錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
56 / 71
第二部

第56話 堪忍袋

しおりを挟む
 定休日は結局、何でもない一日となった。
 でも、一日ゆっくり出来たので、今日のカフェ営業はばっちりな予感しかないわね。
 そんなことを思っていた時期が私にもありました。

「想像以上の混み具合で言葉が無いよ」
「そうだな……」
「そうですね……。ここまで混みあうなんてなめてました」

 そう、お店を開くと同時に開店前から並んでいたお客さんが店にどんどん入り、ランチとケーキをどんどん頼み、あっという間に用意していたランチは売り切れてしまった。
 ランチは、甘いものがあまり得意ではない、ケーキ目当てのお客さんのお連れの方用にと考えていたので、そこまで数を用意していなかったのだ。
 ところが、ケーキを頼むお客さんがランチも美味しそうと頼みだしたらあっという間に用意していた分が売り切れてしまったのだ。

 そして、ケーキも大目に準備したと思っていたが、こちらもあっという間に完売してしまったのだ。
 そのため、閉店時間を待たずにお店を閉めることとなった。
 さらに、三人でお店が回らないという問題点も出てきている。
 私は、常にキッチンで調理をしている状態で、駆君とタイガ君の二人で対応している状態なのだ。

 閉店後、早速今日の問題点について話し合った。

「ランチ増やさないと全然だめね」
「客対応が俺とタイガだけじゃ間に合わん」
「行列も思ったより減らなかったですね」

 三人でそんなことを話して同時にため息をついた。
 お店を手伝ってもらえそうな心当たりもない状態なので、このまま頑張るしかないということで、現状を打破できるような意見も出ずに話し合いは終わったのだった。

 お店の混雑が解消しないまま、数日がたった。今も閉店前に店じまいをする状況に変わりがなかった。
 そして、もうひとつ問題が起こっていた。
 そう、休暇中の五人が現在もうちにいることが問題になっていた。
 ジョエルさんから、五人に戻ってくるように何度も要請が来ているんだけど、「もうちょっと」と言って、数日が経ってしまっていた。

 五人に、お役目が嫌になったのか聞いたら、「ここが居心地がよくて、あそこに戻れなくなった」と五人が言っていたので、少し責任を感じなくもない?いや、そうでもない?
 でも、このことに駆君の堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。

お前らニート共!!いい加減に働け!!」
「駆君、落ち着いて」
「駆の気持ちは分かるよ……。僕達が毎日へとへとになって働いているのに、三食小春さんに食べさせてもらって、何もしないとなるとちょっとね」

 あれ、タイガ君も怒ってる?なんだか、雰囲気が凄く悪くなってしまったわ。どうにかして、丸く収めないといけないわ。そんなことを思っていると、来客を告げるチャイムが鳴ったので、玄関に向かった。

「は~い。どちら様ですか?」

 そう言って玄関を開けるなり私は何者かに突撃されて小さく悲鳴を上げた。

「あなたが聖女ですか!!」
「ふきゃ!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

傷だらけの令嬢 〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

m
恋愛
母親が亡くなり、父親の遣いを名乗る者が訪ねてきて貴族の邸宅に引き取られることになったソフィア。 戸惑いながらも、会ったことのない家族との生活に期待を膨らませていた。 そんなソフィアの心を、父と義姉の容赦ない罵声が打ち砕く。 「おまえはここで死ぬまで働くのだ!」 「邪魔よっ。あなたの顔を見ると虫唾が走るわ」 不遇な境遇の中から逃げ出そうともがき、 初めて人の優しさに触れるソフィア。   幸せを夢見るソフィアが幸せを掴むまで。 暴力シーンや襲われそうになるシーンあります。苦手な方はお気をつけ下さい。R指定は念の為です。 時々文章改稿や、追加しています。 ご容赦ください 第二部完結しました

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい

海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。 その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。 赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。 だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。 私のHPは限界です!! なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。 しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ! でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!! そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような? ♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟ 皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います! この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう
ファンタジー
書籍1~8巻好評発売中!  コミカライズ連載中! コミックス1~3巻発売決定! ビッグバロッグ王国・大貴族エストレイヤ家次男の少年アシュト。 魔法適正『植物』という微妙でハズレな魔法属性で将軍一家に相応しくないとされ、両親から見放されてしまう。 そして、優秀な将軍の兄、将来を期待された魔法師の妹と比較され、将来を誓い合った幼馴染は兄の婚約者になってしまい……アシュトはもう家にいることができず、十八歳で未開の大地オーベルシュタインの領主になる。 一人、森で暮らそうとするアシュトの元に、希少な種族たちが次々と集まり、やがて大きな村となり……ハズレ属性と思われた『植物』魔法は、未開の地での生活には欠かせない魔法だった! これは、植物魔法師アシュトが、未開の地オーベルシュタインで仲間たちと共に過ごすスローライフ物語。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

処理中です...