83 / 111
翻訳版
第二十七話
しおりを挟む
その日一日、そわそわと心ここにあらずといった様子で過ごしていた華火は、ウェインの帰りを今か今かと待っていた。
ウェインが帰ってきたら、改めて自己紹介をして、この世界のことや、何故自分がここに来ることになったのか、いろいろと聞きたいことが山のようにあったのだ。
落ち着きなく、そわそわと窓の外を見つめる華火は、暗くなりつつある外から聞こえてきた馬車の車輪の音に立ち上がっていた。
小走りで玄関ホールに向かうと、ちょうどよくウェインが帰ってきたのだ。
たった半日、それでも華火にはとても待ち遠しい時間だった。
華火はウェインに駆け寄り、自分から抱き着いていた。
「うぇいんさん、おかえりなさい!」
そう言って笑顔を向けると、ウェインも笑顔を華火に返してくれたのだが、少し様子がおかしかった。
何か心配事でもあるのかとじっと見上げていると、ウェインが申し訳なさそうな表情で言うのだ。
『ただいま。食事の後で大切な……、そうか、キス……は、二人っきりになってからだな。ハナビ、すまないがもう少し待っていてくれるか?』
そう言ったウェインは、華火の頬にキスをしてぎゅっと抱きしめる。
頬にキスをされた華火は、心の中で落胆してしまっていた。
(ほっぺた……。はっ! そうよ、みんなが見ている前で、唇にキスなんて! でも……、ほっぺたじゃ、言葉が……。はぁ……。って、何残念がってるのよ! わたしったら、わたしったら~~!!)
全身を赤く染めて、両手で頬を押さえてぶんぶんと頭を振る華火だったが、今は仕方ないと思い直す。
いつものように夕食を食べた後、昨日に引き続きウェインの私室に連れられた華火は、胸がドキドキとして倒れてしまいそうだった。
これからウェインとキスをするのだと考えると、口から心臓が飛び出してしまいそうだった。
ウェインは、自分の膝の上に華火を座らせた後、ぎゅっとその細い体を抱きしめていた。
頬、こめかみ、瞼、と触れるだけのキスをしてから、華火の瞳を紫の瞳でじっと見つめるのだ。
熱の籠る瞳に心臓を射抜かれたような、そんな気がした華火は、恥ずかしくて仕方なかったが、視線を逸らすことができなかった。
ウェインと見つめ合っていると、彼が小さく言葉を発した。
『好きだよ。俺のハナビ(オヤディクス。ハナビオネロ)』
その言葉を聞いた華火は、昨日ことを思い出しぼっと全身を熱くさせていた。
(確か……。イクスが好き……。オヤディクス……。好きだかな? ハナビオネロは…………、ぅ~~~、つまり、「好きだ。俺の華火」ってウェインさんが言ってる!! 夢じゃなかった! ウェインさんとわたし、両想いなんだ!! う、嬉しい! すごくすごく嬉しい!!)
ウェインからの恋情を知った華火は、嬉しくてこのまま心臓が爆発してしまいそうだと、縋るような思いで、ウェインのシャツを握っていた。
そんな、華火の手を握ったウェインは、優しさと甘やかさが混ざり合ったような笑みを浮かべてから、華火の唇に触れていた。
触れるだけのキスから、次第に激しいキスへ。
ウェインから感じる恋情に溺れてしまわないように、必死にシャツを握りしめる華火。
長い長いキスから華火が解放された時、再びウェインの声が聞こえてきたのだ。
「イアナムス。エツキアワカグハナビ、アッタカナキカゲアソ……」
年上のウェインが恥ずかしそうにそう言う姿が、可愛いと思ってしまった華火は、くすりと小さく笑ってから、ウェインの頭を胸元に抱き寄せていた。
「いいです……。うぇいんさんならいいです」
「アロク。エッタユオス、エルケディアナサカヤマイラマオウェロ」
「ふふ。うぇいんさんだからいいんです」
「オジアナリソメチシアクオク? ウラヌカナムサジェカドゥシク。アラカヅ、アヌサカヤマオウェロ」
ウェインの言葉に、キスから先のことを想像してしまった華火は、挙動不審になっていた。
(キスから先って……。きゃうぅ……、どどどど、どうしよう。お風呂にまだ入ってないし、し、下着! えっと今日は確か……、子供っぱい……。だめ、こんな子供っぽい下着見られたら、しぬぅ……。あっ! そうじゃないわ! それよりも問題はこのぺたんこな胸よ!! だ…だめだめ!)
