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第三十四話

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 ゾディアス鉱山に向かったウェインが速度を上げたのには理由があった。
 それは、結界が消滅した場所とゾディアス鉱山が近い場所にあり、手遅れになれば、空石を発掘できなくなる可能性があったためだった。
 近い場所といっても、ゾディアス鉱山は、結界が消滅した場所と渓谷を挟んだ場所にあるため、本隊と離れて向かうことになったのだ。
 休む暇もなく昼夜を問わず馬を走らせたウェインたちは、一週間ほどの距離を五日で駆け抜けたのだった。
 ゾディアス鉱山に着いたウェインは、工夫たちの到着を待たずに採掘場に向かっていたのだ。
 採掘場を中ほどまで進むと、少しだけ掘られただけで、放置された区画があったのだ。
 ゾディアス鉱山に向かう途中の町で用意したツルハシで辺りを掘るウェインは、岩肌と違う手ごたえに希望を持つ。
 岩肌を掘った場所に現れた、水晶に似た透明な石を見つけたウェインは、それを掘り出していた。
 空石に見えたが、ここまで透明なものは見たことがなかったウェインは、遅れて到着した技術主任に掘り出したそれを渡していた。
 技術主任は、渡された透明な石をじっと見つめ、目を丸くさせていた。
 
「すごいです! ここまで純度の高い空石は見たことがないです。普通は、周囲の魔素を少しづつ取り込んで、銀色に濁っていくものなのですが。この石なら、一つで普通の空石の二倍……いえ、五倍の効果が期待できそうです」

 技術主任の言葉を聞いたウェインは、時間がもったいないと、工夫たちが到着するのを待つのではなく、自分たちで少しでも早く、多くの空石を掘ることを決めたのだ。
 しかし、それを生業にしている人間と違って、効率のいい掘方は出来なかったため、さほどの量を掘り出す前に、手配していた工夫たちが到着したのだった。
 
 そして、工夫たちに遅れること二日。
 王宮から呼び寄せていた、瘴気対策本部の技術部門の技術者たちが到着したのだった。
 ウェインは、採掘場の近くに天幕を張って、そこで技術者たちに空石の加工をさせていたのだ。
 しかし、魔法式の付与は簡単なものではなかったのだ。
 それは、空石が魔法具の核になれなかった採掘量と並ぶ最大の理由でもあったのだ。
 その理由とは、魔法式の付与が難しいと言うものだった。
 空石の吸収という特性上、付与しようとする魔法自体が吸収されてしまい、魔法式を空石に刻むことが困難だったのだ。
 しかし、今回採掘された純度の高い空石は、幸運にも魔法式を刻むのに時間はかかるものの、付与中に魔法式が吸収されるということはなかったのだ。
 そのため、技術者たちは、急ピッチで付与を行い、工夫たちは、空石を全力で掘り出して、この窮地に立ち向かったのだ。
 空石の加工が終わるまで、騎士たちは馬を休ませ、出発の準備を整えていたのだ。
 技術者たちは、ゾディアス鉱山に到着後休む間もなく空石の加工を進め、一日足らずで、ウェインの想像よりも多くの加工を施したのだった。
 ウェインは、ある程度の空石の加工が終わると、出来上がった分の空石を持って、第一部隊の半分を伴って、結界が消滅した場所に出発したのだ。
 第一部隊の残りの半分は、空石の加工が終わり次第、第二陣として出発する予定だった。
 
 ウェインは、第二陣を指揮するランジヤを残して、ゾディアス鉱山に着た時以上のスピードで馬を駆けさせたのだった。
 
 そして、結界が消滅した場所に二日ほどで到着したウェインは、その惨状にきつく拳を握ったのだ。
 
 そこはまさに、地獄のような様相だったのだ。
 
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