38 / 40
第三十八話 sideラヴィリオ
しおりを挟む
ゴミカス? まさかこの女、ティアリアのことをそう呼んでいるんじゃないよな?
そう思ったのと同時に、俺はマリーデ・ディスポーラの髪を掴む力が強まっていた。
「あぎゃーー!! いだい!! はなぢで!!」
マリーデ・ディスポーラは、涙と鼻水を流しながらそう言って許しを請う。
そんな物は聞き流した俺は、マリーデ・ディスポーラに質問という名の尋問をする。
「正直に答えろ。さもないと、容赦しない。嘘を言っていると俺が感じたら、その時点で手足をへし折るからな」
「ひっ! わ、分かりました! だから手を放してください!!」
「駄目だ。それよりも、早く楽になりたいのなら正直に聞かれたことにだけ答えろ」
「ぁぁ……。わかりました……」
大人しくなったマリーデ・ディスポーラに俺は、ティアリアのことを質問してく。
「ティアリアの腕を奪った理由は?」
「あのご……」
マリーデ・ディスポーラがティアリアのことをゴミカスと呼ぶことが許せない俺は、髪を掴む力を強くする。
「あの子は、生まれた時から信じられないくらいの魔力を持っていました。その魔力がわが国には必要だったのです。だから、あの子から腕を奪いました……」
「魔力なら魔鉱石で賄えるはずだ」
「魔鉱石ではダメなのです」
「何が駄目なのだ」
「…………」
「言え」
言い渋るマリーデ・ディスポーラは、ディスポーラ王国の重大な秘密を吐き出す。
「我が国を守っている結界が弱ったのです! そんな時、あの子が生まれたのです。しかも、巨大な魔力を持って! 誰もが思ったわ! あの子がこの国を守る結界の力を強奪して生まれてきたのだと!! だから、あの子は償わなければならないのよ!! 仕方がなかったのよ。我が国は結界がなければすぐに近隣の国に攻め入られて滅んでしまう! だからあの子が三つになった時、結界の核となるように儀式を執り行ったのよ!! 儀式は成功したわ!! 近年弱り続けていた結界の硬度が蘇ったわ!! だけど、人間を生きたまま核にするのは向かなかった……。だから、あの子の左目に魔力を込めさせて、左目を核に据えることにしたのよ。想像通り、結界は安定して硬度を保ったわ。でも、魔力の込め方が弱かったみたいで、数年で硬度が弱っていくのが分かった。だから、次は右目を!」
マリーデ・ディスポーラの話が頭に入らなかった。
生きたまま核にした? 核にするために左目を奪った? 力が弱まったから今度は右目を奪った?
この女は何を言っているんだ……。
何を……。
「それで、今度は腕に魔力を込めさせて、腕を奪ったとでも言うのか?」
「ええ、そうよ。今まで、中途半端に魔力を込めさせたから長持ちしなかったんだと結論付けたわ。だから、根こそぎ奪うことにしたわ。そのお陰で結界は全盛期の硬度を取り戻したはずだった……。なのに……。なのにどうして? 結界は生きているはずよ? どうして帝国軍がここまで入ってこられたのよ!!」
「知らん。それよりも、ティアリアから奪ったものを返してもらうぞ」
「い……。嫌よ! 駄目よそんなの!!」
今この状態でもそんなことをほざくマリーデ・ディスポーラへの憎悪が限界に達していた。
右手を振り上げて、マリーデ・ディスポーラの両手を拳で打ち抜く。
骨の砕ける感覚が拳にあったが、俺は何度も拳を振り降ろしていた。
気が付くと、ジーンに後ろから羽交い絞めにされていた。
「悪い。我を忘れていた。マリーデ・ディスポーラは?」
「生きてます。辛うじて……」
「はぁ……。水をかけてマリーデ・ディスポーラを叩き起こせ」
「承知しました」
水を掛けても頬を打っても目を覚まさないマリーデ・ディスポーラは放置することに決めた俺は、ベッドの上で放心状態の国王の元に近づいた。
