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12章  望むが侭に   『果たして世界は誰の為』

書の8-中- 生きて、かえりし『人柱、ここに極まれり』

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■書の8中■ 生きて、かえりし Go back to you


 ……何を言っているこの格闘バカ?

「何に使うんだい?」
 俺もそれ、興味在るぞ。素直にカタナを差し出すマツナギの問いにテリーはため息混じりに答えた。
「武器にする以外にどう使うんだ」
「お前、剣なんか振れるのかよ?」
「久しく握ってねぇな」
 その言い方は、握った事があるという事か。鞘から抜き、鞘を捨てて……いや、カタナは鞘も重要なんですが。
 格闘バカだけあってやっぱりそういう事は分からないのかもしれない。
「拳に拘るのは俺の、ただの意地だ。そうも言ってられない状況だろう。格闘だけじゃどうにもリーチが足りねぇんだよ」
 そう言ってテリー、レッドが張っている防御壁から突然飛び出し、カタナを構えて少し離れた所で控えているテニーさんに斬りかかっていってしまう。
 おいおい、大丈夫か!
 確かに武器を持てばリーチ自体は伸びる事になるけど。
 テニーさん、テリーの攻撃に距離感をまだ掴めていないようで切り結んで防いだ。
「ヤト、エルドロウの忠告を憶えていますね」
 俺は無言で頷いた。
 ナドゥの右手に気を付けろ、だったな。
「流石に遠隔操作で自由に、と言う訳ではないようです。あらかじめ改変するログを仕込んでおいて切り替えるという手段が常套のようですね」
「テニーさん、すっかりナドゥに取り込まれてたのか?」
「ま、最初からテニーに関しては前から動向は怪しかったがのぅ」
 エース爺さんの言葉に俺は顔を顰めた。
 テニーさんは最初から……魔王八逆星、というよりナドゥと繋がりがあったかもしれないって事か?
「ランドールの監視を命じられていたのかも知れません」
 ナドゥの奴、ウィン家の内情も何時の間にやら掻き乱している訳だよな?……いや、待てよ。
「お前は?」
 側面からカーブを描いて飛び込んできた火の玉を紫色のマントを払いのけ、レッドはしれっと答えた。
「勿論、僕も何らかの被害を受けたのかも知れません」
「……そうか」
 じゃぁ、お前の暴走も何か、お前の意図と異なる事情が在ったかもしれないんだな。
 しかしそういう俺の懸念を見抜いたように、レッドは眼鏡を押し上げる。
「……ヤト、ナドゥが出来るのはあくまでログの改ざんです。起きていない事を創造して挟む込む事は出来ない。あくまである記憶を一部的に抜いてしまったり、順序を変えたり、差し替えたりする事です。それ程大幅な変更は出来ないようだとエルドロウが言っていました。しかし……心に偽るものを多く抱える程に改変される負荷に……人の心は耐えられなくなる」
 視線を逸らし、言葉を続ける。
「そもそも、他の人の記憶を植え込む事はログという形態上難しいはず。だからナドゥにはそういう芸当はできないはずです。高く詰まれてればいるだけに無理をすれば、元来あったログは崩れ去ります。無理にそういう事をすればログそのものを壊す。ログとは3界に例えれば精神です。精神が壊れる」
「それは、ウィート君の事を言っているのね」
 アインが俺の頭上で休みながら言った。
 そもそも彼女は飛び回ったりするのも得意じゃないのに、さっきからマツナギと共同戦線でインティの足止めをしていたからな。口を大開きにしてクールダウンしている様子が……やっぱり可愛い。
 それはともかく、
 そういえばアービスの弟、ウィートの剣技はかなり俺に似ているとテリーが言ってたな。
 剣技、技能といえば、
「……新生魔王軍にも」
「ええ、間違いなく貴方のログが植え付けられている。鎧のアレに関しては何しろ規格は貴方なのです、ログの植え付けに制限は受けない」
「……いや、でも」
 俺は、新生魔王軍に入り込んだ時の違和感を思い出している。
「俺のだけじゃないだろ?」
「……そのようです」

