異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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11章  禁則領域    『異世界創造の主要』

書の5前半 困らせる人『迷惑かけてもいいんだぜ』

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■書の5前半■ 困らせる人 You should have perplexing with

 この世界で一番速く海を走る船、エイオール船。世界を網羅する情報屋、ふくろう看板が持って居る世界的な規格から外れた『魔法の』船だ。
 レッド達はそれを使って、俺達がいるイシュタル国に向かってきているという。
 この場合、数的に言ってもはぐれているのは俺達の方だよな。
 本来ならば俺達が奴らの方に合流すべく動かなきゃいけないのだが……。
 どうにも、俺達が別段意図せずイシュタル国に連れてきてしまった『問題』が肥大化してきた。
 ギル、奴を持って蓋をされ封印されているものは……何だ?

 ここでよかったのだろうか?

 『問題』とはすなわち、魔王八逆星の中でも破壊魔王と知れ渡っているギルだ。奴を2重に封じこめている元闘技場を俺はぼんやりと見やった。話はついているので今は大人しく封じられている奴だが、最終的には開封して一戦交える的な約束をしている。

 その、舞台はここで良かったのだろうか。

 いや、ここでなければドコになっていたというのだろう。
 一体全体どういう意図を持ってカオスの奴は俺らも含めて、ここ遠東方にふっとばしやがったのだろう。
 契約という特別な方法を用いてまで……そこまでしてあの悪魔、カオス・カルマが俺達に手を貸し、魔王八逆星の連中のたくらみを邪魔する意図は……何なんだろう。
 カオスに向かってかつて俺は、尋ねたよな。
 お前は世界を壊す存在か……と。
 そしたら、確か『そうだ』と簡単に答えやがったはずだ。
 俺らとカオスの目指す方向性が合致している、だから奴は俺達に手を貸すのだと言っていた。
 世界を最終的に『物理的』に『壊す』という意味で、だろうか?俺自身が『物理的』に破壊してしまったタトラメルツを目の当たりにして、俺はヤツのセリフに酷く面食らったものだ。
 あの野郎……なんか色々計算尽くで俺達をイシュタル国に運んでないか?
 カオスは、俺達が今でも大陸座を巡ってアレコレしている事を知っているんじゃないのだろうか?そもそも大陸座に助力を仰げ、魔王だけじゃなく、大陸座も問題だと最初に言い出したのはカオスだしな。
 後付け的だけど、その様に勘ぐってしまう俺である。
 いずれ大陸座イシュタルトを探して俺達は、イシュタル国の中心地とも云えるエズを訪れただろう。その時アベルをどうするのか、って話もするハメになっただろう。その辺り、順序を全部ふっ飛ばして来てしまった感はある。でもま、そういうお約束の手順を全部ふっ飛ばした旅は今に始まった事じゃない、最初っからだ。
 こことは別の島にあるイシュタル国の首都から始まった俺達の旅の道順としては、本来であれば次がペランストラメールであるはずだ。そこを逆にシーミリオン国なんて、完全に前代未聞だったろう。
 そこで、意図せず大陸座との初対面となったな。そうして、大陸座からデバイスツールを受け取る事が俺達にとっては、魔王を倒す事よりも優先順位は上という事になった。

 そういう俺達の目的を把握したうえで奴は、俺達をあえてイシュタル国に運んだのではないだろうか?

 魔王八逆星は、バグである赤旗を感染させるホストとして存在自体が危険だ。これ以上の感染を防ぐという意味では魔王を討伐する方が優先順位は上であるように思うだろう。
 しかしその赤い旗の存在そのものを無効化出来れば、だな。別に奴らを虱潰しに怪物を倒さなくてもいい。そも、赤旗の奴らは存在理論的に狂っている、すなわちバグだ。そのバグ部分を高次元で……すなわちシステムという部分で修復し、存在する事を禁じてしまえば……。
 今の世界の理論的には、存在理論が破綻している赤旗の怪物達は世界の中から消える。
 居なくなる。
 存在出来なくなる。
 そしてその時……俺も消える。
 というか、少なくとも戦士ヤトは消滅するだろう。だがそれは世界が俺を『忘れ去る』という事じゃない。積み上げられた時間、歴史のログは修復不可能だからな。
 だから、世界は俺が消えた事実の辻褄合わせをするはずだ。
 そうやって、手っ取り早く言えば死んだ事になるに違いない。
 ヤトの歴史が終わる。何も難しい事じゃない。……それが死ぬって事だ。
 その後も『俺』がトビラの中に居たければ、バグって消えた戦士ヤトを土に返して別の新しいキャラクターを立てればいいだけの話だ。難しい事じゃない。
 今、戦士ヤトは確かに『俺』で、それを外側から見る事は難しい事だがそれでも観客的に見るならば、戦士ヤトというのは『俺』が被っている側面、キャラクターに過ぎない。

