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本編後推奨あとがきとオマケの章
番外編短編5『幻の異世界』
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おまけ04□ 09 外の総合エンディング □ページです
番外編短編5『幻の異世界』
緑旗の果てにある、最期の印。
紫色の旗を取得しめでたくイベントクリアの実績を立てた8人のプレイヤーは……やはり、爽やかに目を覚ました。
別段変った事は無い、それでも……なぜかほんの少しぽっかりと胸に穴があいたような喪失感を覚えながら、今見ていた夢を思い出そうとする。
いつもなら少しくらいの事は覚えているはずで、何があったかと話に花を咲かせるだろうに……今回ばかりは少しだけ事情が違う。
目を覚まし、顔を合わせおはようといつもの挨拶をするにとどまって……。
彼らは、一つ物語が終わった事だけは理解してお互いに口を閉ざしてしまうのだった。
とはいえそれも一瞬。
「え?じゃぁ結局俺ってば魔王業?」
「ええ、上手い具合利用さえていただいておりますので」
「ぐぇ……なんか、そんな事を誰かに予言されていたような気がする……」
食堂で朝食を食べながら、結局のところゲームの話になってしまう。
「みんな、ごくろうさまだね」
そこへ開発者代表である高松雅が斉藤渚と一緒にやはり朝食の膳を持って現れた。
一通り挨拶を終え、高松は席に着く前に告げる。
「さて……と。どうやら一つイベントクリアが終わったと聞いている。今回見つかったバグの種類もかなり特定できたし、修正プログラムも一通り走った」
一同、神妙な顔でそれを聞いていた。
「これからまだもう少し調整はあるが、イザや山田ががんばってくれてなんとか、予定通りのスケジュールで行けそうだよ。ありがとう」
詳しい話や事務手続きは後で、田中の方からさせると言ってようやく高松も席に着く。
「で、どうだったかね」
その問いに、一同顔を見合わせた。
「もちろん、最高に面白かったッスよ」
「そう言ってくれれば開発者冥利に尽きるな」
「苦労してプレイヤー権を勝ち取った……意義は凄いあったよ」
「じゃ、ウチに来てくれるかい?」
別のゲーム会社で働くナッツはその言葉に、笑って答えた。
「もうだいぶ前からそのつもりでいますけどね、俺は」
その答えを聞いて改めて高松は一同を見渡す。
「とりあえずこれにて第一次テストプレイは終わりだ。今後君達には……本体を持ち帰ってもらって自由にトビラをプレイしてもらおう。ログインも各自に任せる。回線についてはベータ版がすでに整っているから明日からでも可能だ」
「引き続き、貴方達にテストプレイヤーとしてMFCを預けます」
高松の言葉を斉藤が引き継ぎ、にっこりとほほ笑んだ。
「私達はもう中に入って調整をする事は無いから……だから、よろしくね」
MFCでたどり着ける、脳で夢見る幻想の世界。
現実じゃない、でも現実の様にリアルな異世界。
多くのゲームがよりリアルを追い求め、たどり着いた『夢』の領域。
二つの意味を孕む奇跡の世界は、許されない干渉により乱れ存続の危機を迎えた。
その世界『トビラ』、あるいは……八精霊大陸。
これがどのような形で残されていくのか、それは今後、プレイヤーの手にゆだねられている。
今後サービスが始まれば多くの人が新たなトビラを開き、世界への干渉を始めるだろう。
それによって世界が乱れるか、それとも秩序を成すか。
8人は、神ではなく人として世界を任されている。
もちろん……ゲームとして。
ゲームと言うとなんだか軽々しく思えるかもしれない。
しかし、ここに集う8人はただの人じゃぁないのだ。
自他とも認める『ゲームオタク』、ゲームへの愛だけに生きる彼らは、きっと今後も全力の愛を傾けこのゲーム世界を愛するだろう。
ああ、だから愛を必要とするわけだ。
今プレイヤー達はその理屈に納得するだろう。
テストプレイヤーが集められるに掲げられたのは、ゲームへの愛。
それだけは誰にも負けないと、集った8人の途方もない愛でもって守られていく世界。
世界を守る鉄則は、愛と勇気と……根性と。
トビラは、愛によって救われて、愛によって守ら行く事だろう。
END
ここまでお付き合いいただき、ほんとうにありがとうごさいました!!!