 俺にもようやく仕組みが分かってきたぞ。
 今まで戦ってきた新生魔王軍を思い出しているのだろう、マツナギが顔を顰めている。

「一度ウィートに入れた後のログなんだね。……それを入れられて彼らは動いていたんだ」
 俺は、新生魔王軍の方に入り込んだ時のログをリコレクトしている。冷たい感情のずっと底辺にある得体の知れない飢えの感覚を、引き上げてみる。
 ずっと違和感を感じていた。これを、俺はどこで取得したのかよくわからんかった。
 そうか、どこかでアービスの弟ウィートのログが俺に混じってたんだ。そしてそのようにログが混ぜられるにウィートのログ、すなわち精神、ウィートというキャラクター……『人格』は……ぶっ壊れちまった。
 今テニーさんの様子がおかしいのも、何か余計なログを強制的に挟み込んだからか!?
 顔を上げランドールの体を混ぜ融合し、ぶっちゃけ乗っ取ろうとしているナドゥを睨み付ける。
「デバイスツールでテニーさんを救えると思うか?」
「弱気な事を」
 レッド、ブラックな不敵な笑みを浮かべて俺を一瞥。
「問答無用で救うと貴方なら言うと思いましたが」
 お前がそれを保証するなら俺は、その可能性を信じる。
「最悪、悪手とは分かっていますが魔導式でなんとかして差し上げますよ、」
 剣を握り、ああでもそれでも俺はまだちょっと不安なんだ。もう一つ嘘でも何でもいいから言って俺を騙してくれ。
 最後にもう一つレッドに尋ねた。
「……ランドールの状況は、お前の目から見てどうなんだ」
 まだ完全に融合が終わってないランドール、すっかり膝を折って蹲り、喘いでいるのが見える。
 レッドは、やっぱり暗黒微笑を湛えて俺に言った。
「まだ間に合うんじゃないかなと思います。王道的に」
「俺が大嫌いな王道的にな」
 苦笑が漏れる。
 王道ってのも……悪くないかも。

 その路線、ちょっと見直そうと思うよ俺。

 心の中で自分が持っているデバイスツールを握り込む。イメージだ、イシュタルトのデバイスツールは俺が持っている。
 その様に信じる限りそれは、俺の中にある。
「残りのデバイスツールは?」
「私が持ってる」
 マツナギが片手に闇の中に光が見える不思議な石、ユピテルトのデバイスツールを見せた。俺は頭上のアインに赤い玉、すなわちイーフリートのデバイスツールをを強引に渡す……開け広げている口の中に突っ込んでやった。
「うなん!」
 たぶん詰まらせたんだろう、変な声を出す。
「テニーさんとインティを頼む。俺は……ランドールをなんとかする!」

 なんとかって、方法とかぜぇんぜん思いついてないんだけど。

 地面が爆発しながら迫って来た。
 レッドが防御が無理だとジェスチャー、散会するにマツナギが俺を掴もうとしたのに、俺は逆に口の中に異物つっこまれて慌てているアインを頭上から引き剥がして投げつける。
「うにゃ!」
「頼むぜ!」
「ヤト、お前は!」
 デバイスツールは、というマツナギの疑問に俺は、笑うだけで答えた。
 爆発が俺達を分断させる。
 方法はまだ見えない、けど、なんとかして俺達は彼らを救わなければ行けない。
 なんとかして、だ!

 剣を構え爆発に吹っ飛ばされないように地面を蹴り、走り出す。
 背後から迫ってくる火の玉は全部レッドがたたき落とすだろう。そう信じる。テニーさんがこっちを止めようとして走ってくるのが見えるがテリーが回り込んで止めてくれるに違いない。
 視界の奥で、ついにランドールがゆっくり起き上がる。
 俺の相手はこっちだ。全部一人で救おうなんて、そんな無茶しねぇよ。

 一人で何とかするなと言われている。俺は俺の存在を信じてくれる仲間を信じる。

「ナドゥ!それで、お前はその次に何を望む?」
 叩き付けたはずの剣が跳ね返り、俺は押し返して交差する、力が強いのはもう分かった。
 剣を受けきるのを諦め俺は、ランドールの一撃を巧みに受け流し下段に流し切ってそのまま体当たりをかまし、背後に押し倒す。
 右手に注意?大丈夫だ、奴はしっかり右利きだから剣を握っている限り触れられる事は無い。
 背後に押し倒し、まずこのやっかいな右手を……ランドールには悪いが遠慮無く、奪ってやる!
 背後に転がされ、ランドールは横に転がって逃げようとする。致命傷を取らなきゃいいんだろ、やりにくいが、やりにくいとか言っている場合じゃねぇ。
 俺は、ランドールを殺したくない。
 利き腕奪う事になったりして、それでなんとか辛くも救ったとして、……ランドールは俺を恨むだろうか?
 なぜ殺さなかったと俺を恨むとするなら言ってやるんだ。
 生きてりゃ人生良い事があるさ。最悪だったと判断するにまだ早い。
 最悪だったものが、もしかすれば良かったと言える日が来るかもしれない。