 うん、この認識が今の俺、すなわちヤト・ガザミには思いの外難しい訳だけどな。

 考える事は出来るがどうにもしっくりこない。
 なんで自分をそんな風に否定しなきゃいけない、というので戦士ヤトが足掻きやがるんだ。
 とにかく『俺』、すなわちサトウ-ハヤトが戦士ヤトを辞めて次のキャラクターを纏ってこの世界に受肉する為にはまず、今のキャラクターつまり『戦士ヤト』としてを手放さなきゃいけない。二つのキャラクターはゲームのシステム上設けられない事になっているもんなぁ。新しいキャラでログインするには……ヤトには死んで貰わんといけないわけだ。
 そういう思考をするに、そんな理由でお前は俺を殺すのかよ!と内側から怒鳴られている気がするんだ。
 ……分かってる、そんな理由で死ねるならさっさとお前とはおさらばしてる。
 それが出来ないから色々足掻いてんだよ。

 ところがなぁ、俺は今現在見事に存在がバグっている。

 要するに死なない、簡単には死ねないという仕様だ。肉体が自動修復するんじゃない。
 俺という意識が入り込める器が異常増殖してやがる。

 今握って開いたりしているこの手を持つ俺の肉体、これが死んで灰になってしまっても、俺は『死んだ』という意識を抱えたまま、また何処かでふっと目を覚ましてしまうのかもしれないのだ。

 これが、ナドゥが俺に約束した不死か。

 握り込んだ拳を睨み付け、俺は深くため息を漏らしていた。


「ヤトさぁーん!」
 やや間延びした声が聞こえて拳を緩め、顔を上げた。イズミヤが慌てて走ってくるのが見える。
 魔導師って肩書き持っている通り、奴は頭も良いし冷静って言えば冷静なのだが……どうにも落ち着きのない奴だよなぁ。俺が知ってる魔導師連中が冷徹な奴らだっただけだろうか?あ、いや……そういえばあの黄位の下っ端、サトーがあんな感じだったか。でもイズミヤは緑位、だとかいうので弟子こそ取れないとはいえ独立を許されてるちゃんとした魔導師だ。
 これって魔導師に対する偏見か?
 とか思いながら、慌ててやってきたイズミヤを迎える。
「どうした?」
「大変だ、本当に来た!」
 俺は慌てて体ごと振り返る。
「そうか!早いな、もう着いたのか……まだかかるって言っていたけどエイオール船、がんばってくれたの……」
「違います!それじゃなくて!」
 イズミヤは荒い息を整えながら手を上げて俺の言葉を止めた。
「魔王軍が!港に突然現れたという事で!」
 ……は?
「何だと?港に?突然って何だ!……どっちの港だ!?」
「あ、西の……セイラード方面で……!」
 セイラード、イシュタル国の外に出るための玄関とも言える港町だ。もう一つある大きな港ミナは主に首都レイダーカに渡るための港だが一応、外からの船も入れる。
 俺はエズでの生活が長いもんでな、イシュタル国の地理はバッチリだ。
 でこのミナってのは……エズを挟むとセイラードと大陸の反対側にあるって話は、前にもしたよな。他にも港はあるけれど、あとは大抵漁港とか、とにかく利便性はよくないし外の国の船が入れるようになってなかったり。
 俺は難しい話分からんが、そらぁ国が違えば物資の出入りには税金かかるんだろうし、入国管理的には入ってくるルートは少なくした方が国にとっちゃ管理はしやすいだろう、的な事くらいは分かっているんだぞ。
 もちろん、漁村から魔王軍が攻めて来るのもアリだとは思う。
 大変に意表をついていて、展開的には面白いと思う。
 思うが……ちょっと間抜けじゃね?戦略的には間抜けとかそういうのは問題無いんだろうけど。
 ……戦士ヤトは港、って聞いて大きな港のどちらかとすぐ決めつけて話してしまったが、可能性としては漁村のミュールあたりから攻め込まれる事もあったかもしれないんだな。
 とにかく、
「……国からの増援部隊は……北から入ってくるんだよな?イシリ方面から……湖のどっち回りだ!?」
 エズは大きな湖の袂にある。湖を迂回するに平原か、山側かルートが二つに分かれる。湖に船も在るっちゃぁ在るが……人を大勢乗せて運ぶような大型船は無かったはずだ。真眸鏡湖は冬期間バッチリと凍り付いてしまうし、存外地形が複雑らしくて大きな船の運営が難しいらしい。大型の魔物化した魚類とかも住んでいるとかで、外周の陸地路線の方が交通手段としては発達している。
「平原回りです、ミュール駐屯軍からも合流する部隊があるとのことで……」
 ……ミュールって漁村だよな?んな所にも駐屯軍ってあるんだ?知らなかった。俺ってほんと、モノを知らないバカなんだなぁ。
「それはまだ着かないんだな?」
「取り急ぎ、現状についての伝令を飛ばしてあります」
 イズミヤは左手で自分の頭をつつく動作をした。恐らく自分の通信魔法で魔王軍の到着を知らせて急ぐように伝えた、という事だろう。
「くそ、それで、セイラードは大丈夫なのか!?」
「セイラードもエズもそうですが……腕っ節に自信のある者の出入りが多いのはご存じですよね?それで……困っているようです」
「なんで困る」
「恐らく魔王軍の目的は蹂躙ではないでしょう、ここを、」
 イズミヤはギルが封じられている闘技場跡を指さした。
「目指しているはず。レッドさんの話からはそのように私は推測します。魔王軍はまっすぐこちら、エズを目指して来るはずでしょう?」
 ああ、ようするに奴らにはヘタに手出して刺激しない様に、とにかく逃げて避難しろと国で指示しているにもかかわらず……魔王軍にちょっかい出す奴が多すぎて困るって話か。
 血のっ気満載、暴力上等な奴らが多いセイラードやエズ近辺では、有り得そうな事態だ。
「いいじゃねぇか」
 俺は素早く籠手を締め直し、武器を腰に巻いて立ち上がる。
「軍が間に合いそうにないなら手っ取り早く、力のある奴らを頼るしかないだろ。国民の安全確保が第一、だよな?」
「……はい」
 俺が何を言わんとしているのか、イズミヤは悟ったな。
「頼めるか」
「早速、強権発動させます。……これよりエズ闘技場剣闘士を対魔王軍対策に調整するように協会に命令を出します!」
 俺が言いたかった事を的確に把握し、イズミヤは姿勢を正す。俺はそんなイズミヤの肩を叩きつつ、厄介払いをもくろんで強制命令。
「よし、じゃぁエズはお前に任せる」
「って、任せる?どういう事ですか」
「……なんで突然セイラードに魔王軍が現れるんだ。そんな突然やってこれるならなんで、直接ここに来ない。奴らは転移門も使うんだぞ?」
 俺が地面を指さして問いかけるとイズミヤは、当然の疑問を把握して怪訝な顔になった。
「……俺は、何が起っているのかこの目で見てくる。リオさんは……」
「あら、私は貴方についていくわよ?」
 置いていくからと言おうとしたのだけどな、振り返ると腕を組んで背の高いリオさんが細い目で俺を見下ろし挑戦的に笑っている。
「何が起きているのか、貴方で上手く判断出来るのかしら?」
 それ言われると俺は素直に頭を掻くしかない。
「しゃーない、レッドらがセイラードに到着するまで港で待つとするか」


