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本編
第五章 欠陥姫と暗殺者(4)
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その日、周囲のいつもと違う空気にミリアリアはしきりに首を傾げていた。
そんな、落ち着かない様子のミリアリアに気が付いたセイラは、ミリアリアに向かってお茶を入れながら言ったのだ。
「姫様? どうされました?」
不思議そうなセイラの問いかけに、ミリアリアは鈴を鳴らしていた。
(よく分からないけど、空気がひりついているというか……。変な感じがするの……)
不安がるミリアリアを見たセイラは、安心させようとある提案をしていた。
「分かりました。少し部屋の外の様子を確認して―――」
セイラがそう言いながら扉に近づいた時だった。
「セイラ! 扉から離れろ!!」
いつも、陽のあるうちは絶対に姿を現さないシューニャが、そう言ってミリアリアを背後に庇うように現れたのだ。
それに驚いたセイラは、突然現れたメイド服姿のシューニャに向かって何かを言おうとしたが、それよりも前に部屋の扉が乱暴に開かれたのだった。
そして、武装した複数の兵士たちが部屋に押し寄せてきたのだ。
それに驚いたセイラは、後ずさり兵士たちから距離を取りながらも気丈に言ったのだ。
「あ…あなたたち! ここはメローズ王国の王女殿下であらせられるミリアリア様のお部屋だと知っての狼藉か!」
そんなセイラを鼻で笑うように、兵士の後ろから一人の男が姿を現したのだ。
「ええ、知っている。だからこそ私はここに兵士を伴って来たのだよ」
そう言った男は、目の前のセイラを見た後に、部屋の奥でシューニャに庇われるように佇むミリアリアを見て表情を歪めたのだ。
「ほう。確かに美しい姫だ。これなら皇帝陛下も気に入るはずだ。くくっ。餌にするにはもったいないかな?」
舌なめずりをしながらミリアリアをいやらしい目で見ていた男から庇うようにセイラは立ちふさがった後に声を震わせて言ったのだ。
「姫様に……何をする気です……」
「セイラ、下がれ!! そいつは、テンス大公の犬だ!! お姫様を人質にでもして、皇帝を強請るとかお粗末なことを考えているに決まってる!!」
シューニャは、頭を回転させて現時点でこんなことを仕出かしそうな勢力を思い浮かべて言ったのだ。
それは正解だったようで、部屋に入ってきた男は楽しそうに言ったのだ。
「ほほう。多少は情勢を掴んでいるものがいたのかな? だがもう遅い。ここには、私の手の者しかいない。時間が無い。さっさと王女を捕まえろ」
男にそう命じられた兵士たちは、部屋にずかずかと侵入した後、ミリアリアにその手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
ミリアリアを庇うようにしていたシューニャが、懐に忍ばせていた短剣で、兵士の腕を斬りつけていたのだ。
そして、兵士と応戦しながらきつい口調でセイラに命じていた。
「ここは俺が食い止める。セイラは、お姫様を連れて皇帝のところに逃げ込め!!」
そんな、落ち着かない様子のミリアリアに気が付いたセイラは、ミリアリアに向かってお茶を入れながら言ったのだ。
「姫様? どうされました?」
不思議そうなセイラの問いかけに、ミリアリアは鈴を鳴らしていた。
(よく分からないけど、空気がひりついているというか……。変な感じがするの……)
不安がるミリアリアを見たセイラは、安心させようとある提案をしていた。
「分かりました。少し部屋の外の様子を確認して―――」
セイラがそう言いながら扉に近づいた時だった。
「セイラ! 扉から離れろ!!」
いつも、陽のあるうちは絶対に姿を現さないシューニャが、そう言ってミリアリアを背後に庇うように現れたのだ。
それに驚いたセイラは、突然現れたメイド服姿のシューニャに向かって何かを言おうとしたが、それよりも前に部屋の扉が乱暴に開かれたのだった。
そして、武装した複数の兵士たちが部屋に押し寄せてきたのだ。
それに驚いたセイラは、後ずさり兵士たちから距離を取りながらも気丈に言ったのだ。
「あ…あなたたち! ここはメローズ王国の王女殿下であらせられるミリアリア様のお部屋だと知っての狼藉か!」
そんなセイラを鼻で笑うように、兵士の後ろから一人の男が姿を現したのだ。
「ええ、知っている。だからこそ私はここに兵士を伴って来たのだよ」
そう言った男は、目の前のセイラを見た後に、部屋の奥でシューニャに庇われるように佇むミリアリアを見て表情を歪めたのだ。
「ほう。確かに美しい姫だ。これなら皇帝陛下も気に入るはずだ。くくっ。餌にするにはもったいないかな?」
舌なめずりをしながらミリアリアをいやらしい目で見ていた男から庇うようにセイラは立ちふさがった後に声を震わせて言ったのだ。
「姫様に……何をする気です……」
「セイラ、下がれ!! そいつは、テンス大公の犬だ!! お姫様を人質にでもして、皇帝を強請るとかお粗末なことを考えているに決まってる!!」
シューニャは、頭を回転させて現時点でこんなことを仕出かしそうな勢力を思い浮かべて言ったのだ。
それは正解だったようで、部屋に入ってきた男は楽しそうに言ったのだ。
「ほほう。多少は情勢を掴んでいるものがいたのかな? だがもう遅い。ここには、私の手の者しかいない。時間が無い。さっさと王女を捕まえろ」
男にそう命じられた兵士たちは、部屋にずかずかと侵入した後、ミリアリアにその手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
ミリアリアを庇うようにしていたシューニャが、懐に忍ばせていた短剣で、兵士の腕を斬りつけていたのだ。
そして、兵士と応戦しながらきつい口調でセイラに命じていた。
「ここは俺が食い止める。セイラは、お姫様を連れて皇帝のところに逃げ込め!!」
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