 生き恥を掻いて、精々、散々生きてくれ。

 たとえどんな罪を犯していても、死ぬ事でなんか何も償えないんだ。生きているから償える。
 そう、言ってやるんだ。

 起き上がる途中のランドールに遠慮無く剣を打ち込む。
 中途半端な体勢にもかかわらずこの俺の一撃をしっかり受止め、はじき飛ばした。
 攻撃の手は緩めない、切り払われ右に飛んだ剣に振り回される形で俺はお決まりの回し蹴りでランドールの頭を狙う。
 空振った、ランドール首を引っ込めてギリギリ避けやがった。俺は舌打ちしてもう半回転して剣を構え直し突進。
 その突きをランドール、左手の篭手で受け止めやがる。ホント、外見ただの人間なのにやる事が人間じゃねぇ。
 切れ味の鋭い剣に籠手の皮部分が裂けて血が滴っている。
 ランドールがふっと歪み笑ったように見えた。
 それに何か危険なイメージを受け取って俺は、遠慮無く剣を引き抜きステップして背後に下がる。
「……用心深いな」
 何かしようとしたのか?……知るか、考えた所でわかる事じゃねぇ!
 ランドールの剣が飛んで来た矢をたたき落とす。マツナギの援護射撃だ、その隙に俺は再び飛び出した。
 渾身の連続攻撃をランドール、無理な体勢から全部受やがる。
 こいつの反射神経はアベル並みだな、明らかにこいつは俺の動作を見て避けている。
 隙を見て突き出されたランドールの剣を紙一重避けて半歩距離を取る。
 俺は、完全に戦士の勘で避けていたりする。大体すでに目で追える動作じゃねえんだよッ!
 相手から二撃目が突き出されるのも構わず突っ込んだ。左手に盾を構えこれを受け流しランドールの右肩を目指して剣を突き出す。その瞬間何かが上から覆い被さるようなイメージに心が萎縮する。
 戦士の勘が、逃げろと訴えている。
「止まって!」
 頭上のアインの言葉に俺は、自分が受けた威圧の感覚を信じきった。
 足を止めて突撃をキャンセル。
 目の前に……手が伸びているのをようやく知覚する。
 なんだ、この手?どこから……伸びてる……!?
 手が伸びる?ちがう、ランドールがこっちに突っ込んできているんだ。俺にその謎の手を伸ばす為に……と、その謎の腕にアインが飛びつき、噛みついた!
 俺はランドールの突進を阻止する為に姿勢を低くして腹を目がけ蹴り出す。
 ランドール、いやランドールを操るナドゥの意識が完全に伸ばしていた謎の手に集中している。
 俺の蹴りをランドールが見ていない。おかげさまでクリーンヒットした手応えを感じる。
「アイン!焼き切れ!」
 一緒に吹っ飛ばされるアインを確認して俺は叫んだ。
 アインは噛みついた腕にゼロ距離で炎のブレスを見舞い、瞬間で消し炭にしてしまった、アインはその反動で吹き飛んでいる。
 ランドールが吠える、いや、奴の中にいるナドゥが腕を一本失った痛みに悶えている。
 よくみると背中から、謎の腕が生えてやがる。成る程、警戒すべき右手とはランドールの右手じゃないのか。

 今消し飛んだ、ナドゥの右手か……!

「ラン様!」
 テニーさんの悲痛な叫びが聞える。
「よそ見すんじゃねぇクソ兄貴!」
 ランドールを蹴り飛ばした為に体勢を崩た俺の隣で、ウィン家兄弟二人は斬り結び、つばぜり合いを行いながら何度か、立ち位置を変える。
「やっと近づけたぜ」
 恐らく無理にテニーさんがこっちに乱入しようとしてたんだろう。
 その無理な動きにようやくテリーが追いついたってトコか。
 そう呟いた瞬間、テリーの膝蹴りが真下から繰り出されたのを俺は見ていた。テニーさんの剣の柄を、膝が下からはじき飛ばす。いや、万歳するみたいに上に両手がふっとばされたがテニーさんも負けていない。未だ武器を手放さない。
 しかしテリーはそこで遠慮無くカタナを手放し、得意であろう超接近戦に入った。
 瞬間素早く伸ばした手でテニーさんの首元を……取った!
 ここまで接近されてしまうとアレだ、長い武器とか扱いに困ったりするんだな。
 有効な攻撃をするに逆手に持ち直さないといけない。しかしそういう動作を相手がするのをテリーはすでに把握している。
 瞬間片手で逆手に持ち替えようとしたテニーさんの右腕を左腕で払い除けた。
 片手で剣を持ち替えるに一度、握りは緩めなきゃいけないからな。その瞬間をテリーはすでに待ち構えていたんだ。
 テニーさんはついに武器を取り落とす。
 そのままテリーは掴んでいる首を締め、テニーさんの体が宙を舞う。
 勢いよく、テリーは兄を地面ではなく……隣にあった木に叩き付けた。受け身って着地するべき所でタイミング取るからな。それが出来なきゃ上手く受け身は出来ないもんだ。
 そうやってテリーは完全に虚を突き、テニーさんに痛恨の一撃を入れた、接近戦では何枚もテリーが上手だ。
 完全に叩き付けられるタイミングを狂わせられ、テニーさんは呻いて地面に落ちる。
 叩きつけながら勿論テリーはまだ抱え込んだ首は放していない。最後まで掴み技でやっつけるつもりのようだ。
 瞬間テリーはこっちを伺う。
「コッチは構うな、ランドールを拘束しろ」
 確かに戦いに見とれている場合じゃなかった。
 俺は姿勢を崩していた所立ち上がり、腹を蹴られて吹き飛ばされたランドールが剣を杖に、起き上がろうとするより早く斬りかかる。
 ランドールが顔を上げた。
 見られてしまうと対応されちまう。
 凄まじい反応速度だ、斬ったと思ったのに気が付いたら剣が止まっている。そして力も強い、俺がこんなに押し込んでいるのにランドール、俺と剣を片手で交えたまま……立ち上がり体勢を立て直してくる。
 切り払われる……仕方がない、単純に力の差だ。
 返しに迫ってくる剣を盾で防ぎ背後に押しやられ、俺はたたらを踏んだ。
 くそ、盾を構えた左腕が軋む、酷い馬鹿力だ。
 ランドールは殺気丸出しでさらに俺の頭上から斬りかかってくる。でも俺はその殺気で剣の軌道が読めたりするぞ、だから目を閉じててもヘタすりゃ敵と戦えたりする。
 姿勢が崩れていても、攻撃を見ていなくても、攻撃を避けられるのは……そういう仕組みだッ!
 紙一重に横に避け、狂った姿勢を強引に立て直し基本の型で振り下ろす。
 ランドールも姿勢を柔軟に変えて俺の一撃を避けた、基本形もバカにはならない。そこから連携させる為の基本形だからな。受け取らせるか、避けさせるかというための為の『虚』攻撃なんだよこれは!
 うははは、やっぱりそうだ、そうなんだ。

 かかったな未熟者め!

 俺は勝ち誇り、振り下ろした剣をそのまま横に、剣の刃の向きを変えずになぎ払う。
 最初から切り払う為に切っ先で振り下ろしていない。刃を水平に振り下ろしていた。次の攻撃こそが『実』なんだよ!
 次の動作に隙を作らず、2撃目の薙ぎ払いを当てに行ってんだよ俺は!
 全部の攻撃にダメージを期待する必要はない、それを俺は知っている。
 動作には全てリズムがある。連撃の動作の中にはどうしても手首を捻る一瞬の間が存在する。目視反射神経で動く奴はそれを見てからでも十分に反応出来るんだろう。俺は無理だが。
 とにかく一瞬、ほんの一瞬の間があるんだ。それは俺も把握している。
 その瞬間を有効に使えるか使えないかが凡人と超人の埋められない隙間だというのなら、俺はそれをトリックで埋める。
 手応えがあった。
 ランドールの鎧ごと胸を浅く切り裂き、俺は薄く笑う。
「観察力が足りてねぇぞ!」
「…………」
 ランドール、無言で斬られた胸を押さえ警戒して距離を取った。
 理解した……間違いない!ランドールの強さは能力的な高さに底上げされたものであって、技術における技量の高さは間違いなく俺の方が上だ……!