 馬を借りてエズを取り囲む山を駆け上がる。
 イシュタル国って国土が狭い癖に起伏が激しいのな。で、それらを超えるに峠道とか経由してたら遠回りだ。とはいえ、それは他の大陸、他の国に比べればって話かもしれない。
 なんというか、イシュタル国はリアルに例えれば『日本』なのだ。国土が狭い、山が在って起伏が激しい、狭い所に沢山住んでる。俺は、今回の旅で初めて他国を回り、イシュタル国のせせこましさを実感したものだ。
 とにかく、そんなイシュタル国では人工的に山を越えてしまう通路を造る、という技術がある。つまり、トンネルだな。山を越えるに山をくり抜いてしまえって考えは、起伏の激しい国土の都合もあるだろうが何よりそれが出来る技術力があるって事が大きい。イシュタル国では何が一番特徴的かって外の国で聞いたら、間違いなく『技術』という答えが返ってくるだろう。
 イシュタル国は魔法・科学に限らず『技術大国』だ。
 元より鉱山も多く、元坑道もあちこちにある。鉱山技術の応用で山をくり抜くという技術を在る程度、極めてしまったワケだな。
 山のあっちこっちに鉱山跡らしい穴がぽこぽこ開いていたりするのだが、向こう側まで到達していない穴も少なくない。悪い事をして追いかけられたり指名手配でもされてない限り、そういう穴のお世話になる必要はないわけで……噂では国で管理している山道よりも格段にショートカットできるという、秘密通路もあるらしいとか、聞いた事もあるんだけどな。
 廃坑なんか通ると魔物やらの格好の住処になって逆に時間を取られるかもしれない、俺は素直に国で管理している山道をかっ飛ばすつもりだ。
 セイラードに向けた坑道を馬で走り抜ける。坑道っていうか、これ大型トラックも余裕で行き来出来る立派なトンネルだ。
 すでにセイラードに怪物が出たという情報は伝わっていて、坑道管理する側で交通規制なんぞ掛けていたが……ここはイズミヤが持たせてくれた『強権』で突破。国で認められた正式な魔王討伐隊としての書類を突きつけて、あれこれ問いただされる前に緊急事態を前面に押し出して走り抜けた。
 責任問題とか気にするアホな管理職には、責任は全部イズミヤ外交官補佐が被りますって黙らせるリオさん、流石だ。
 魔王軍連中も空でも飛ばない限り、エズ方面に進軍するにこの道は使うはずだ。
 あの険しい山を通るより、この立派なトンネルを占拠した方が圧倒的に利便性が良い。
 いずれエズから強制徴兵された剣闘士達が、このいくつかある坑道かつ『公道』を要として魔王軍を迎え撃つ事になるだろう。
 昼前にエズを飛び出した俺達は、早馬のお陰で数時間後にはアップダウンの激しい山道を走破し終えた。あとは下りだ、日が暮れる前までには着くだろうが……恐らく、そろそろこちらに向かってきているだろう魔王軍とは鉢合わせになると思う。


