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第二十二話 レイナードさんって、実はすごい人だったの?

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 僕が朝目を覚ました時、昨日何か大変なことがあったような気がしたけど、思い出してはいけないという誰かというか、僕自身の警告を受けて、深く考えることをやめたのだ。
 ベッドの上で伸びをしてから、枕元にいるレイトを抱き寄せて、その柔らかさを堪能した。
 思う存分もふった僕は、ベッドを降りて台所に向かった。
 それはもちろん朝食の準備をするためだよ。
 
 鼻歌交じりで朝ご飯を準備していると、朝の鍛錬をしていたのだろう一生とレイナードさんが現れた。
 汗を流してきたのか、二人からは石鹸の匂いがしていた。
 二人の視線は気になったけど、それよりもご飯の準備を優先させる。
 今日のメニューは、焼き立てのパンとサラダ、スープ、ベーコンエッグにした。
 ちょうど準備ができたところで、クライブさんもやってきた。
 
「ハルキ君、おはよう。よく眠れたようでよかったよ」

 そう言って僕に微笑んだクライブさんは、すでに屋敷内の掃除と洗濯を終えた後だという。
 
 全員揃ったところで食べ始めると、レイナードさんが僕たちの予定を確認してきた。
 僕が答える前に一生がレイナードに向かって今日の予定を話していた。
 
「今日は、ギルドで依頼を確認して、良いのがあればそれを受ける予定だ。陽騎もそれでいいだろう?」

 僕はそれで異存はなかったから、頷いて見せた。
 僕の反応を見た一生は、話は終わりだとばかりに食事に戻っていった。
 
 朝食後、食休みを挟んでから僕と一生は冒険者ギルドに向かっていた。
 だけど、何故かレイナードさんも僕たちについてきていた。
 レイナードさんをチラ見しながら歩いている僕だったけど、一生に注意されてしまった。
 でも、注意だけでは終わらず、僕は一生にお子様のように扱われるという屈辱も味わうことになってしまったんだ。
 
「こら、陽騎。後ろばっかり見てると転ぶぞ。仕方ない。ん」

「えっ……」

「だから手、だせ」

 そう言って、一生は僕の手を強引に繋いできたんだ。
 もう、恥ずかしいったらないよ。
 この年になって、迷子防止みたいに手を繋がれるだなんて……。でも、よそ見をして転んだら、それはそれで恥ずかしいもんな。
 それでも、僕は一生に抗議せずにはいられなかった。
 
「大丈夫だから、放せってば」

「駄目だ。陽騎は、危なっかしくて、俺が一生面倒見ないとな」

「はぁ……、一生って、大げさだよ」

「いいや。これ本気のマジだから」

「いやだよ。もしかして、お前が可愛いお嫁さん貰っても、僕は面倒見続けられるってこと? ないない」

「いや、どちらかと言うと、陽騎がよめ―――」

「あっ、一生! あそこにあるのって、カボチャかな? もしそうなら、買って帰って、いろいろ作りたいかも。はっ、ごめん。話遮って。それで、なんだっけ?」

 僕が一斉に話の流れをぶった切ってしまったことを謝ったんだけど、ほっぺたをむにってされてお仕置されてしまった。
 僕が悪かったけど、ちょっとひどくない?
 
 だけど、後ろを歩いていたレイナードさんは、そんな僕と一生を見て、声には出してなかったけど、すごく笑っていたことだけは分かる。
 だって、すっごくレイナードさんの肩が震えてたんだもん。
 
 僕が、一生にほっぺたをむにむにされている間に、目的地の冒険者ギルドに到着していた。
 
 いつも通り、冒険者ギルドに入ったんだけど、今日はなんか騒がしい気がした。
 首を傾げつつも、一生と依頼の貼られて掲示板を見に行く。
 いい仕事がないかと、目を通していると、背後のひそひそ話が僕の耳に入ってきたのだ。
 
「なぁ、あれって……」

「ああ。S級の中でも最強と名高いレイナードだよな……」

「帰ってきてたんだな。俺はてっきり、もっと時間がかかると思っていたが、流石S級様だぜ」

「てことは、美味しい仕事は、やつに持っていかれちゃまうか……。まぁ、実力的にそうなっても仕方ないが……」

 そんな、ひそひそ話が聞こえてきたんだ。
 っていうか、レイナードさんって、超凄い冒険者なんだ。
 そう言えば、レイナードさんって、何者なの?
 あんなでっかい豪邸に住んでて、すごい冒険者で……。もしかしなくてもレイナードさんって、すごい人なのかも?
 そんな人のところにお世話になっても大丈夫なのかな?
 僕がそんなことを考えていると、一生が僕のほっぺたを突いて言うのだ。
 
「気にすることない。レイナードが俺たちに来いって言ったんだ。あいつがどんな人間だって関係ないさ。あいつは、ただの家主・・だ。だから、気にせず、追い出されるまで厄介になろうぜ。とは言ったが、あいつが陽騎を追い出すことは一生ないだろうけどな」

 最後の方は小声で聞こえなかったけど、一生の言葉に僕も頷いていた。
 うん。そうだよね。レイナードさんは、家に住まわせてくれるいい人ってことに変わりないもんな。

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みんなの感想(3件)

🍵抹茶🍵
2023.09.01 🍵抹茶🍵

とても好みでつい一気見しちゃいました😳❗
続き楽しみにしてます☺️💕

バナナマヨネーズ
2023.09.04 バナナマヨネーズ

🍵抹茶🍵様

お読みいただきありがとうございます。
ちゃんと完結まで書く予定ですので、お待たせしてしまうと思いますが、お待ちいただけると嬉しいです(*'▽')

解除
アキ
2021.10.08 アキ

続き待ってます!!

バナナマヨネーズ
2021.10.09 バナナマヨネーズ

アキ様
コメントありがとうございます。
うわ~、ありがとうございます(*'▽')
更新再開できるように感がります~。

解除
アキ
2020.11.07 アキ

続きが、はやくよみたいです!

バナナマヨネーズ
2020.11.29 バナナマヨネーズ

アキ様
お読みいただきありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ございません<(_ _)>
不定期気味ですが、連載を再開していくので楽しみにしていてくださいね('ω')ノ

解除

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