 イケる。

 俺は剣を中段に構えた。
「傷つけるに迷いはないのか」
「人質にでも取ったつもりかよ」
 誰の言葉でランドールが言っているのかよく分からんが。
「俺から情けを掛けらるの、奴なら嬉しくねぇだろうからな」
 低く腰を据えた。
 本格的に攻めるぞ俺。
「まずは、とっちめてからだ!」
 戦って剣を受けるほどにランドールの攻撃は短調に思えてきた。
 俺は剣闘士時代を思い出している。一瞬、一時を戦う剣闘士同士の戦いは複雑だ。瞬間の圧倒的な集中力がモノを言う。
 俺は殺気を読むという多分天性の『弱虫』属性により、本能的に攻撃を避けるという自分の特徴をまず、監督から徹底的に把握、開発させられた。
 集中すればするだけ、あまりに早くて把握出来なかったランドールの剣の軌道が見えてくる。
 相手の怪力を受止める必要なんかねぇ、俺は遠慮無くランドールの攻撃を巧みに避け、虚実を混ぜ込んだ斬撃で致命傷にはならないが細かいヒットを積み重ねる。
 鎧の隙間を縫い左足を重点的に攻めてみる。細かい技でも、積み重なれば結構なダメージになったりするのだ。ランドールにはちゃんと痛覚が生きている。そしてそのダメージは間違いなくナドゥにも通っているだろう。
 傷への反応がランドールより極端だ。明らかに、血を流す事に慣れていないぞナドゥ。

 ……新生魔王軍より色々な意味で楽な相手だったな。

 俺はランドールの右腕を切り払い背後に抜けた。


 こいつは、本物のランドールよりも何倍も、弱い!


 ランドールはついに二の腕を切られて剣を取り落とし、蹲る。
「失敗だったな、ナドゥ」
 背後から俺は、一応警戒してちょっとだけ距離を取り、籠手を槍にして向けた。
「そんな不完全な力で何をするつもりだ?」
 ランドールの背中、背中の鎧が剥がれ落ちている首筋がぼこぼこと泡立っている。その泡に乗せて声が聞えてくる。
「不完全は致し方ない」
「相変わらずこき下ろしがいの無い奴だな、貴様は」
「重要なのは、融合が、可能になったかどうかだ」
 泡の奥から聞えてくる声と、ランドールの声が重なり合う。
「実験終了ならランドールを離せ、お前はランドールを使いこなせていない」
 その傷だらけの体はもはや、邪魔だろ?
 手放すんだ、それでランドールは救えるかもしれない。
 それで、次に誰を代替によこせと言い出すのか分かったようなもんだが。

 俺は目を細めた。

 心の中で、存在を信じる者にだけ持つ事が出来る……イシュタルトのデバイスツールを握り込む動作を意識する。
 青旗の勇者の心、精神、すなわちログをシステムはどこまで守るのだろう?

 俺は槍を籠手に戻す。そして、周りを一瞬見回した。
 テリーがテニーさんを押さえ込み、寝技に持ち込みオトしにかかっている。インティとレッドらの戦いは炎と氷の反発による水蒸気弾幕でよく見えない。
 というかそいつが辺り一帯に立ちこめていて視界が非常に悪くなってきている。
 アインはどこにいるだろう、マツナギは……。

 止めるかも知れないけれど。

 俺は構わずランドールの背後に近づいて手を伸ばした。
 泡立っている怪しい背中に触れようとした俺を、やっぱり誰かの手が止めてきた。
「何をするつもりだい」
 いつの間にか背後にマツナギがいる。ランドールに触れようとした俺の腕をマツナギが掴んで止めていた。
 俺の暴走を止めるように、強く願われて……マツナギはこうやって俺の傍に居て行動を見張ってたんだろうなぁ、きっと。
「ランドールを引き剥がす、後は頼んだぜ」
 俺は、マツナギの手を左手で押さえ離すように視線で訴えた。
「それで、何をしようとしているんだいと聞いている」

 ええ、変わりに俺がランドールの立ち位置に入ろうとしてます。

 俺がやろうとしている事なんてやっぱりみんなお見通しだよなぁ。
 でも、問題ないぞ。
 多分、俺は勝てる。
「……やらせてくれ」
 俺はマツナギに自分の頭上を指し示し理解を求めた。
 忘れるな、俺達は頭上に青い旗を持ち存在をシステムによって強く保証されている異端者だ。
 ナドゥに乗っ取られるという事は無いだろう。
 俺のログがぶっ壊れる可能性は限りなくゼロだ。
 だから怖くない。
 そんな理由で怖くないと言ってはいけないんだろうけど。