華火の見せるいろいろな表情にウェインが小さく笑っていると、華火がとんでもないことを言い出して、ウェインの理性をボコボコにしていくのだ。
「だ……大丈夫です!! でも、準備させてください!!」
「ウテ?」
「今日の下着は……、ちょっとお見せできないので、お見せできるような下着の日に……。それと……。ち……小さくてもいいですか?」
そう言って、胸元を隠すようにしながら、上目遣いで見つめられたウェインは、危なく変なことを口走りそうになって慌てて口を固く結ぶ。
そして、咳払いの後、深呼吸をしてから華火をそっと抱き寄せる。
「アヒミク、アニーアワキヌオツンーフ」
理性を総動員してそう言ったウェインだったが、子ども扱いされたと思った華火は、ぽかぽかとウェインの胸を叩いていた。
「もーー! 子ども扱いしないでください!!」
ウェインが帰ってきたら、改めて自己紹介をして、この世界のことや、何故自分がここに来ることになったのか、いろいろと聞きたいことが山のようにあったのだ。
落ち着きなく、そわそわと窓の外を見つめる華火は、暗くなりつつある外から聞こえてきた馬車の車輪の音に立ち上がっていた。
小走りで玄関ホールに向かうと、ちょうどよくウェインが帰ってきたのだ。
たった半日、それでも華火にはとても待ち遠しい時間だった。
華火はウェインに駆け寄り、自分から抱き着いていた。
「うぇいんさん、おかえりなさい!」
そう言って笑顔を向けると、ウェインも笑顔を華火に返してくれたのだが、少し様子がおかしかった。
何か心配事でもあるのかとじっと見上げていると、ウェインが申し訳なさそうな表情で言うのだ。
『ただいま。食事の後で大切な……、そうか、キス……は、二人っきりになってからだな。ハナビ、すまないがもう少し待っていてくれるか?』
そう言ったウェインは、華火の頬にキスをしてぎゅっと抱きしめる。
頬にキスをされた華火は、心の中で落胆してしまっていた。
(ほっぺた……。はっ! そうよ、みんなが見ている前で、唇にキスなんて! でも……、ほっぺたじゃ、言葉が……。はぁ……。って、何残念がってるのよ! わたしったら、わたしったら~~!!)
全身を赤く染めて、両手で頬を押さえてぶんぶんと頭を振る華火だったが、今は仕方ないと思い直す。
いつものように夕食を食べた後、昨日に引き続きウェインの私室に連れられた華火は、胸がドキドキとして倒れてしまいそうだった。
これからウェインとキスをするのだと考えると、口から心臓が飛び出してしまいそうだった。
ウェインは、自分の膝の上に華火を座らせた後、ぎゅっとその細い体を抱きしめていた。
頬、こめかみ、瞼、と触れるだけのキスをしてから、華火の瞳を紫の瞳でじっと見つめるのだ。
熱の籠る瞳に心臓を射抜かれたような、そんな気がした華火は、恥ずかしくて仕方なかったが、視線を逸らすことができなかった。
ウェインと見つめ合っていると、彼が小さく言葉を発した。
『好きだよ。俺のハナビ(オヤディクス。ハナビオネロ)』
その言葉を聞いた華火は、昨日ことを思い出しぼっと全身を熱くさせていた。
(確か……。イクスが好き……。オヤディクス……。好きだかな? ハナビオネロは…………、ぅ~~~、つまり、「好きだ。俺の華火」ってウェインさんが言ってる!! 夢じゃなかった! ウェインさんとわたし、両想いなんだ!! う、嬉しい! すごくすごく嬉しい!!)
ウェインからの恋情を知った華火は、嬉しくてこのまま心臓が爆発してしまいそうだと、縋るような思いで、ウェインのシャツを握っていた。
そんな、華火の手を握ったウェインは、優しさと甘やかさが混ざり合ったような笑みを浮かべてから、華火の唇に触れていた。
触れるだけのキスから、次第に激しいキスへ。
ウェインから感じる恋情に溺れてしまわないように、必死にシャツを握りしめる華火。
長い長いキスから華火が解放された時、再びウェインの声が聞こえてきたのだ。
「イアナムス。エツキアワカグハナビ、アッタカナキカゲアソ……」
年上のウェインが恥ずかしそうにそう言う姿が、可愛いと思ってしまった華火は、くすりと小さく笑ってから、ウェインの頭を胸元に抱き寄せていた。
「いいです……。うぇいんさんならいいです」
「アロク。エッタユオス、エルケディアナサカヤマイラマオウェロ」
「ふふ。うぇいんさんだからいいんです」
「オジアナリソメチシアクオク? ウラヌカナムサジェカドゥシク。アラカヅ、アヌサカヤマオウェロ」
ウェインの言葉に、キスから先のことを想像してしまった華火は、挙動不審になっていた。
(キスから先って……。きゃうぅ……、どどどど、どうしよう。お風呂にまだ入ってないし、し、下着! えっと今日は確か……、子供っぱい……。だめ、こんな子供っぽい下着見られたら、しぬぅ……。あっ! そうじゃないわ! それよりも問題はこのぺたんこな胸よ!! だ…だめだめ!)
華火の見せるいろいろな表情にウェインが小さく笑っていると、華火がとんでもないことを言い出して、ウェインの理性をボコボコにしていくのだ。
「だ……大丈夫です!! でも、準備させてください!!」
「ウテ?」
「今日の下着は……、ちょっとお見せできないので、お見せできるような下着の日に……。それと……。ち……小さくてもいいですか?」
そう言って、胸元を隠すようにしながら、上目遣いで見つめられたウェインは、危なく変なことを口走りそうになって慌てて口を固く結ぶ。
そして、咳払いの後、深呼吸をしてから華火をそっと抱き寄せる。
「アヒミク、アニーアワキヌオツンーフ」
理性を総動員してそう言ったウェインだったが、子ども扱いされたと思った華火は、ぽかぽかとウェインの胸を叩いていた。
「もーー! 子ども扱いしないでください!!」
10
お気に入りに追加
1,154
あなたにおすすめの小説
嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍
バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。
全11話
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される
朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。
クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。
そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。
父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。
縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。
しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。
実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。
クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。
「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」
王子、侍女となって妃を選ぶ
夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。
ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。
そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。
一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。
それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。
問答無用で美少女化させられる王子シリル。
更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。
本編完結済。
小説家になろうにも掲載しています。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる