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第十三話 沐浴場にて

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 翌日、僕と一生は、久しぶりに聖堂に向かった。
 じーちゃんは、僕と一生の元気な姿を見て、にこっこりと笑って迎え入れてくれた。
 
「元気そうで何よりだよ。おや? ハルキは、なんだが可愛くなったんじゃないか?」

「ふへ? じーちゃん、何言ってんの? 僕はいつも通りだよ」

「そうか? ふむふむ……ふーむ」

 じーちゃんは、自分の顎に手を当てて謎の声を上げながら、僕の周りをくるくると回っていた。
 そんなにまじまじと見られると、ほんの少し恥ずかしいのですが……。
 じーちゃんの熱い視線に耐えきれなくなった僕は、両手で顔を隠しながら一生に助けを求めていた。
 
「いっせ~」

 だけど、一生のやつ、あろうことかじーちゃんと一緒になって僕の周囲を回りだしたのだ。
 
「だよなぁ。やっぱ、視力が良くなったおかげで、表情が可愛くなったんだよなぁ。アイツが陽騎にしたことは、ぶっ殺したいくらい気に入らなかったけど、目を治療してくれたことだけは感謝しなくもないな。うんうん。前の突き挿すような視線もよかったけど、くりっとしてぱっちりな瞳で真っ直ぐに視線が合うと、こうなんていうか、胸に込み上げて来るときめきが半端ないんだよなぁ」

「ほう、そうか。視線一つでここまで変わるとは……。元から綺麗な顔立ちをしていたと思っていたが、きつい視線がなくなると、ここまで可愛くなるのは驚きだ……。イッセー。ハルキを守ってあげるんだよ」

「おう。俺の嫁のことは俺が守る」

「そうかそうか。それなら安心だ。ほっほっほぅ」

「ああ。任せろ」


 うぅ……。よく分からんが、二人が仲良さげにしているのは嬉しいけど、仲間外れにされているみたいでちょっと寂しいです。
 ってか、僕は自分の身は自分で守れるし!!
 だけど、ここでそんなこと言うと、一生とじーちゃんの二人に何か言われそうな気がしたので、敢えて何も言わないことにした。
 
 そして、二人の謎トークが一段落したところで、じーちゃんに台所を借りたいと申し出た。
 じーちゃんは、にこにこしながら、台所は好きに使っていいって言ってくれた。
 さっそく台所にと思ったけど、その前に沐浴場を借りてさっぱりすることにした。
 沐浴場も好きに使っていいと言ってくれたので、一生と二人で沐浴場に向かった。
 
 本来は、沐浴場にある冷水で体を清めるんだけど、聖堂でお世話になっていた時から、じーちゃんから許可をもらって、お湯を使わせてもらっていた。
 
 僕は、久しぶりに思う存分お湯を浴びれることが嬉しくて、子供のようにはしゃいでしまっていた。
 それに、ここには一生しかいないしね。
 そんな訳で僕は、一気に服を脱ぎ棄てて全裸になっていた。
 
 魔法でお湯を出して、頭から被った僕は、絶対に風呂付の家に住むと強く決意していた。
 ここには石鹸なんてないので、掛流しのお湯で全身を丁寧に洗い流す。
 肉体労働の日々のお陰で、以前は薄いだけだった腹に筋肉が……全くついてませんでした。
 手足も未だに、ひょろりとしたままで、筋肉のきの字もなかった。
 はぁ。なんでだ? 結構毎日体を動かしているはずなのに。
 そんな事を思いつつも、横にいる一生を盗み見る。
 僕と違って、ほどほどに焼けた肌と、割れてカチカチになっている腹筋が目に入った。
 元々筋肉は付いていたと思ったけど、元の世界に居たときよりも明らかに筋肉量が増えている気がする。
 それに、身長もちょっと伸びた気もするし……。
 う~。うらやましい。
 
 
 僕の視線が気になったのか、一生が僕に背中を向けて文句を言ってきた。
 
「何見てんだよ……。こっち見んな」

「なっ! なんだよ、別にいいじゃん。僕なんて、いまだにひょろひょろなのに、お前だけ筋肉ついてずるいぞ」

「ずるいってなんだよ?」

「ぐぬぬ。そんなこと言うやつにはこうだ!!」

 なんだが一生に馬鹿にされたみたいな気がした僕は、完全なる被害妄想だと分かっていたけど、何か一生をぎゃふんと言わせてやりたい気持ちになっていたのだ。
 だからと言う訳ではないけど、無防備に晒された一生の背中に抱き着いて、やつが僕に隠した筋肉を背後から腕を回した状態で触りまくってやったんだ。
 
「おぉぉ。カチカチ。すご。ナイスシックスパック」

「な! ちょっ、陽騎?」

「おにーさん、いいもん持ってるねぇ。ぐへへ」

「ちょっ、待って。ダメだって!!」

 あれ?一生ってくすぐったがりだったのか?おお、知らなかった。
 それなら、くすぐり攻撃レベルアップだ!!
 
「ほほう。一生は、くすぐったがりだったんだな。くすくす。ほれほれ、これはどうだ? ん? ん?」

「ちょっ、まっ! 本当にダメだって!」

 焦る一生の様子が面白くて、僕はどんどん大胆になっていっていた。
 そして、僕の手を掴もうとする一生の手をするりと躱して、横腹から前の方に手を滑らせた時だった。
 何か硬いものに手が当たった僕は、首を傾げながら手にあたったものを握ってそれを確かめていた。

「んんん? なんだこれ?」

 それをにぎにぎとしていると手の中のそれが更に硬く、そして大きくなったのだ。
 そこでようやく、僕がナニを握っていたのかに気が付いたのだった。
 
 やばっ!
 一瞬そう思ったけど、こっちに来て、そう言えば僕も自慰をしていなかったことを思い出したのだ。
 こっちでの暮らしに慣れるのに精いっぱいで、抜いている暇が無かったんだよな。
 一生もそうみたいで、溜まってるみたいだな。
 あれ? もしかして下手に恥ずかしがって手を引くよりも、抜いてやったほうがいいのか?

「一生、わりぃ。お詫びにこのまま抜いてやるから」

「は? えっ、ちょっ、だ―――」

 一生が拒絶の言葉を吐きだしたのと同時だった。

「ごほ!! ごほごほ!! あー、そういうことは、場所を選んだ方がいいぞ」

 そう言って、僕と一生に呆れたよな表情を向けてきた金髪のイケメンと目が合った僕は、慌てて一生から距離を取ることとなったのだった。


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