 最後までイタい勇者として振る舞う事を許してくれ。

「俺は、ナドゥを……踏み潰してくる」
 そっとマツナギは俺の手を放してくれた。俺が確信する勝利を信じてくれる。
 俺の挑戦を、マツナギは許してくれる。
 思いを受止め、認めてくれるのはやっぱり……苦しい。
 どこまでも俺を理解せず、止めてくれればいいのにと一瞬考えてしまう、この心の裏には……理解されるに苦しいという答えがある。
 何で苦しいのか。
 それは自分の持つ自分の意見を自分で、守らなきゃ行けないからだろうな。
 大変なんだこれ、他人は俺に同意してくれるだけで俺を守ってくれる訳じゃない。
 俺に寄りかかってくるだけなんだ。支えてくれる、とも言うのかもしれない。
 支えるのは互いが寄りかかるのと同じようなものに俺は思う。

 でも、俺がやらなければ誰かが俺と同じ事をやるだろう。
 誰が、と言えば……俺の思いを理解し、同じ所に立っている人だ。俺がやらなければマツナギがやる。今俺の側にいるのが彼女なだけだ。
 俺達は誰しもがこの立ち位置に立てる。
 それでもなんで俺が、という思いは……やっぱりあるな。
 無いと言い切る事は無理だ。でもその本心は戦士ヤトの仮面の下に隠し通してやる。
 俺がやる。人柱勇者でも何とでも言え!
 本音ではやりたくなんかない、それでもやんなきゃ行けないイタい勇者の立ち位置から俺は、逃げない。
 最終的に魔王を勇者は倒すのが王道だ。
 多くは力で、地にねじ伏せ、踏み潰す。

 王道嫌いとか、そんなんは俺のキャラじゃねぇ。
 サトウーハヤトの特性だろ。


 俺は手を怪しく泡立つランドールの背中に伸ばす。
 そこから勢いよく飛び出してきました、第二の右手。
 それが俺の手を遠慮無く掴んだ。瞬間電撃が走るような感覚に体が痺れる。
 そうだな、腕は最初見た時確かに……三対あった。

 負けてたたまるか、俺は足を踏ん張り俺の右手を掴む右手を左手で掴み、ランドールから引っ張り抜こうと試みる。
 ずぶずぶと抜けて出てくる、異形の姿に顔を顰めながらもランドールを自由にするに必死で、俺はナドゥを引っ張り出すべく踏ん張った。
 ランドールが再び痛みに呻き、悲鳴を上げている。
 男の子だろ、我慢しろバカ!
 そのように心で罵倒するのは、俺も同じく痛みにうちひしがれているからだ。
 ここに俺一人なら大声で悲鳴を上げていたかもしれない。でも、我慢大会に負けたくないから俺は我慢するぞ、……畜生!


 心が悲鳴を上げている、心に引きずられ、肉体の痛みまでをも喚起する。


 ログ改変、ナドゥの切り札。

 その力を齎すらしいナドゥの右手が俺をがっちりと掴み、俺の意思とは裏腹に痛くて思い出したくない事を勝手に呼び出して叩き付けるんだ。
 肉を裂く剣の感覚を両手が支配し、鼻孔に血のフレッシュな匂いを味わっているような感覚に騙されている。
 そう思っていたらその匂いが甘く爛れる。腐る、吐き気をもよおすべき腐敗臭と共に脳裏に呼び出されるうずたかく積まれた死体の山の記憶。
 違う、俺はそんな事やってない。
 反射的に否定してしまうと途端、タトラメルツで目の当たりにした一面の白い砂漠が喚起され、お前がこれをやっただろうという嘲りに心臓をわしづかみにされる。

 夢だ、幻だ、そうやって必死に否定したいのに残念ながら全部現実なんだ。

 幻じゃない。

 俺は俺を殺した。
 すでに動けないものを証拠隠滅するためにぐちゃぐちゃに、肉片に変えた。
 クオレを殺した。
 その瞬間をリコレクトし、続けざまにストアの腹を切り裂いた事を思い出し、ギルにとどめを刺した事を思い出し、俺の顔をした新生魔王軍の頭を切り落とした瞬間を思い出し。
 黒い怪物を切り裂き、元人間と知りつつ遠慮無く叩き斬っては捨て、黒い血にまみれ、何人の何人も。

 闘技場時代に遡る。
 俺は、一人歓声の中で耳を塞いでいる様な沈黙で舞台に立っている。
 恨みと憎しみで、勝利を宣言し相手にとどめを刺した多くの瞬間がフラッシュバックして脳裏を焼く。
 そうだ、殺した、俺は殺し続けるしかなかったんだ。
 俺の邪魔をする奴は、俺の足を引っ張る奴は遠慮無く殺して排除するしかなかったんだ。
 俺はそれが許されていた。闘技の神イシュタルトに捧げる儀式の元、勝者として人を殺す事が許されていた。
 感情で生かすと殺すを選んだ。
 俺の実力を嫉む奴、俺の生い立ちを笑う奴、俺の立場を利用する奴、執拗な苛めもある辛い立ち位置で生き残るにはそうするしかなかった。

 俺は生きるしかなかった。
 死ぬ事なんか、考えられない。

 死ぬのは負けだ、ざまぁと笑いながらとどめを刺すに、俺はそうやって笑われるのが嫌だったから生き続けた。
 笑われたくなかったから死にたくない?
 なんという幼稚な理由だ。
 でも、俺にはどうしても幸せと笑いながら死ぬ自分の姿が想像出来なかった。

 笑いながら死にてぇじゃねぇか。
 出来れば、俺も、俺の周りもみんな微笑みながら、さよならと言い合えたらどれだけ幸せだろう。
 また会おうとは言わない。
 また会う事に救いは見いださない。
 永久の別れだとして、どうやったら俺達は笑いながらその別れを迎えられるのだろう。

 高望みだ。
 俺の望みが叶わない、難しい事だと気が付いて乾いた笑いが漏れる。

 腐った死体の山を突きつけられ、違う、これは俺の所為じゃないと言えなくなる。

 俺はどれだけの人を殺し、どれだけの人の幸せな最後を踏みにじったのだろう。
 そんな俺に幸せを味わう資格があるか?

 無いんだ。だから、俺は……!

 両手に枷が填められ、鎖に囚われるように身動きが出来なくなる。
 身動きできない俺に向け、地面を這うように長い手足を持つ蜘蛛のような影が近づいてくる。
 誰だ?
 混乱した頭で必死に問う。
 赤い旗が答える。
 なんだこれは?何で俺にはこんなものが見える?

「お前はどう責任を取るつもりだ?」

 問いかけられる、それは俺が……ギガースに問いつめた言葉そのものだ。
 世界を変え、そしてその責任をお前はどう取るんだ。
 責任を取れ?責任とやらは取れるのか?取れたとして、それで許してくれるのか?
 そうやって折り合い付けるのが難しいんだ。
 簡単じゃねぇの、俺は知ってる。知っているのに憤って、この現状をどうにかして貰いたくて、問題起した相手をやっつけてやりたくて。
 ただそれだけの為に投げつけるんだ、どう責任取るんだ、って。

 うずたかく積み上げられた死の前に、お前はこの死の責任をどうやって取るのだと無理難題を突きつけられ俺は、完全に思考が止まり掛けている。

 赤い旗が目に煩い。
 ……そうだ、俺はナドゥと対峙すべく……目の前にいる男がナドゥだと認識して辛うじて意識を持ち直す。
 負けてたたまるか……!
 現実と境の分からない幻覚から自分を掘り起こし、必死に脳裏のぐちゃぐちゃになっている記憶の中から自分というログを構築し直す。
 青い旗がそうやって、俺の存在を守るんだろう?

「……その言葉、そっくりそのまま、お前に返す!」
 持ち直し俺はようやくナドゥの顔を判別出来るようになった。俺の右手を掴む、奴の第2の右手を引っ張って、ついに奴の体を引き抜いていた。いや、奴は自主的に俺に、近づいて来たのだろうか?
 無意識化で感じた手の長い蜘蛛の様な影の正体はこいつか、二対の腕、そのうち一本の右手が消し炭になって無い。アインが吹き飛ばしたからな。ランドールの中に沈み込んでいた頭も当然外に出ている。
 思うに、その顔が少しだけ驚いているように見える。
「責任か」
 短い言葉でナドゥは応答し、目を細めた。
「世界を平和に導く事で答えよう」
「自分で言った事忘れんじゃねぇぞ……?お前は、平和なんて絵空事だと言った」
「実現するに難しい、夢のような事だと確かに私は笑った」
 二本の腕を持つ怪物を引き剥がし、俺はそれと事も在ろうか握手したままでランドールから引き抜く形で後ろに尻もちをついていた。
 奴は今も俺の右手をがっつりとつかみ、今左手で俺の肩を掴んで身を乗り出して来ている。
 一旦引き剥がそうとするが、ナドゥが離してくれない。

