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浄化編
106 私は彼と……
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今日、私は彼と結婚する。
色々あったけど、私は今日ようやく、彼のお嫁さんになります。
異世界に来て、沢山悲しいことや辛いことがあったけど、彼が居てくれたから乗り越えられた。
私は、彼と幸せな家庭を築き、彼と一緒に幸せになります。
彼と相談した結果、結婚式は身内だけの小さな規模で行うことにした。
こっちの世界でも、結婚は教会で行うらしい。
私は、彼と並んで神父様の前で愛の誓いをする。
「汝、この者を夫として生涯をともにすることを誓いますか?」
「はい。誓います」
そう言って、彼と、結婚を見守ってくれるみんなに誓っていた。
そして、誓いのキス。
彼は、私のヴェールをそっと上げて優しい笑みで言ったのだ。
「きれいだ……。君を一生幸せにするよ」
「はい。私も、あなたを幸せにします」
そして、私と彼は、触れるだけの幸せなキスをした。
彼の瞳に映る私の表情はとても満たされた顔をしていた。
なんて幸せなんだろう。
こんなしあわせがずっと続きますように……。
そんなことを考えた時だった。
彼が、私に覆いかぶさるように抱きついてきたのだ。
「えっ?―――さん?」
私が呼びかけると、彼は力なく倒れたのだ。
倒れた彼の真っ白なタキシードが気がつくと真っ赤に染まっていくのが見えた。
「え?どう……して……?」
気がつくと私の足元にまで赤い色が広がっていた。
「あ、あ、ああああああ……、あああああああああああーーーーーーーー!!いや、いやーーーーーーーーーーー!!」
私は、倒れる彼に言葉にならない叫びを上げて縋り付いていた。
私の真っ白なウエディングドレスが真っ赤に染まってもそんなこと、どうでも良かった。
彼の胸の部分に開いた大きな穴から血が溢れるのを塞ぐように、必死に手を当てて血を止めようとした。
だけど、私の手の間から彼の命の温かさがどんどんこぼれ落ちるのが分かった。
「だめ、だめ……。いや、いや、いや。お願い、止まって、止まってよ……。なんで、なんでこんなに血が出るの!!誰か、誰か彼を助けて!!お願い、お願いよ!!」
私が錯乱状態でいると、私の背後に誰かが立ったのが分かった。
その誰かは、私の耳元で囁くように言ったのだ。
「その男を助けたいなら、方法があるよ。君の力を、命を、その男に譲渡すればいい」
「何でもいい、彼が助かるなら、私の力も、命も、何でも上げるから!!だから、彼を……、彼を助けて!!何でもするから彼を助けて!!」
そう言って、私の背後に立つ黒いローブの人物に縋り付いていた。
黒いローブの人物は、なんの感情も伝わってこない凍えるような声で言った。
「じゃぁ、君の※※※※※※※※※※※※※※※」
「え?な……に?いま、なに……を?」
黒いローブの人物が、何か言ったのと同時に私の体の中から、何かが抜けていくのを感じた。
キラキラと輝く何かは、黒いローブの人物の手に集まっていった。
そして、私の体が完全に冷たく動かなくなって、彼の既に冷たくなった体の上に倒れた時、黒いローブの人物は、手元に集まった光を…………。
一口で飲み込んだのだ。
そして、言ったのだ。
「馬鹿だなぁ。その男を助ける理由がない。はぁ、お前の命は甘くて美味い……」
そう言った後、口元を細い三日月のように不吉に歪めて言ったのだ。
「ごちそうさま……。俺の、※※※」
私は、薄れゆく意識の中で一緒に幸せになるはずだったあの人の冷たくなった手を握ることしかできなかった。
「―――絶対に、ぜったいに……助けて見せるから……、どんなことをしても……、何を差し出したとしても……。かならず……必ず……」
色々あったけど、私は今日ようやく、彼のお嫁さんになります。
異世界に来て、沢山悲しいことや辛いことがあったけど、彼が居てくれたから乗り越えられた。
私は、彼と幸せな家庭を築き、彼と一緒に幸せになります。
彼と相談した結果、結婚式は身内だけの小さな規模で行うことにした。
こっちの世界でも、結婚は教会で行うらしい。
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「汝、この者を夫として生涯をともにすることを誓いますか?」
「はい。誓います」
そう言って、彼と、結婚を見守ってくれるみんなに誓っていた。
そして、誓いのキス。
彼は、私のヴェールをそっと上げて優しい笑みで言ったのだ。
「きれいだ……。君を一生幸せにするよ」
「はい。私も、あなたを幸せにします」
そして、私と彼は、触れるだけの幸せなキスをした。
彼の瞳に映る私の表情はとても満たされた顔をしていた。
なんて幸せなんだろう。
こんなしあわせがずっと続きますように……。
そんなことを考えた時だった。
彼が、私に覆いかぶさるように抱きついてきたのだ。
「えっ?―――さん?」
私が呼びかけると、彼は力なく倒れたのだ。
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「え?どう……して……?」
気がつくと私の足元にまで赤い色が広がっていた。
「あ、あ、ああああああ……、あああああああああああーーーーーーーー!!いや、いやーーーーーーーーーーー!!」
私は、倒れる彼に言葉にならない叫びを上げて縋り付いていた。
私の真っ白なウエディングドレスが真っ赤に染まってもそんなこと、どうでも良かった。
彼の胸の部分に開いた大きな穴から血が溢れるのを塞ぐように、必死に手を当てて血を止めようとした。
だけど、私の手の間から彼の命の温かさがどんどんこぼれ落ちるのが分かった。
「だめ、だめ……。いや、いや、いや。お願い、止まって、止まってよ……。なんで、なんでこんなに血が出るの!!誰か、誰か彼を助けて!!お願い、お願いよ!!」
私が錯乱状態でいると、私の背後に誰かが立ったのが分かった。
その誰かは、私の耳元で囁くように言ったのだ。
「その男を助けたいなら、方法があるよ。君の力を、命を、その男に譲渡すればいい」
「何でもいい、彼が助かるなら、私の力も、命も、何でも上げるから!!だから、彼を……、彼を助けて!!何でもするから彼を助けて!!」
そう言って、私の背後に立つ黒いローブの人物に縋り付いていた。
黒いローブの人物は、なんの感情も伝わってこない凍えるような声で言った。
「じゃぁ、君の※※※※※※※※※※※※※※※」
「え?な……に?いま、なに……を?」
黒いローブの人物が、何か言ったのと同時に私の体の中から、何かが抜けていくのを感じた。
キラキラと輝く何かは、黒いローブの人物の手に集まっていった。
そして、私の体が完全に冷たく動かなくなって、彼の既に冷たくなった体の上に倒れた時、黒いローブの人物は、手元に集まった光を…………。
一口で飲み込んだのだ。
そして、言ったのだ。
「馬鹿だなぁ。その男を助ける理由がない。はぁ、お前の命は甘くて美味い……」
そう言った後、口元を細い三日月のように不吉に歪めて言ったのだ。
「ごちそうさま……。俺の、※※※」
私は、薄れゆく意識の中で一緒に幸せになるはずだったあの人の冷たくなった手を握ることしかできなかった。
「―――絶対に、ぜったいに……助けて見せるから……、どんなことをしても……、何を差し出したとしても……。かならず……必ず……」
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