「新生、の方だと思うか?」
「イズミヤは『怪物』と言っていたわ。人の形をしている魔王軍の情報はまだイシュタル国でも掴んでいないと思うのだけど……新しい方なら怪物じゃなくて『軍隊』って言うと思わない?外見は人で、鎧姿なんだし」
 俺とアービスで、リオさんの乗る馬を挟み込み誘導する形で走ってきた。リオさん、馬に一人で乗る程騎乗には慣れてないと言うが、もう十分様になっているよ。
 下り道で少し速度を落し、リオさんの馬に寄せて近づき、改めて事情確認をしよう。
「なんでセイラードから攻めて来るんだろう。奴ら、移動に船でも使ったのか?」
「……考えられなくもないわ。セイラードに着いた船に魔王軍化が出来る者、例えば魔王八逆星が紛れ込んでいれば……」
「くそ、考えたくねぇ展開だな、それは」
 同時にそんな事をしでかす奴は誰だろう、と考えて可能性を絞ってみる。

 ギル……は、すでにエズにいる。エルドロゥは魔導師だ、移動するのに転移門が使える、一々船を使うだろうか?インティもこれは同じく。奴なら真っ直ぐ用事がある所、たとえばエズに現れるだろう。ナドゥのおっさんは南国に掛かりっきりと聞いた。……分裂している方も別で動いている可能性もある訳だが、やはり転移門を使いこなしている奴が船を使うとは考えられない。
 クオレは死んだ。俺がこの手で殺したから、烙印の譲渡は起きていない。
 アービスは、今隣を走っている。
 ランドール……奴は、南国にいるはずだ。少なくともギルを追っかけて遠東方までは来ないだろ。奴の目的は……国盗りなんだろ?どういう手段でやるつもりなのかよくわかんねぇけど。
 って事は俺の知る残りで言うと……。

「……ストアか?」
「最近動向掴めてないのは彼女くらいよね」
 流石に頭の上は安定しないのか俺の乗る馬の鞍の後ろ、マントの下にしがみついているアインが同意、と頷いている。
 タトラメルツで顔を会わせた魔王八逆星の皆さんの中では、考えられる可能性的に彼女になる。あれ以外に魔王八逆星がいなければ、の話だが。いや、いないはずだ。
 俺も付き合わされた『扉を閉める』作業。人数が足りないから俺も加えられたってんなら、あれで全部であるはず。
 あれは推定、大陸座バルトアンデルトを『閉じる』作業。
 その術式には八つの異なる紋が必要で、それを一つずつ魔王八逆星が持っている。
 アービスやギルが説明してくれた話を信じるとするなら、魔王八逆星っつーのが8種揃ってないと術式は完成しない。術式が未完成だから何度か仕掛け直すハメになっているらしい事を聞いている。俺はその何度かにタトラメルツで付き合わされた訳だ。
 しかし、俺を組み込む事で封印術が8種になり、完成したと言う訳ではないそうだ。
 あの時点でもまだ未完成だったはずだ、と。
 エズの元エトオノ闘技場に封印される運びとなったギルが最期にこっそり漏らしたのを俺は、思い出している。

 そりゃどういう事だと詳しく聞きたかったんだけど、ウリッグの件で何やら慎重になってるらしく余り多くは聞き出せなかった。せめて奴がハクガイコウと呼ぶナッツでもいれば、交渉が出来て詳しい話もしてくれるんだろうか?
 とにかく今はレッドらと合流し、ギルが囚われている封印がどういうものなのか、はっきりさせる事が必要なんだろう。
 俺一人であれこれ考えたって……俺ってバカだし、もっともらしい答えが全然見えてこねぇ。

