上 下
19 / 22

第十九話 三人は仲良し?

しおりを挟む
 その後、仲のよさそうな三人のやり取りをなんとなく見守っていた僕だったけど、手持無沙汰だったからって訳ではないけど、台所にある教えてもらったばかりの調理道具の数々を試したかったこともあって、持っていた食材で夕飯の支度をしていたんだよね。
 
 こっちの世界にもチーズはあるみたいなんだけど、あまり人気のない食材らしくて、生産量がすごく少なくて売っているのをあまり見なんだよね。
 前にお店の人に聞いたら、卸している牧場の老夫婦の趣味でたまに牛乳とかと一緒に置いているんだって。
 でも、買う人がいないからいつも売れ残っていて困っているけど、昔からの付き合いのある牧場の老夫婦からのものだと思うと、無下にもできずにいつも売れ残ったものを買い取っていたんだとお店のおじさんが言っていたっけ。
 そんなことを思いながらピザ用の生地を捏ねてから、トマトソースを簡単に作った。
 台所にあったベーコンとピーマンを少し貰ってトッピングしていく。
 それからチーズの塊を削ってピザの上にたっぷりとかけてからオーブンに入れたら、あとは焼きあがるのを待つだけ。
 待っている間に、適当にサラダも作った。
 うん、いい匂いがしてきた。
 
 料理に夢中で気が付かなかったけど、いつの間にか三人が台所から居なくなっていたことにピザが焼けたところで気が付いたんだよね。
 でも、匂いに誘われたのか、オーブンからピザを取り出したところで、三人が仲良く顔を出したんだよ。
 その三人は、何をしていたのか髪は乱れていて服も汚れていた。まるで魔物と戦ったような汚れ具合。でも、ここに魔物なんている訳もないし。部屋の掃除でもしていたのかな?
 そうだよね、こんなに広い屋敷をクライブさん一人で管理しているんだもんね。
 今日はもう遅いから無理だけど、明日掃除を手伝おう。
 僕がそんなことを考えていると、三人仲良く同時に言ったんだ。
 
「陽騎は、俺と同室がいいよな?」

「ハルキは、私と一緒の部屋で寝起きしたいよね」

「ハルキ君は、私と一緒の部屋で過ごしたいですよね?」

 同時に誰と一緒の部屋がいいのかと聞かれた僕は、考える間もなく言っていたよ。
 
「えっ? ひとり部屋がいいんだけど?」

 だって、こんなに広い屋敷なんだから、誰かと同室ではなく一人部屋がいいに決まっているよ。
 でも、家主のレイナードさんがダメだっていうなら諦めるけどさ。
 そんなことを考えていたら、何故か三人とも崩れ落ちるようにして膝を付いていた。
 
 僕は、そんな三人に笑みを浮かべながら言っていた。
 
「くすくす。そんなにお腹が減っていたなら言ってくれればいいのに。今、ピザが焼けたからご飯にしよう」

 そう言って、三人ににこって笑いかけたら、三人ともなんていうか嬉しそうなようで困ったようなそんな複雑怪奇な表情になってから立ち上がっていた。
 三人の謎の行動も気になったけど、今は焼き立てのピザの方が優先だよね。
 僕は三人に手伝ってもらって、焼き立てのピザを食堂に運んでいた。
 
 食堂に着いた時、クライブさんは同席を断って後で頂くと言われてしまったけど、そんなの納得できない僕は、たぶんふくれっ面になっていたと思う。
 レイナードさんに仕える身分のクライブさんにとっては、主と同じ席でご飯を食べるのはありえないというのは分かるよ。
 でも、そんなことで一人だけ別に食事をとるのは僕が嫌だったんだ。
 僕の我儘だってことは、十分分かっているよ。
 だけど、それでも僕はみんなで食卓を囲みたかったんだ。
 
 そんな僕の気持ちを分かってくれたのか、レイナードさんが同席を拒んだクライブさんに言ってくれたんだ。
 
「クライブ、食卓を共にすることを許可する。お前も席に着け」

「ですが……」

「はぁ……。私が許すと言っているんだ」

「かしこまりました。それでは、同席させてもらいますね」

 そう言って、僕の隣の席に座ってくれたんだ。
 だけど、ここでも三人が揉め出してしまって……。
 ピザが冷めちゃうってことしか頭になかった僕は、三人を無理やり席に座らせていた。
 
「もう、折角のピザが冷めちゃうじゃん!! そんなにそこの席がいいなら、そこは譲るから、三人で仲良く座って! それじゃ、いただきまーす」

 そう言って、レイナードさんに僕の座っていた席を譲った僕は、向かい側の席についてから焼き立てのピザを頬張っていた。
 う~ん。ピザうまぁ。
 今回は一種類だけだったけど、そのうち、照り焼きチキンとかシーフードとか、いろいろな具材で作ろう。
 うん。楽しみだ。
 
 
 そんなことを考えていた僕だったけど、三人が「仕方ないなぁ」って感じの表情になっていたことには全く気が付いていなかったんだよね。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者よ、わしの尻より魔王を倒せ………「魔王なんかより陛下の尻だ!」

ミクリ21
BL
変態勇者に陛下は困ります。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

教室ごと転移したのに陽キャ様がやる気ないのですが。

かーにゅ
BL
公開日増やしてからちょっと減らしました(・∀・)ノ ネタがなくて不定期更新中です…… 陽キャと陰キャ。そのくくりはうちの学校では少し違う。 陰キャと呼ばれるのはいわゆるオタク。陽キャはそれ以外。 うちのオタクたちは一つに特化していながら他の世界にも精通する何気に万能なオタクであった。 もちろん、異世界転生、異世界転移なんてものは常識。そこにBL、百合要素の入ったものも常識の範疇。 グロものは…まあ人によるけど読めなくもない。アニメ系もたまにクソアニメと言うことはあっても全般的に見る。唯一視聴者の少ないアニメが女児アニメだ。あれはハマるとやばい。戻れなくなる。現在、このクラスで戻れなくなったものは2人。1人は女子で妹がいるためにあやしまれないがもう1人のほうは…察してくれ。 そんな中僕の特化する分野はBL!!だが、ショタ攻め専門だ!!なぜかって?そんなの僕が小さいからに決まっているじゃないか…おかげで誘ってもネコ役しかさせてくれないし…本番したことない。犯罪臭がするって…僕…15歳の健全な男子高校生なのですが。 毎週月曜・水曜・金曜・更新です。これだけパソコンで打ってるのでいつもと表現違うかもです。ショタなことには変わりありません。しばらくしたらスマホから打つようになると思います。文才なし。主人公(ショタ)は受けです。ショタ攻め好き?私は受けのが好きなので受け固定で。時々主人公が女に向かいますがご心配なさらず。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...