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第七話 対価

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 五日目の朝、ようやく繭の中からシエルが姿を現した。
 それを知ったジルトールと国王は、シエルに詰め寄ったのだ。


「シエル! どうなっているんだ!! あのケダモノたちを早く元の場所に戻せ!!」

「貴様! なんてことをしてくれたんだ!! あんな化け物どもを呼び出すだなんて……」


 ジルトールは、胸ぐらを掴んでシエルを締め上げながら喚き散らしたのだ。
 国王も、顔を真っ青にして喚き散らしていた。

 それに対してシエルは、魔法でジルトールの締め上げてくる手を弾いてから、心底面倒くさそうに髪を払いながら言ったのだ。


「無理です。それに、すぐに彼らは大人しくなります」


 そう言って外を指さしたのだ。
 それに釣られるようにして外を見ると、いつの間にかあれほど騒がしかった外が静かになっていたのだ。

 外を覗くと、あれだけ暴れていた英雄たちが何故か屍となっていたのだ。
 そんな光景に驚くジルトールたちにシエルは、心底楽しそうに言ったのだ。


「いいことを教えてあげます。実は、私たちの一族が使う魔法は、命を対価にするんですよ。そして、今回召喚した英雄たちがこの世界で活動するために、私の命を彼らに分け与えていたんですよ? なので、あの人数に分け与えられる命は、5日が限界でした。くすくす。この意味、いくら頭の悪い殿下でも、もうお分かりですよね?」


 その言葉を聞いたジルトールは、瞬時に理解して顔を蒼くさせたが、それを見たシエルは、心底楽しそうな表情で、口元を三日月のように歪めて言ったのだ。


「くすくす。あはははは!!! さぁ、英雄召喚という約束は果たしました。そろそろ対価をいただきましょう!」


 そう言って、手を天に向かって伸ばしたのだ。
 すると、シエルの手から光の糸が国中にあっという間に伸びていったのだ。


「くすくす。殿下、そして、哀れなこの国に住まう者たちよ。お前たち全員の命を頂戴しましょう!!!」


 シエルの手から伸びた糸は、この国に生きる全ての人間に伸びていた。
 そして、その糸を伝って、命がシエルに流れていったのだ。
 それを見たジルトールは、慌てて縋るようにしてシエルに言ったのだ。


「おい! 少しだけって言ったよな? なぁ?」


 そう言って、表情を蒼くさせて震えるジルトールにシエルは、心底楽しそうに言ったのだ。


「はい。少しだけ残して、あとは全部いただきますね」

「はぁ?!」

「くすくす。私、ちゃんと言いましたよ。少しだけって」

「馬鹿を言うな! そう言われたら普通は、貰うのが少しって意味だと思うだろうが!!」

「まぁ。私は、少し残して後は頂戴するという意味で言ったんですよ?」

「そんなバカな!!」

「くすくす。ちゃんと確認しないあなたが悪いんですよ?」


 絶望に表情を歪めるジルトールを見たシエルは、思い出したかのように付け加えて言ったのだ。



「そうそう、不公平にならないように、皆さん等しく5日の寿命を残して、あとの寿命を全て頂戴しましたから」



 そう言ったシエルは、楽しそうに言い残して、優雅に手を振りながら煙のように消えてしまったのだった。




「殿下、精々苦しんでくださいね」


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