「結界の核の場所を言え」
「ひっーーっい!!」
震える国王にもマリーデ・ディスポーラと同様に拳を振り上げたが、その拳を振り下ろすことはなかった。
「城の地下だ! 一番奥深いところにある!!」
「分かった。そこまで案内しろ」
そう言って、震える王を引きずって結界の中心だという場所に向かった。
王城の地下深くにその扉はあった。
禍々しい紋様が施された巨大な石造りの扉。
帝国兵が数人がかりでそしても開かないそれは、王が扉に触れると簡単に開いたのだ。
そして俺はその光景に目を見開く。
赤黒く禍々しい光を帯びる魔方陣の中心に、キラキラと輝く二つの宝石と華奢な腕があったのだ。
紫色に輝く二つの宝石……。その正体は、ティアリアの瞳だった。
俺がティアリアの両目と右腕に近づくと、それまで禍々しい光を放っていた魔方陣がチカチカと明滅し始めた。
不思議には思ったが、何故かそれが俺を害する気がしなかった。
だから、惹かれるように俺はその魔方陣の中に進んで入っていたのだ。
その中は信じられないくらい温かく、優しい空気をまとっていた。
俺は、マントにティアリアの両目と右腕を包んでその場から立ち去る。
そのとたん、魔方陣は光を失い、それまで感じていた魔力も全く感じられなくなっていた。
王は、俺が魔方陣の中心からティアリアの両目と右腕を持ち出したのを見るとその場に崩れ落ちていた。
そう思ったのと同時に、俺はマリーデ・ディスポーラの髪を掴む力が強まっていた。
「あぎゃーー!! いだい!! はなぢで!!」
マリーデ・ディスポーラは、涙と鼻水を流しながらそう言って許しを請う。
そんな物は聞き流した俺は、マリーデ・ディスポーラに質問という名の尋問をする。
「正直に答えろ。さもないと、容赦しない。嘘を言っていると俺が感じたら、その時点で手足をへし折るからな」
「ひっ! わ、分かりました! だから手を放してください!!」
「駄目だ。それよりも、早く楽になりたいのなら正直に聞かれたことにだけ答えろ」
「ぁぁ……。わかりました……」
大人しくなったマリーデ・ディスポーラに俺は、ティアリアのことを質問してく。
「ティアリアの腕を奪った理由は?」
「あのご……」
マリーデ・ディスポーラがティアリアのことをゴミカスと呼ぶことが許せない俺は、髪を掴む力を強くする。
「あの子は、生まれた時から信じられないくらいの魔力を持っていました。その魔力がわが国には必要だったのです。だから、あの子から腕を奪いました……」
「魔力なら魔鉱石で賄えるはずだ」
「魔鉱石ではダメなのです」
「何が駄目なのだ」
「…………」
「言え」
言い渋るマリーデ・ディスポーラは、ディスポーラ王国の重大な秘密を吐き出す。
「我が国を守っている結界が弱ったのです! そんな時、あの子が生まれたのです。しかも、巨大な魔力を持って! 誰もが思ったわ! あの子がこの国を守る結界の力を強奪して生まれてきたのだと!! だから、あの子は償わなければならないのよ!! 仕方がなかったのよ。我が国は結界がなければすぐに近隣の国に攻め入られて滅んでしまう! だからあの子が三つになった時、結界の核となるように儀式を執り行ったのよ!! 儀式は成功したわ!! 近年弱り続けていた結界の硬度が蘇ったわ!! だけど、人間を生きたまま核にするのは向かなかった……。だから、あの子の左目に魔力を込めさせて、左目を核に据えることにしたのよ。想像通り、結界は安定して硬度を保ったわ。でも、魔力の込め方が弱かったみたいで、数年で硬度が弱っていくのが分かった。だから、次は右目を!」
マリーデ・ディスポーラの話が頭に入らなかった。
生きたまま核にした? 核にするために左目を奪った? 力が弱まったから今度は右目を奪った?
