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お店編
52 私と初めてのお客さん
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次の日、お店を開店させたのはいいんだけど、お客さんは中々来なかった。
そうだよね、特に宣伝をした訳でもないからね。
そう考えた私は、気長に待つことにした。
お店の入口にはベルを設置して、家で家事をしていても誰かが入って来たら分かるようにしているから大丈夫だと考えて、私は洗濯や家の掃除をしながらのんびりと過ごしていた。
庭の手入れをしていると、「チリリン」とベルの音が鳴ったのが聞こえた私は、手を洗ってから急いで店に向かった。
「いらっしゃいませ。どうぞ、ゆっくり見ていってくださいね」
私がそう声をかけると、私よりも年上くらいの二人の女性が店内を物珍しそうに見ていた。
二人は私に気が付き、にこっと可愛らしい笑顔を見せてくれた。
二人は楽しそうに、店内を見ていたが、棚ごとに立ち止まり不思議そうに商品を見ていたのが印象的だった。
特に変わったものは置いていないのだけど、もしかして高すぎたのかな?
そう思った私は、二人の女性に恐る恐る声を掛けていた。
「あ、あの……。もしかして高かったですか?」
私がそう言うと、女の人が慌てて首を振っていた。
「違います。どの商品も、用途は分かりませんがとても安いです」
「そうですか。よかった……。えっ?用途が分からない?」
女の人の言葉に私は首を傾げていた。すると、親切な女の人は優しい表情で言ったのだ。
「もしかして、店員さんは外国の方ですか?」
異世界とは言え、外国に違いないので私は首を縦に振って頷いていた。
「そうですか。やっぱり。このシャンプーっていうのとか、何に使うんですか?」
そう言われて、私は思い出していた。初めてヴェインさんたちをお風呂に案内したときのことをだ。
私は、慌てて店内にある商品の説明を始めた。
「えっ!これに水を入れるとお湯が出るんですか?!」
「はい……。でも、大きくて場所を取りますよね」
「これくらいどうってことないです!これがあれば、体をいつでも綺麗にできるなんて信じられない……」
「ええ、でも店員さんの肌、髪……。すごく綺麗……。それに、いい匂いもするし……。500ジギル……。これは……」
「買うしかないわ!」
「買うっきゃないわ!」
そう言って、二人の女性は声を合わせて言っていた。
そして、シャワーヘッドと、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープの他に、基礎化粧品も一通り購入していった。
シャワーヘッドは、そこそこの重さがあるので心配したけど、二人共「これくらいいつもの水汲みに比べたら楽勝よ!!」って、笑顔で買った物を持って行ってしまったわ。
初めてのお客さんと言うことと、二人のとても良い買いっぷりに、私は荷物が重くなってしまって申し訳ないとは思いつつも、おまけとしてクッキーを一袋ずつプレゼントしていた。
二人は、クッキーを喜んで受け取ってくれたのが嬉しくて、二人の背中が見えなくなるまで見送ったのだった。
その後、お昼すぎにヴェインさんとアーくんが開店祝いに様子を見に来てくれたけど、あの二人の女性以外にお客さんが来ることはなく、初日は閉店の時間となった。
夕食の席で、ヴェインさんとアーくんは慰めるように言ってくれたんだ。
「初日で、二人もお客が来るなんて凄いぞ!」
「はい。十分な出足だと思いますよ」
うん。二人もこう言ってくれたし、明日からまた頑張ろう!!
だけど、翌日店を開けた私は、その光景に驚愕した。
門を開けるために家を出た私は、門の外に出来ている長蛇の列に唖然となっていた。
恐る恐る門を開けると、先頭に並んでいた女性が私に声を掛けたのだ。
「ねぇ、昨日お湯が出る道具を売っていたと聞いたけど、在庫はあるかしら?」
「いらっしゃいませ……。はい、まだ数はありますけど……」
「よかった!!昨日、夜に出勤してきたメイドがいつも以上に身綺麗になっていて、問いただしたら、この店を教えてくれて。それを聞いたお嬢様がどうしても欲しいって……。というか、私も欲しくてね」
そう言って、ニコニコと先頭に並んでいた女性は事の次第を教えてくれたのだった。
その日から、私のお店は信じられないくらい賑わうことになったのだった。
だけど、その盛況ぶりを見たアーくんには怒られてしまった。
「シズ!!変わったものを置く時は言ってくださいと、あれほど!!」
「アーク、落ち着け。シズだってこんなことになるとは思っていなかったさ。シズ、これからは店に新しい物を置く時は事前に言って欲しいかな?」
「はい……。ごめんなさい……」
軽い気持ちで作ったシャワーヘッドは、街の人の需要に合っていたようで、飛ぶように売れたのだった。
アーくん曰く、今までお湯を沸かすにも、火を熾す必要があって、その火を熾すにも、薪を用意して火種から火を付けてと、いろいろ大変だったのが、水さえ汲んで、装置を陽の光の元に置いておくだけで、簡単にお湯が出るという画期的な物に街の人が飛びつくのは自明の理とのことだ。
私のことを思って説教してくれるアーくんに感謝をしながら、私は誓ったよ。新製品を置く時は必ず相談しようと。
それと、価格についても凄く怒られてしまった。
500ジギルと言う金額が安すぎると。
いまさら金額を変更すると、問題になりかねないという事で、今後シャワーヘッドを改良した場合は、金額をもっと高く設定するようにと注意されてしまったよ。
そうだよね、特に宣伝をした訳でもないからね。
そう考えた私は、気長に待つことにした。
お店の入口にはベルを設置して、家で家事をしていても誰かが入って来たら分かるようにしているから大丈夫だと考えて、私は洗濯や家の掃除をしながらのんびりと過ごしていた。
庭の手入れをしていると、「チリリン」とベルの音が鳴ったのが聞こえた私は、手を洗ってから急いで店に向かった。
「いらっしゃいませ。どうぞ、ゆっくり見ていってくださいね」
私がそう声をかけると、私よりも年上くらいの二人の女性が店内を物珍しそうに見ていた。
二人は私に気が付き、にこっと可愛らしい笑顔を見せてくれた。
二人は楽しそうに、店内を見ていたが、棚ごとに立ち止まり不思議そうに商品を見ていたのが印象的だった。
特に変わったものは置いていないのだけど、もしかして高すぎたのかな?