 それでも無駄にあれこれ考えちまうが、思うに無駄じゃね、と悟って顔を上げたらあらまぁ、来た来た。
 早速山を駆け上がってくる魔王軍の姿が見えてくるじゃぁないですか。
 大群って訳じゃないが、黒い影のような混沌の怪物が単体で、バラバラとこちらに向かって走ってくる。道中あちこちに馬車が止まっていて、黒い怪物をやり過ごそうとしているのかそれとも、すでに被害を受けているのか。
 ……ああ、俺、ホントに無駄な事をしました。
 無駄に何かを考えるより、それよりも何よりも俺には、やるべき事があるじゃねぇか。

「……リオさん、先に行ってくれ」
 俺は……込み上げてくる怒りに剣の封を解いて、しんがりを務めるアービスを振り返る。
「お前は横道からリオさんを町に連れてってくれ。俺はこっちの足止めをしてから向かう」
「それなら私も、」
「リオさん一人で魔王軍が蔓延ってるかもしれねぇ町にはやれねえだろ?」
「だったら私がここを受け持つ」
「いいから」
 俺は馬を止め、二人をその場に留めて睨み付けた。
「どーせ俺が町に着いたって状況判断なんかつかねぇんだから。俺はここから適当に下りながら状況を見つつ町に入る。俺と合流する事は考えなくていい……とにかく、俺とアインはレッドらが港に入るまで町にいるつもりだ。お前らは状況を確認し、その後必要がないと判断したらエズに戻ってくれ」
 俺のその判断の意味を少し考えるような素振りをしてから……リオさんは顔を上げた。いや、そんな考える程の意味はないんだ。
 俺が、自分の手で魔王軍を蹴散らしたいからそう提案しているだけ。
「囮を引き受けると言う訳よね」
「……そんな所だ」
「確かに、私はそれ程戦闘力は無いのだから……貴方の側にいたら足を引っ張るかも知れないわ。分かった、この場は貴方の判断に従いましょう。国で認定されている討伐隊は貴方だわ、私やアービスではないのだし」
 リオさんの言葉にアービスも仕方が無く納得したようだ。仮面で隠しているとはいえアービスは魔王八逆星の一人である。目立つのも問題だ、って事に気が付いたようだ。
「では、気を付けて」
「お前らもな」
 俺はその場で馬を下りた。とりあえず。

 俺の視界に入った奴は片っ端からぶった切ってやる。

「アイン、行くぜ」
「了解~!」


 山を駆け上がってくる怪物達は全部が全部、俺に向かっては来ない。明らかに目的地をエズに向けて移動しているって雰囲気で、俺はそれに逆らって手当たり次第切り払っている感じだ。
 出来れば追いかけていって全部叩き潰したいのだが……町に近づくにつれ、そうもやってられなくなってきた。せめて俺をターゲットにして襲いかかってきてくれればいいのだが、無視される場合も多いんだもんなぁ。挑発もあんまり効果ねぇし。
 馬車や旅人達が避難している場所を主に、点々としながら魔王軍の被害の及ばない方向へそれらを逃がしたり、状況を聞いたりしながら俺とアインは、町に、港に向けて進んでいる。
 幸いな事に魔王軍ら、エズに向かう事に頭がいっぱいみたいだ。畑は遠慮無く踏み歩きやがるが、民家などは障害物と認識して無理に突っ切らず、律儀に避けて通っている。馬車などもあえて襲う事はせず、比較的スルーであるようだ。
 それでも襲われて命を落とした行商人や、明らかにちょっかいをだして返り討ちにされたらしい人などが道々に倒れている。
 怪我をしている人、はぐれた人などをなんとか所々立っている民家に誘導し、避難させながら魔王軍の流れに逆らって進んだ。

 しっかし、これだけの怪物一体……どこから?

 見た感じ新生は混じっていないだけに嫌な予感がする。
 俺とアインは目配せした。抱く疑問は同じらしい。
 町が近づくにつれて疑問は不安の方へ傾き、肥大していく。気が付けば魔王軍の相手をやめて、何が起きているのか確認するべく町の中心へ足が急いでいた。