 視界の奥で倒れているランドールと、それを支え起そうとしているマツナギが見えた。
 更に向こうからナッツがこちらに向かってくるのが見える。
 幻覚じゃないのか、でも幻を見ているように感覚がフワフワしていて現実味が希薄だ。

「副産物だよ」
「……何?」
 ナドゥは至近距離で俺に囁いた。
「世界を一つに融合するに生まれる、平和というものは副産物だ。それ以上、以下でもない。世界を一つにすると云う事はすなわち世界を平和にする事ではないのだ。リュステルは秩序の維持を望み、在る理論の中で王を作ろうとして失敗した」
 そう言って、ナドゥの二本残っている左腕の一つが……俺の胸に触れる。鎖帷子がぐにゃりと形を変え、奴の腕の侵入をまるで水のように許す。
 入ってくる、胸に突き刺さる何かの違和感に胃が痙攣し、吐き気を必死に押さえ込んだ。
 その様子を確認したようにナドゥは、ゆっくりと俺の胸から差込んできていた腕を引き抜いた。引き抜かれる感触の方が気持ち悪い、俺は素直にえづいてしまう。
 体の中をかき乱されたような感覚が胸に残る。
 やっぱり幻覚か?これは、現実じゃないのか?
「異なるものを一つにするのはこのように、難しい」
「……貴様、何が言いたい」
 引き抜かれた左腕の状態を見るに、俺の体に穴が開いたわけではないようだ。痛み、とは微妙に違う感覚が胸に残っている。血は流れていないが……今、一体何をしたんだ……!?
「異なるものを一つにするに、必ず……争いが起きる」
 ナドゥは淡々と語る。
 必ず、争いは、起る。
 言い切ってくれるな、確かに異なるものが一つになるのは簡単じゃないのは俺も分かる。だけど……!
「だというのに、人は平和という幻想の前に国を一つにと願っている。その為にどれだけの血が流れ、その後にどれだけの戦乱が続いたのか。歴史に刻まれているにもかかわらず。リュステルでさえも歴史に学びはしなかった」
「リュステルはお前だろう」
 違うものだと否定するな。
 それは自分じゃないのだと、都合良く逃げるんじゃねぇ!
 そのように睨み付けるにナドゥは唇だけで薄く笑う。
「認めよう、私は過去リュステルだった。彼は間違っていた。だから、私は彼の失敗を繰返さない」
 淡々と答えて責め処を悉く失う俺をあざ笑う。
「何を、失敗したってんだよ!」
 奴の訳の分からん理論から、滑り落ちないようにとっかかりを探し、俺は問う。
「彼は、世界に唯一の王を作ろうとして失敗した。一度ではない、二度に渡って……だ。いい加減誤りだと気が付けばいいものを。諦めないで私達を作り、分裂させ、なぜ分裂するのかという根本を探ろうとした……愚かな事だ」
「2度ある事は3度あるんじゃねぇのかよ」
 そういうお前も愚か極まりねぇって事じゃないかと、俺は責めてみるのだが、俺なんかより遥かに頭の回転が良いであろうナドゥは、どうすれば自分が窮地に追い込まれないのか把握しているんだろう。
「同じ事は繰返さない。勿論手段が誤りの場合もある。私の手段もまた間違っていたと、君は私にそう言いたいのだろう」

 否定意見を一切拒否しねぇんだ、こいつ。
 剣を突き立てるに、ぐにゃりと刃の侵入を許す。

 斬った感覚が無い。

 全てを許す、異なるものを一つに纏め、融合するには……許すしかないんだ。
 異物を受け入れるのが手っ取り早い。
 でもそれはリスクが伴うだろう。なんでもかんでも内側に許せばいずれ受け入れたものから……本質が喰われる、侵食される。
 場合によっては混じり合う。そして……別のものになる。
 異なるもの受け入れる方が損をするとは限らない。
 もしかすれば、受け入れた方が許した異物を飲み込み取り込んでしまう事もある。

 衝突を避けて受け入れたはずのものが内側で鬩ぎ合い……
 そして、いつしか争いを避けて出て行くものが現れる事もある。
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