そう思った私は、二人の女性に恐る恐る声を掛けていた。
「あ、あの……。もしかして高かったですか?」
私がそう言うと、女の人が慌てて首を振っていた。
「違います。どの商品も、用途は分かりませんがとても安いです」
「そうですか。よかった……。えっ?用途が分からない?」
女の人の言葉に私は首を傾げていた。すると、親切な女の人は優しい表情で言ったのだ。
「もしかして、店員さんは外国の方ですか?」
異世界とは言え、外国に違いないので私は首を縦に振って頷いていた。
「そうですか。やっぱり。このシャンプーっていうのとか、何に使うんですか?」
そう言われて、私は思い出していた。初めてヴェインさんたちをお風呂に案内したときのことをだ。
私は、慌てて店内にある商品の説明を始めた。
「えっ!これに水を入れるとお湯が出るんですか?!」
「はい……。でも、大きくて場所を取りますよね」
「これくらいどうってことないです!これがあれば、体をいつでも綺麗にできるなんて信じられない……」
「ええ、でも店員さんの肌、髪……。すごく綺麗……。それに、いい匂いもするし……。500ジギル……。これは……」
「買うしかないわ!」
「買うっきゃないわ!」
そう言って、二人の女性は声を合わせて言っていた。
そして、シャワーヘッドと、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープの他に、基礎化粧品も一通り購入していった。
シャワーヘッドは、そこそこの重さがあるので心配したけど、二人共「これくらいいつもの水汲みに比べたら楽勝よ!!」って、笑顔で買った物を持って行ってしまったわ。
初めてのお客さんと言うことと、二人のとても良い買いっぷりに、私は荷物が重くなってしまって申し訳ないとは思いつつも、おまけとしてクッキーを一袋ずつプレゼントしていた。
二人は、クッキーを喜んで受け取ってくれたのが嬉しくて、二人の背中が見えなくなるまで見送ったのだった。
その後、お昼すぎにヴェインさんとアーくんが開店祝いに様子を見に来てくれたけど、あの二人の女性以外にお客さんが来ることはなく、初日は閉店の時間となった。
夕食の席で、ヴェインさんとアーくんは慰めるように言ってくれたんだ。
「初日で、二人もお客が来るなんて凄いぞ!」
「はい。十分な出足だと思いますよ」
うん。二人もこう言ってくれたし、明日からまた頑張ろう!!
だけど、翌日店を開けた私は、その光景に驚愕した。
門を開けるために家を出た私は、門の外に出来ている長蛇の列に唖然となっていた。
恐る恐る門を開けると、先頭に並んでいた女性が私に声を掛けたのだ。
「ねぇ、昨日お湯が出る道具を売っていたと聞いたけど、在庫はあるかしら?」
「いらっしゃいませ……。はい、まだ数はありますけど……」
「よかった!!昨日、夜に出勤してきたメイドがいつも以上に身綺麗になっていて、問いただしたら、この店を教えてくれて。それを聞いたお嬢様がどうしても欲しいって……。というか、私も欲しくてね」
そう言って、ニコニコと先頭に並んでいた女性は事の次第を教えてくれたのだった。
その日から、私のお店は信じられないくらい賑わうことになったのだった。
だけど、その盛況ぶりを見たアーくんには怒られてしまった。
「シズ!!変わったものを置く時は言ってくださいと、あれほど!!」
「アーク、落ち着け。シズだってこんなことになるとは思っていなかったさ。シズ、これからは店に新しい物を置く時は事前に言って欲しいかな?」
「はい……。ごめんなさい……」
軽い気持ちで作ったシャワーヘッドは、街の人の需要に合っていたようで、飛ぶように売れたのだった。
アーくん曰く、今までお湯を沸かすにも、火を熾す必要があって、その火を熾すにも、薪を用意して火種から火を付けてと、いろいろ大変だったのが、水さえ汲んで、装置を陽の光の元に置いておくだけで、簡単にお湯が出るという画期的な物に街の人が飛びつくのは自明の理とのことだ。
私のことを思って説教してくれるアーくんに感謝をしながら、私は誓ったよ。新製品を置く時は必ず相談しようと。
それと、価格についても凄く怒られてしまった。
500ジギルと言う金額が安すぎると。
いまさら金額を変更すると、問題になりかねないという事で、今後シャワーヘッドを改良した場合は、金額をもっと高く設定するようにと注意されてしまったよ。
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