 嫌な予感は的中だ。


 セイラード港町入り口を示す簡単なアーチを潜り抜けると……途端悲鳴混じりの声が遠くから聞こえてくる。町の人々が慌てて逃げ出していこうとするのを何とか捕まえて事情を聞いた。
 船から怪物が現れて町を襲っている、だと?
 ……くそ、イズミヤの予測、大ハズレじゃねぇか。町も襲われてんじゃねぇかよ!それとも腕っ節に自信がある奴がヘタに手を出して、事態を悪い方向にしちまったんだろうか?
 人と、怪物が一緒になって町の外に逃げ出している。変な光景だ……魔王軍は一緒の方向に逃げている人間は襲っていない。しかし人間の方は怪物に驚いて必死に逃げまどっている。
 って事はやっぱり被害が出ている所は、こちらから手を出して反撃を食らった後かな。町民らも大パニックで事態が良く分かって無い感じだ。
「……何か変だな」
 大混乱には違いないが、大乱闘は起きていないのが冷静に見渡すと分かる。無作為に人や建物をぶっ壊している怪物は、見る感じ居ない。逃げ惑う人と一緒に、同じ方向目指して駆けまわっているだけだ。
 しかしそれはなんとも奇妙な光景である。
「あ、ヤト、なんか変なの落ちてるわよ」
 頭上に乗っかっているアインから言われて俺は地面に視線を泳がせた……確かに。何か白いぶよぶよしたものが……!?
 落ちているなと思った瞬間、それは素早くこちらに向かって飛びかかってきた。あまりの素早さと、得体の知れない塊に俺は対応出来無かったワケだが、先に物体に気付いていたアインが軽く炎の息で焼き落としてくれた。
 タイヤから空気が抜ける様な奇妙な音がして謎の物体は熱に縮みあがり、転がってべちゃりと黒いシミになって……砕け散った。
「すまん、なんだ今のは?」
 高温のブレスに晒され消し炭となってしまったので……今のが何だったのかよく分からない。
「わかんないけど……今さっきすれ違った人が落としていったわよ」
 俺は素早く後ろを振り返った。
 確かに、今さっき悲鳴を上げながら逃げていった人とすれ違ったのだが……嫌な予感がして俺は、その人がまだ視界の先にいるのを見つけてを追いかける。
「ちょっと待て!おい、待てったら!そこの……」
 嫌な予感さらに的中。
 追いかけていた人、突然足をもつれさせて転んだと思った瞬間……それは無様に形を変えた。あっという間に黒く変色した肉が膨張し服を破り、足が6本ある獣の姿になって同じ方向へ走っていく。
「……魔王軍化!?」
 アインと顔を見合わせ、一拍置いてとんでもない事実を把握する。
 ようするに……ええと、さっきの白いぶよぶよは赤旗をばら撒くホストって事だ!
 理屈とか俺に説明させんな!直感でそうだろうと把握したんです!すいませんバカで!
 俺とアインは慌てて港方面にとって返し……通路を一つ折れ曲がった所で凄まじい光景に足が止まる。

 赤旗ホストかどうかを判断するべく俺は、フラグを意識していた。その所為もある。
 視界一杯に広がる赤いマーカーに顔が引き吊る。
 これは、いつか恐れた光景だ。

 見渡す限り倒すべき敵、バグ旗表示が乱立する様に口を開けて呆れ、息を呑み込んでしまう。

 しかしそれも一瞬の出来事だ。赤い旗を表示させている不気味な白いものが一斉に、俺目がけて飛びかかって来やがったからな。まるで得物を見つけるように四方八方から飛びかかってくるのを、頭上に飛び上がったアインが炎で焼き払うがそれでも埒があかない。あっちこっちから一斉にこっち目がけて群がって来やがる!
 何匹か剣で切り払う、足下にいる奴を踏み潰す。ひっついてきたのを左手で振り払うも……くそ、よくよく見ればこいつら蛭かよっ!しっかり布地に噛みついてきて剥がれない!
「うげぇ、気持ちわりぃ!」
 しこたま血ぃ吸った蛭の怪物どもはぶくぶくに太っている。切り裂くとベトベトする体液と一緒に赤黒いものが飛び散り、あっというまに足元がヌルヌルに。
 と、聞き慣れた悲鳴に顔を上げた。
「リオさん!だめだ、こっち来るな!」
 熱探知でもしてるのか?一斉にヒルの動きが悲鳴の上がった方に向いた。
「アイン、焼き払え!リオさんをこっから遠ざけてこい!」
「キャァ!ヤト、首!首!」
 あああ、もぅっ!首後ろの鎧の隙間に突っ込んできたヒルを強引に引っぺがし、足下に叩き付けて踏みしだく。
「どうにもこいつらホストっぽい、リオさんが危ないだろ!」
「だ、大丈夫なのーッ!」
 明らかにヒルの怪物に噛まれた俺を気遣ってくれるのはいいが……アイン、冷静になれ。
「とりあえず俺は間違いなく『免疫』持ちだ、分かるな?」
 あ、とアインが大きな口を開ける。
 そうだ、俺達に魔王軍化は通用しない……その理屈はこの世界に向けて説明は出来ないがとにかく、しないものはしない。