この女は何を言っているんだ……。
何を……。
「それで、今度は腕に魔力を込めさせて、腕を奪ったとでも言うのか?」
「ええ、そうよ。今まで、中途半端に魔力を込めさせたから長持ちしなかったんだと結論付けたわ。だから、根こそぎ奪うことにしたわ。そのお陰で結界は全盛期の硬度を取り戻したはずだった……。なのに……。なのにどうして? 結界は生きているはずよ? どうして帝国軍がここまで入ってこられたのよ!!」
「知らん。それよりも、ティアリアから奪ったものを返してもらうぞ」
「い……。嫌よ! 駄目よそんなの!!」
今この状態でもそんなことをほざくマリーデ・ディスポーラへの憎悪が限界に達していた。
右手を振り上げて、マリーデ・ディスポーラの両手を拳で打ち抜く。
骨の砕ける感覚が拳にあったが、俺は何度も拳を振り降ろしていた。
気が付くと、ジーンに後ろから羽交い絞めにされていた。
「悪い。我を忘れていた。マリーデ・ディスポーラは?」
「生きてます。辛うじて……」
「はぁ……。水をかけてマリーデ・ディスポーラを叩き起こせ」
「承知しました」
水を掛けても頬を打っても目を覚まさないマリーデ・ディスポーラは放置することに決めた俺は、ベッドの上で放心状態の国王の元に近づいた。
「結界の核の場所を言え」
「ひっーーっい!!」
震える国王にもマリーデ・ディスポーラと同様に拳を振り上げたが、その拳を振り下ろすことはなかった。
「城の地下だ! 一番奥深いところにある!!」
「分かった。そこまで案内しろ」
そう言って、震える王を引きずって結界の中心だという場所に向かった。
王城の地下深くにその扉はあった。
禍々しい紋様が施された巨大な石造りの扉。
帝国兵が数人がかりでそしても開かないそれは、王が扉に触れると簡単に開いたのだ。
そして俺はその光景に目を見開く。
赤黒く禍々しい光を帯びる魔方陣の中心に、キラキラと輝く二つの宝石と華奢な腕があったのだ。
紫色に輝く二つの宝石……。その正体は、ティアリアの瞳だった。
俺がティアリアの両目と右腕に近づくと、それまで禍々しい光を放っていた魔方陣がチカチカと明滅し始めた。
不思議には思ったが、何故かそれが俺を害する気がしなかった。
だから、惹かれるように俺はその魔方陣の中に進んで入っていたのだ。
その中は信じられないくらい温かく、優しい空気をまとっていた。
俺は、マントにティアリアの両目と右腕を包んでその場から立ち去る。
そのとたん、魔方陣は光を失い、それまで感じていた魔力も全く感じられなくなっていた。
王は、俺が魔方陣の中心からティアリアの両目と右腕を持ち出したのを見るとその場に崩れ落ちていた。
10
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢を演じて婚約破棄して貰い、私は幸せになりました。
シグマ
恋愛
伯爵家の長女であるソフィ・フェルンストレームは成人年齢である十五歳になり、父親の尽力で第二王子であるジャイアヌス・グスタフと婚約を結ぶことになった。
それはこの世界の誰もが羨む話でありソフィも誇らしく思っていたのだが、ある日を境にそうは思えなくなってしまう。
これはそんなソフィが婚約破棄から幸せになるまでの物語。
※感想欄はネタバレを解放していますので注意して下さい。
※R-15は保険として付けています。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
転生した悪役令嬢は破滅エンドを避けるため、魔法を極めたらなぜか攻略対象から溺愛されました
平山和人
恋愛
悪役令嬢のクロエは八歳の誕生日の時、ここが前世でプレイしていた乙女ゲーム『聖魔と乙女のレガリア』の世界であることを知る。
クロエに割り振られたのは、主人公を虐め、攻略対象から断罪され、破滅を迎える悪役令嬢としての人生だった。
そんな結末は絶対嫌だとクロエは敵を作らないように立ち回り、魔法を極めて断罪フラグと破滅エンドを回避しようとする。
そうしていると、なぜかクロエは家族を始め、周りの人間から溺愛されるのであった。しかも本来ならば主人公と結ばれるはずの攻略対象からも
深く愛されるクロエ。果たしてクロエの破滅エンドは回避できるのか。
前世のことも好きな人を想うことも諦めて、母を恋しがる王女の世話係となって、彼女を救いたかっただけなのに運命は皮肉ですね
珠宮さくら
恋愛
新しい試みで創られた世界で、何度も生まれているとは知らず、双子の片割れとして生まれた女性がいた。
自分だけが幸せになろうとした片割れによって、殺されそうになったが、それで死ぬことはなかったが、それによって記憶があやふやになってしまい、記憶が戻ることなく人生を終えたと思ったら、別の世界に転生していた。
伯爵家の長女に生まれ変わったファティマ・ルルーシュは、前世のことを覚えていて、毎年のように弟妹が増えていく中で、あてにできない両親の代わりをしていたが、それで上手くいっていたのも、1つ下の弟のおかげが大きかった。
子供たちの世話すらしないくせにある日、ファティマを養子に出すことに決めたと両親に言われてしまい……。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる