錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

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第二部

第57話 野生の変質者が現れた!!

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 玄関の扉を開いた途端、何ものかに抱きつかれて驚きの声を上げた。
 その声を聞き付けた駆君とタイガ君があっという間に駆けつけてくれたのだが、見知らぬ人物に抱きつかれている私を見て駆君が思いのほか大きな声で謎の人物に怒鳴りつけたのだ。

「てめぇ!!ブチ殺す!!」
「どなたか知りませんが、僕の大切な小春さんに不届きな真似をするなんて命がいらないみたいですね」

 タイガ君に至っては、いつもよりも低い声で謎の人物に話しかけた。雰囲気が凄く怖いんですけど。
 二人は、私と私に抱きつく人物の間に入って私を隠すように対峙していた。
 二人の剣幕に驚いたその人は慌てていい訳を始めたので大人しく聞くことにした。

「すみません。こちらから聖女の匂いがしたものでつい。衝動を抑えられずに。悪気はないんです。ただ、聖女が好きなだけな善良な一市民なんです!」
「この変質者が」
「騎士団に突き出しましょう」
「そうだな。念のため何かで拘束しておくか」
「二人とも待って!善良な市民って言ってるし、今回は何かされたわけでもないから突き出すのはかわいそうだよ」
「小春、何かされてからじゃ遅いんだ。それに抱きつかれただろうが!」
「そうです。前科有です。有罪です。死罪です」
「でも……」

 私達が玄関先で揉めていると、いつまでも戻らない私達を心配して五人がやってきて、高遠君がこちらの様子を聞いてきた。

「お~い。何かあったのか?」
「変質者だ。何か縛れるようなものを持ってきてくれ」
「お、おおぅ。何か縛れるものだな?待ってろ」

 二人の短いやり取りの間も、タイガ君は冷たい視線で謎の人を睨みつけていた。だけど、この人が聖女が好きだということを思い出した私は、ここに二人も聖女がいることを思い出して、武藤さん達が危険だと思い、二人に「変質者さん?は二人を狙っているかも知れないの、だからこっちに来ちゃ駄目。危ないわ」と声をかけてこちらに来ないように警告をした。
 でも、それが迂闊な行動だったと後で気が付いたけど、もう遅かったわ。

「ん?まさか向こうに聖女が!」

 しまった!と思ったときにはもう遅かった。駆君とタイガ君が捕まえていたはずなのに、二人の拘束をどうやったのか分からないけど、いつの間にか抜け出して家の中に入って行ってしまった。
 二人が危ないと思ったときには、駆君達が駆けだしていた。

「聖女は?聖女はどこですか!!」

 あれ?武藤さん達が近くにいるのに気が付いていないみたい。なんでだろう?そんなことを考えていると、再度駆君達に押さえつけられていた。

「これ以上罪を増やすと後が大変だぞ」
「不法侵入で、死罪確定ですね」
「タイガ君、不法侵入くらいで死罪にはならないと思うよ?」
「いやいやいや、今そこ突っ込むところじゃないよね?」

 何故か、高遠君に突っ込まれてしまった。解せない。何故なの?

「待ってください!ボクは無罪です!!ただ、聖女の匂いにつられた善良な市民なんです!信じて下さい!!!」
「善良な市民は、匂いにつられて少女に抱きついたり、不法侵入なんてしないぞ」
「そうですね。いい訳は騎士団でしてくださいね」

 そう言って、駆君とタイガ君はあっという間に高遠君が持ってきた布でその人をす巻にして拘束した。
 そんなことをしていると、いつの間にか進藤君が騎士団の人を連れて来てくれたみたいで、その人を引き渡すことになった。

「こんばんは。変質者が出たと聞いたんですが……」
「ボクは変質者じゃないよ!!」
「あれ?フィーニスさんじゃないですか!!またやらかしたんですか!!」

 駆けつけてくれた騎士の人は、変質者もとい、フィーニスさん?を知っているようなのだ。もしかして、あの口ぶりからすると常習犯……。

「すみません。俺じゃ判断出来ないので至急副団長を呼んできます!!」

 そう言って何故かファニスさんを呼びに行ってしまった。残された私達は、疑問に思いながらも、ファニスさんを待つしかなかった。

 急いできてくれたのか、すぐにファニスさんが来てくれた。けど、ファニスさんの他に何故かガルドさんと、凄く息が上がったジョエルさんがいたのだ。
 そして、家に着くなり三人は私達にものすごい勢いで頭を下げて言ったのだ。

「「「この大馬鹿者がご迷惑をお掛けしました。申し訳ございません!!!!」」」
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