 俺達の頭上には青い旗がある。

 青い旗より権限の弱い、赤い旗に切り替わる事態は起きない。それを説明すべき理屈がない。そういう『システム』なんだ。
「アービスも問題ないだろ。奴は感染源だしな。しかしリオさんはヤバい、とにかく彼女を死守しろ!」
 その間にもベタベタ張り付いてくるヒル。来るなって言ったのに、リオさんが垣根の向うから顔出してくるし。
「ヤト!その怪物は!」
「分かっている、魔王軍化させるってんだろ!俺は大丈夫だから!」
「大丈夫って……」
 下等生物の癖に生意気な、俺は……鎧や服の隙間から地肌に吸い付こうとするヒルの怪物にあえて、好き勝手させてやった。

 言っとくがな、俺の血は不味いんだぜ?

 細長く口吻を延ばし、あちこち吸い付かれたのだろうが……痛みはない。吸血生物はなかなか巧妙にヒトの血を吸う。まぁ、あとで痒くなるだろうけど……。
 数秒後、突然俺に吸い付いていた白いヒルの怪物達が一斉に動きを止めた。黒い縞模様が浮き上がり、その模様がぐねぐねと動いているように見えるが……ヒルが痙攣しているからなのかそれとも、模様がヒルの体をうねっているのか。
 怪物ヒルはぼたぼたと俺から剥がれて地面に落ちた。すると、黒い縞模様……蔓のような模様があっというまに他のヒルにも伝播する。
「ほらな、」
 俺の、血の勝ちだ。
 こっちは破壊魔王ともタメ張ってんだ、魔王軍化出来るもんならやってみやがれ。心の中でファックポーズを決めながら黒く変色して煙を上げながら溶けていくヒルを数匹踏みつぶし、蹴飛ばしながら俺はリオさんにこの通りだと肩をすくめた。
 理屈はともあれ大丈夫だと把握してくれたようだ。
 一瞬安堵の顔を浮かべたが慌てて、その場を動かずに叫ぶ。
「……そのヒルは原因じゃないわ!宿主が原因よ」
「宿主?」
「説明してくれたわよね、魔王八逆星には魔王軍化させる能力がある……それは例えば血肉の結合によって起る。アービスもそう言っていたわ、ヒルが血を吸っていた元の宿主が、魔王軍化の原因よ!」
「了解、ソイツを俺は引き続き探してみる。リオさんはとりあえずこの町を離れた方が良い」
「……そうね、どうやらかなりの感染拡大があったみたい。片が付くまで近づかないように伝えるわ。ヒルに注意するように触れ回ってみる」
「頼む、アイン、他にヒルが落ちてるかもしれないからそれ掃除してこい」
「わかった、そうする!」
 と、言ってる側から何か来やがったな。
 俺は気配に振り返る、毛むくじゃらの大きな塊が……のっそりと倉庫の影から姿を現した。
「あら、それは困るわぁ」
「ちっ……やっぱりアンタか」
 巨大な毛の塊を引き連れて、倉庫の影から現れる……女。
「討伐隊は送って来てもらわなくっちゃ」

