拝み屋一家の飯島さん。

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伝承

君は彼のお気に入り?

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夜も更けて、今日も私はこっそりと
了さんの腕を抜けて
あの秘密の書物庫にきた。


禊さんは昨日と同じく
目にかかる前髪を気にしながら
古そうな書物をニヤニヤ読んでいる。

昨日と違うのは大事そうに
お札の貼られた…壺?を抱えていることくらい。


「あ…やっときたね…。
了くんと、お楽しみでもしてた…?」


部屋に入るなりニマリと笑って禊さんは言った。


「"お楽しみ"って……

違うよ!!そんなわけないでしょ!
ちょっと危なかったけど…」


「…え?てっきり…無傷だし
そうかと…」


「??…なんで…?」


禊さんは本を閉じて私の方を向いた。


「だって…了くんって
天下のDV野郎…でしょ」


「て…天下のDV野郎…」


「とにかく、自分のモノに。
囲って、殴って、縛って、
恐怖で支配して逃がさない。

執着の塊。そんな人…じゃん
…あの人。」


禊さんは目を細めて、
私の方を頭の先から脚まで
まじまじと眺める。


「…了くんを拒否したせいで

顔が潰れるまで殴られて
殺された子もいるくらいなのに…
不思議…」


禊さんはそう言って壺を撫でた。


「え、そんなこと…あったの…?」


被害者は白石さんだけじゃない…
そう聞いて、ゾッとする。


「あったよ…沢山。でも…
知ってるのは…ここに来るまで
了くんの逆鱗に触れなかった子だけ。
…5人…かな…」


「5人…」 


禊さんは本棚の隙間から
気持ちの悪い黒くてぬらぬらした
藁人形?と大きな裁ち鋏を取り出した。


そしてそれを話しながら
裁ち鋏で腕や脚をザクッ、ザクッと
切っていく。


「みんな…、

…了くんを押し除けたとか、

…お誘いを拒否った…とか

…無許可でお手洗い行ったとか…

…デート断った…とか、

「嫌い」って言ったとかで…



手脚も落とされて..



殺されてったよ。」




床にトサリと藁人形の首が落ちる。


「なのに…君は…」


禊さんは鋏と人形も床に落とし、
私の方にゆっくりと近づく。

それがとても不気味で
つい後退りする。


が、背に障子が当たり私は立ち止まる。
気づけば、禊さんは10センチも離れない場所に立っていた。

そして
私の首を掴むように触れる。


「誘いを断っても無事…
昨日も…逃げたのに…
お咎めなし…

…よっぽど気に入ってるのかもね…」


「…じ…じゃあ…逃げない方が…
いいんじゃ…」



そう言った瞬間、

禊さんはさらに私の近くに寄って

勢いよく私の脚の間に
自分の脚を踏み込ませた。


ドンっと大きな音がして
肩が跳ねる。


彼はその細いけれど大きな身体で
私を壁との間に押し込むと、

私の首輪を撫でながら言った。


「…そうとも…言えない。
じゃあ…ずっとこのまま、

付き合った女の子を殺しまくる様な男に、
首輪つけられて、
怯えながら一生暮らす…?」


「そ…それは…嫌…」


禊さんはそれを聞いて
少しホッとした様に薄く笑った。


「…でしょ…」


小さくそう呟くと彼はやっと
身体を離した。


「それに…
問題は了くんだけじゃない…

「ニエヨメ」である限り、
家の奴らは全員、"敵"…

僕以外は…ね」


彼は私をジッと見て、そう笑う。
ニエヨメ…そうだ結局、
昨日は教えてもらえなかったんだった。


「…ニエヨメって?」


私の疑問を聞いた途端
ニヤッと禊さんは嬉しそうに笑って
彼らしからぬ大声を出す。


「よくぞ!聞いてくれました!!
…これは…僕の…専門分野…!!!

実は…今日…資料つくったから
はい!!コレ!!」


「えっ…?えっ?」


彼の急激に高まったテンションに
驚きながら、ずっしりと
分厚い資料ファイルを受け取る。


禊さんはバタバタとプロジェクターなどを取り出し準備をしつつ
早口で捲し立てる様に話しを続けた。

たぶん聞かなくていいやつ。


「いやー…今日のために、
家の奴ら全員に操人呪術使いまくっておやすみなさいマシーンになったかいあるよね!絶対、贄女、ニエヨメの話とかしてたら大声出しちゃうと思うんだよね!僕!僕…まぁ平たく言うと…心霊フェチ…的な…??正直、本業のVバンドより熱入れてやっちゃってるかも??
だって贄女に僕ホント…夢中で…ゾッコン?ていうか…(以下略」


いつものボソボソ話してる彼は何処へ…

そう思っているうちに準備は終わり、

プロジェクターは
眩しいくらいの光を放ち、
私は半ば無理やり椅子に座らされた。


「じゃ…じゃあ、始めるよ!!
だ…題して!
『飯島家の伝説ー贄女とニエヨメー」」


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