上 下
88 / 97
番外編

ミリアリアの習慣(1)

しおりを挟む
 ミリアリアには、長年続いた習慣があった。
 その習慣は、シューニャによって矯正されていたが、ふとした瞬間にその習慣をしてしまったミリアリアを目撃してしまったジークフリートの長い長い夜のお話。
 
 
 それは、結婚して間もない時期に、ジークフリートが政務の都合上どうしても王宮に戻れなかった日の出来事だった。
 ミリアリアは、結婚後初めて、広いベッドで一人で寝なければならず寂しいと感じながら入浴をすませたのだ。
 そして、いざ寝るとなったとき、昔の癖で着ていた寝間着を脱いでいたのだ。
 パンツだけになったミリアリアは、ベッドの中に入って瞼を閉じていた。
 いつもジークフリートに抱きしめられて眠っていたのに、その日はそれが無く、昔の一人っきりの夜が蘇ったからかもしれない。
 
 メローズ王国にいた時のミリアリアは、最低限の衣食住を与えられていたのだ。
 そのため、持っている服の数も限られていたため、寝間着だったものも古くなって着られなくなったワンピースを使ってリメイクして、普段着として着まわしていたのだ。
 そのため、夜は裸で寝るのが普通になっていたのだ。
 
 セイラもそのことは知っていたが、だからと言ってミリアリアの服を要求することもできずにいたため、黙認する結果となっていた。
 テンペランス帝国に来るとき、それなりの衣装を持たされていたた。もちろん寝間着も然りだ。
 しかし、長年の習慣の所為で、寝間着があるにもかかわらず、ミリアリアは裸で寝るのを好んだのだ。
 セイラ的には、離宮の隅にある小屋で二人きりの生活であれば問題ないだろうと、ミリアリアの好きにさせていたのだ。
 そんな中、ミドガルズ王国の王女が起こした事件が元で王宮に移り住むこととなったのだ。
 セイラは、夜ミリアリアに寝間着を着せてから、部屋を出ていたが、そのあとミリアリアが寝間着を脱いでいたことを知ったのは、翌朝枕元にたたまれた寝間着を見たときだった。
 セイラは、何度もミリアリアに夜は寝間着を着たまま寝るように言ったのだ。
 しかし、目の見えていないミリアリアは、自分がいる場所を理解していなかったのだ。ミリアリアは、自分がいる場所を離宮か何かだと勘違いしていて、ここには沢山の人間がいることに気が付いていなかったのだ。
 
 そんな中、シューニャとの出会いがあったのだ。
 その後、シューニャから何度も注意されていく中で、寝間着を着たまま寝ることが出来るようになっていたのだ。
 
 しかし、ひとり寝という状況からついうっかり、無意識に寝間着を脱いでいたのだ。
 
 

 そんなことを知らないジークフリートは、急いで仕事を片付けて、馬を走らせ深夜という時間になって、王宮に戻ってきたのだ。
 ジークフリートは、汗を流しながら既に眠ってしまっているミリアリアを抱きしめて眠ろうと考えたのだ。
 
 そして、ミリアリアが眠るベッドに入ってミリアリアを抱きしめた時だった。
 ミリアリアを抱きしめた時、ジークフリートの手にはすべすべとした手に心地いい感触がしたことでその身を固めることとなったのだ。
 
「ま……まさか……。ミリアリアは、裸で寝ている…のか?」

 そう小さく零したジークフリートは、緩く首を振ってそれを否定していた。
 
「そんな訳ないさ……。きっと、上質の絹の……」

 そう言ってから、抱きしめるミリアリアの背中に手を滑らせていた。
 まさかという考えを否定するため、眠っているミリアリアに悪いと思いつつもその全身に手を滑らせたのだ。
 そして確信したのだ。
 ミリアリアが、パンツのみの状態で眠っているという事実を。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~

山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」 婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。 「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」 ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。 そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。 それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。 バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。 治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。 「お前、私の犬になりなさいよ」 「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」 「お腹空いた。ご飯作って」 これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、 凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。 そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。 ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。 そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……? ※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...