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第一章 聖女になった少女②
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その日もランドールは、サラに留守を任せて一人仕事に出かけていた。
一人家に残ったサラは、日課の瞑想をしていた。
数少ない服とタオルを洗濯し、小さなボロ小屋内を箒で掃く。
サラに出来ることはすぐに終わってしまった。
そんな時は、ここに来る前から毎日やっていた瞑想をするのがサラのお決まりの行動となっていた。
以前は、とある理由で瞑想を毎日、一日の殆どをそうして過ごしていた。
今は、やることが無いのでただやっているに過ぎなかった。
瞑想をしてどのくらいの時間が経っただろうか。
サラは目を開けて視線を扉に向ける。
「ラン兄ちゃん……。遅い……。どうしたんだ?」
いつもなら帰ってきてもおかしくない時間にもかかわらず、ランドールが未だに帰ってこないのだ。
小さな小屋の中をウロウロしていたサラは、我慢できないとばかりに小屋を飛び出していた。
どこに向かえばいいのかもわからない。
それでもじっとなんてしていられなかったサラは駆け出していた。
数少し先まで行けば比較的人通りのある場所に出るというところでサラは駆ける足を速めていた。
「ラン兄ちゃん!!」
陽の沈みかけた道の端の方でランドールが倒れているのが目に入ったのだ。
かけよったランドールの体は燃えるように熱かった。
頼れる人もいないサラは、必死にランドールを背に担ぎ引きずるようにして二人の暮らす小屋へとたどり着く。
ランドールをベッドに寝かせから洗面器に水を汲む。
洗面器の水で何度もタオルを濡らしてランドールの額を冷やすも、すぐに洗面器の水が温くなるだけだった。
「ラン兄ちゃん……。やだ……。死なないで……」
ランドールと暮らしてから、どんなことがあっても泣くことのなかったサラだったが、荒く呼吸を繰り返す姿に我慢できずに泣き出してしまっていた。
一晩中、泣きながらもランドールの額を冷やし続けるも一向に良くならないばかりか、熱は高くなる一方だった。
翌日、サラは賭けに出ることにした。
ランドールと暮らしてから、彼に教えられた知識の中で教会と言うものがあった。
何でも、人を癒す薬を扱っていると……、しかし、それは万人に振舞われるものではなかった。
貴族や豪商など、富裕層にのみ与えられる恩恵となっていた。
そう、人を癒す薬はとても高価なものなのだ。
スラムで暮らすサラがどんなに頑張っても手が出る物ではなかった。
それでもサラはなんとしてでも、頭を地面に擦り付けてでも薬を手に入れるつもりだった。
「ラン兄ちゃん……。すぐに……。すぐに戻る」
そう言って、熱に苦しむランドールに背を向けたサラは、一人教会へと向かった。
サラの暮らすスラムは、ディエイソ王国の王都の端にあった。
一度だけ話に聞いた教会を目指してサラは駆け出した。
人々は薄汚れていても美しいサラの容姿に目を奪われていた。
ディエイソ王国ではあまり見かけない珍しい黒髪と黒い瞳。人形の様に整った容姿のサラが駆けていく様子を物珍し気に目で追って、その美しすぎる容姿に目を見張るのだ。
陽が陰り始めたころ、サラは立派な建物の前にたどり着いていた。
周囲にあるどの建物よりも大きく立派なそこは、教会本部だった。
サラは、荒い呼吸で迷うことなく教会の敷地を跨ぐ。
基本的に教会へは誰でも礼拝に訪れることができたのだ。
だから、スラムから来た汚い格好のサラを咎める者もいなかったのだ。
広い敷地をどこに向かえばいいのか分からないサラは、きょろきょろと周囲を見ながら進んでいた。
時を同じしくて、教会本部のとある一室で騒ぎが起こっていた。
一人家に残ったサラは、日課の瞑想をしていた。
数少ない服とタオルを洗濯し、小さなボロ小屋内を箒で掃く。
サラに出来ることはすぐに終わってしまった。
そんな時は、ここに来る前から毎日やっていた瞑想をするのがサラのお決まりの行動となっていた。
以前は、とある理由で瞑想を毎日、一日の殆どをそうして過ごしていた。
今は、やることが無いのでただやっているに過ぎなかった。
瞑想をしてどのくらいの時間が経っただろうか。
サラは目を開けて視線を扉に向ける。
「ラン兄ちゃん……。遅い……。どうしたんだ?」
いつもなら帰ってきてもおかしくない時間にもかかわらず、ランドールが未だに帰ってこないのだ。
小さな小屋の中をウロウロしていたサラは、我慢できないとばかりに小屋を飛び出していた。
どこに向かえばいいのかもわからない。
それでもじっとなんてしていられなかったサラは駆け出していた。
数少し先まで行けば比較的人通りのある場所に出るというところでサラは駆ける足を速めていた。
「ラン兄ちゃん!!」
陽の沈みかけた道の端の方でランドールが倒れているのが目に入ったのだ。
かけよったランドールの体は燃えるように熱かった。
頼れる人もいないサラは、必死にランドールを背に担ぎ引きずるようにして二人の暮らす小屋へとたどり着く。
ランドールをベッドに寝かせから洗面器に水を汲む。
洗面器の水で何度もタオルを濡らしてランドールの額を冷やすも、すぐに洗面器の水が温くなるだけだった。
「ラン兄ちゃん……。やだ……。死なないで……」
ランドールと暮らしてから、どんなことがあっても泣くことのなかったサラだったが、荒く呼吸を繰り返す姿に我慢できずに泣き出してしまっていた。
一晩中、泣きながらもランドールの額を冷やし続けるも一向に良くならないばかりか、熱は高くなる一方だった。
翌日、サラは賭けに出ることにした。
ランドールと暮らしてから、彼に教えられた知識の中で教会と言うものがあった。
何でも、人を癒す薬を扱っていると……、しかし、それは万人に振舞われるものではなかった。
貴族や豪商など、富裕層にのみ与えられる恩恵となっていた。
そう、人を癒す薬はとても高価なものなのだ。
スラムで暮らすサラがどんなに頑張っても手が出る物ではなかった。
それでもサラはなんとしてでも、頭を地面に擦り付けてでも薬を手に入れるつもりだった。
「ラン兄ちゃん……。すぐに……。すぐに戻る」
そう言って、熱に苦しむランドールに背を向けたサラは、一人教会へと向かった。
サラの暮らすスラムは、ディエイソ王国の王都の端にあった。
一度だけ話に聞いた教会を目指してサラは駆け出した。
人々は薄汚れていても美しいサラの容姿に目を奪われていた。
ディエイソ王国ではあまり見かけない珍しい黒髪と黒い瞳。人形の様に整った容姿のサラが駆けていく様子を物珍し気に目で追って、その美しすぎる容姿に目を見張るのだ。
陽が陰り始めたころ、サラは立派な建物の前にたどり着いていた。
周囲にあるどの建物よりも大きく立派なそこは、教会本部だった。
サラは、荒い呼吸で迷うことなく教会の敷地を跨ぐ。
基本的に教会へは誰でも礼拝に訪れることができたのだ。
だから、スラムから来た汚い格好のサラを咎める者もいなかったのだ。
広い敷地をどこに向かえばいいのか分からないサラは、きょろきょろと周囲を見ながら進んでいた。
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