番外編短編5『幻の異世界』
緑旗の果てにある、最期の印。
紫色の旗を取得しめでたくイベントクリアの実績を立てた8人のプレイヤーは……やはり、爽やかに目を覚ました。
別段変った事は無い、それでも……なぜかほんの少しぽっかりと胸に穴があいたような喪失感を覚えながら、今見ていた夢を思い出そうとする。
いつもなら少しくらいの事は覚えているはずで、何があったかと話に花を咲かせるだろうに……今回ばかりは少しだけ事情が違う。
目を覚まし、顔を合わせおはようといつもの挨拶をするにとどまって……。
彼らは、一つ物語が終わった事だけは理解してお互いに口を閉ざしてしまうのだった。
とはいえそれも一瞬。
「え?じゃぁ結局俺ってば魔王業?」
「ええ、上手い具合利用さえていただいておりますので」
「ぐぇ……なんか、そんな事を誰かに予言されていたような気がする……」
食堂で朝食を食べながら、結局のところゲームの話になってしまう。
「みんな、ごくろうさまだね」
そこへ開発者代表である高松雅が斉藤渚と一緒にやはり朝食の膳を持って現れた。
一通り挨拶を終え、高松は席に着く前に告げる。
「さて……と。どうやら一つイベントクリアが終わったと聞いている。今回見つかったバグの種類もかなり特定できたし、修正プログラムも一通り走った」
一同、神妙な顔でそれを聞いていた。
「これからまだもう少し調整はあるが、イザや山田ががんばってくれてなんとか、予定通りのスケジュールで行けそうだよ。ありがとう」
詳しい話や事務手続きは後で、田中の方からさせると言ってようやく高松も席に着く。
「で、どうだったかね」
その問いに、一同顔を見合わせた。
「もちろん、最高に面白かったッスよ」
「そう言ってくれれば開発者冥利に尽きるな」
「苦労してプレイヤー権を勝ち取った……意義は凄いあったよ」
「じゃ、ウチに来てくれるかい?」
別のゲーム会社で働くナッツはその言葉に、笑って答えた。
「もうだいぶ前からそのつもりでいますけどね、俺は」
その答えを聞いて改めて高松は一同を見渡す。
「とりあえずこれにて第一次テストプレイは終わりだ。今後君達には……本体を持ち帰ってもらって自由にトビラをプレイしてもらおう。ログインも各自に任せる。回線についてはベータ版がすでに整っているから明日からでも可能だ」
「引き続き、貴方達にテストプレイヤーとしてMFCを預けます」
高松の言葉を斉藤が引き継ぎ、にっこりとほほ笑んだ。
「私達はもう中に入って調整をする事は無いから……だから、よろしくね」
MFCでたどり着ける、脳で夢見る幻想の世界。
現実じゃない、でも現実の様にリアルな異世界。
多くのゲームがよりリアルを追い求め、たどり着いた『夢』の領域。
二つの意味を孕む奇跡の世界は、許されない干渉により乱れ存続の危機を迎えた。
その世界『トビラ』、あるいは……八精霊大陸。
これがどのような形で残されていくのか、それは今後、プレイヤーの手にゆだねられている。
今後サービスが始まれば多くの人が新たなトビラを開き、世界への干渉を始めるだろう。
それによって世界が乱れるか、それとも秩序を成すか。
8人は、神ではなく人として世界を任されている。
もちろん……ゲームとして。
ゲームと言うとなんだか軽々しく思えるかもしれない。
しかし、ここに集う8人はただの人じゃぁないのだ。
自他とも認める『ゲームオタク』、ゲームへの愛だけに生きる彼らは、きっと今後も全力の愛を傾けこのゲーム世界を愛するだろう。
ああ、だから愛を必要とするわけだ。
今プレイヤー達はその理屈に納得するだろう。
テストプレイヤーが集められるに掲げられたのは、ゲームへの愛。
それだけは誰にも負けないと、集った8人の途方もない愛でもって守られていく世界。
世界を守る鉄則は、愛と勇気と……根性と。
トビラは、愛によって救われて、愛によって守ら行く事だろう。
END
ここまでお付き合いいただき、ほんとうにありがとうごさいました!!!
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