
ファニスの発する殺気に警戒をしていたお陰で何とか、その一撃を防ぐ事が出来たガルドだったが、まさかファニスが本気で剣を抜くとは思っていなかったため、反応が少し遅れた。
「団長……。これは俺が決めたこと。文句を言うなら、俺だけにしてください」
そう言って、ファニスはすぐに剣を引いた。
あまりにも早い動きだったため、周りにいた人間は、ファニスが剣を抜いたことには気が付かなかった。ただ、気が付いた時には金属のぶつかる音が鳴っていて、ガルドが何故か剣を抜いて立っていたことしか分からなかっただろう。
そう、傍目にはガルドが突然凄い形相で剣を抜いたようにしか見えなかったのだ。
幼いメリッサにはその光景がとても恐ろしいものとして、目に映っていた。
「ひっ!! うっ、うわ~~~~~ん!! こっ、こわいよ~、こわいよ~~~~!!!」
次の瞬間、火が付いたようにメリッサは泣きだしていた。
これには、ファニスも、ガルドも、そしてその声が聞こえた者全員が驚いていた。
今まで、メリッサは辛いことがあっても泣くこともなく、笑顔で過ごしていた。ニコニコした顔以外では、怒ったり、むくれたりと表情をころころ変えていたが、ここまで泣きじゃくることは今まで一度もなかったのだ。
ファニスが宥めても、抱きしめて背中を優しく撫でても、泣きやむ気配がなかった。
ファニスはメリッサを優しく抱きしめていたが、泣きやまないため徐々にある一部、元凶のガルドに向けて殺気を強めて行った。それに比例するように、ガルドの顔色は、青から、白、土気色へと、変わって行った。
結局、泣き疲れて、意識を失うまでメリッサは泣き続けたのだった。
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