 腰を捻り、長い腕を主張するかの様に大げさに振りかぶり、顎の下に手をやって鼻に掛かった声を掛けてきたのは案の定、魔王八逆星唯一のメス、ストアだ。

 奴は恐らく駆けつけて来る討伐隊を『魔王軍化』させる事を強引に進めるつもりだろう。赤旗の怪物、魔王軍は無からは生まれない……材料として人間が必要だ。だから、討伐隊が送られてこなくちゃ困ると言ったのだろう。今まで魔王軍、混沌の怪物と何匹もすれ違った。それらが元人間である事は分かっているし、元に戻しようも無い事も知っている。だから、ジェノサイドの方向で俺は立ち回って来た。
 セイラードの港一帯、魔王軍上陸ですでに人気が無い。混沌の怪物と違い、人間に問答無用で襲い掛かって来るヒルの被害がどれ程になったものか、とにかくこのヒルに、大した移動拡散能力が無さそうなのが救いだ。
「でも……一体全体どうして貴方がここにいるのかしらん?」
「って言いぐさだと、俺がここにいるのは知らんで乗り込んできたのか?」
 菱形の模様を露出した肌全体に浮き上がらせ、細長い角のようなものをこめかみ付近から生やしているストア。俺の切り返しに、に小さく首をかしげながら答えた。
「ようやく出産が終わったのよ」
「……出産だぁ?」
 答えになってない気がするのだが?……出産?なんだそれは。
「そ、これでまたダーリンのお相手してあげられる」
 イメージとしては察する事は出来るが、生々しくて想像したくねぇな。
 対話取引ってぶっちゃけ苦手なんだが。このおねーさんとなら何とか出来そうな気がする。ダメで元々俺はカマ掛けてみた。
「……そのダーリンさまは今どこにいるんだ?」
「ナドゥちゃんの話では、北方から西方に移っているって聞いているわね」
「今どこにいるのか知らないのか?」
「この子を産むのに大変だったんだから。ストア、ずっと一人でがんばってたのよ」
 ……その毛むくじゃらの怪物を……産んだァ?
 ストアの隣で大人しく棒立ちになっている怪物を、俺は改めて見上げる。
 どうにも全体像がその毛のすさまじさ故によくわからんが……オラーウータンを巨大化させてもっと毛をもさっと生やした感じ?……というか、顔どこだ顔。とにかく毛の塊だ。しかもデカい。人間の3倍はあるぞ?
 こんなバカでかいのどうやって、アンタが産むんだ。育成期間は?……怪物に、そんなものあるって考えの方がおかしいのだろうか?
「ストア、魔王軍化の力はあんまりないの。だから、力が強すぎるダーリンとの間に……ね」
 俺は素直に顔を顰めた。
 あああ、なんだかキモい話だな。そうか、あの何をしても破壊をもたらす魔王、ストアとだけはちゃんとヤれるって訳だな。しかも怪物産ませて……って。もしかするとホストの怪物の出所って全部同じなのだろうか。かつてカルケード国軍に紛れ込んでいたホスト、蛇女のリラーズもそうなのか?
 そもそも生物として破綻している同士でどうやって子どもを作るんだ。理屈としてそれはアリなのか?
 わかんねぇ、とにかく断言出来る事は生理的に気持ち悪いって事だな。別段生命の誕生をキモいと言っている訳じゃない。
 怪物同士の間に怪物を作るというのを、誕生という言葉で表わすのが不適切に思えて胸くそ悪いと言う意味だ。
「怪物を作るのも、ナドゥに命令されて、か?」
 怪物と怪物の間に生まれるものは何をしたって怪物だ。
 俺は剣を構える。すでにヒル達は俺の血の不味さを理解したようで襲い掛かっては来ない。
「命令じゃないわよ、ストアだって相手を選ぶ権利はあるわ」
 ちょっと怒ったようにストアは腰に手を当てる。
「相手を選べない、ダーリンとの愛の結晶よん」
 ……本当に腹を痛めて産んだのか?怪物を?
「なら、もっと大切にしてやれよな」
「タイセツ?」
「怪物とはいえお前らの子どもだろう。それを、何が目的だか知らないが町を襲ったり国を傾けようとしたり、ろくでもない事に利用して、使い捨ててんじゃねぇかよ」
 途端ストアは笑い出す。
 上品なんてもんじゃねぇ、本性垣間見えるってんで高らかに、こちらを嘲るように笑う。
「怪物は怪物よ」
 それは、そうだろう。俺もそう思う。
 この嫌悪感は間違いなくそこから来ている。
「怪物の親も怪物だからな」
「その通り」
 ぞっとする笑顔で俺の言葉を肯定し、ストアは目を細めてゆっくりと、子どもを言い含めるような調子で言った。
「この子達が幸せになれる世界なんて無いのよ、だって、怪物ですもの。幸せ?そんなものを願ってどうするの?他人の為に……子ども?ストアとダーリンが混じった、立派な他人よ?」
 この女は……ムカつくな。
 確かに俺も相手を怪物だと蔑みはしたが……それでも、もうちょっと母親らしい物言いは出来ないのか。するつもり無いって事だろようするに。それって、ダメな母親の典型って奴じゃねぇのか?
 俺は、戦士ヤトには母親と呼べるような人はいない。記憶にない。しかしサトウ-ハヤトの意識が目の前の女を、母という属性で認識しない。サトウ-ハヤトには親がいる。
 血の繋がった母がいて、その人は。
 今はすっかり疎遠になっているけど……心の底では嫌いというわけじゃないんだ。嫌いになりたくて、必死に逃げているのはサトウ-ハヤトの方で実際にはそれが、本心と云う訳じゃない。
 今は、『俺』もそういう事に気が付いている。
 人間だったら親は子を大切にするというのは、一体どういう理論なのだろう。摂理なのか、道徳なのか。法や義務なのか、単なる……執着なのか。
 だが一つだけはっきり言える事がある。

 両親が居ない俺でも、母親から怪物だとか他人だとか言われたらは悲しい、って事だ。

 親と子、という関係に縛られる事はない。俺は、誰かを悲しませるような行為は許せない。
 悲しませるような事はなるべく回避したい。しかし確信犯的にあえてやろうとする奴は……俺も含め。

 ろくでもねぇんだ。


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