異世界創造NOSYUYO トビラ

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5章 際会と再会と再開 『破壊された世界へ』

書の7後半 ログイン妨害 『ヘタすると赤旗よりも致命的』

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■書の7後半■ ログイン妨害 LOG-IN distubance

 メージンと話をしている間にすっかり、場面は変わっている。
 森だ、どこかはよく分からないがフェイアーン界隈はあっちこっちに森がある。三国隣接地帯で、森はその境界としてそのまま手付かずに残っている感じだな……。
 って事は今連中がいるのもそんな森の一つ……すなわち、フェイアーン北に位置する森の中か。
 カルケード国入りするためにバセリオンの駐屯兵士達を騙くらかして、ひた走ったあの森のどこかかもしれない。ま、森っていう領域も一口に言ったって広いし。

『アイー?居るなら返事してーッ』
『アインさーん!』
 カオスが手に、何か光るものを持っている。……赤い鱗……ああ、赤い小竜であるアインの鱗か。
 それを元に何かの探索魔法を展開しているようだ。赤い鱗を取り囲んで膜のように包み込んでいる青白い光が何度も点滅を繰り返している。
『おいアイン!もういいんだ、逃げなくてもいいんだよ!』
 テリー達はアインが近くにいる事を察知しているようで、さっきから声を張り上げてアインを呼びながら四方に散らばっているが……。

 ……逃げなくていい?

 そういやこいつらに魔王の追っ手が掛かってたんだっけな。
 一体全体その追っ手とやらが何者なのか知らんが……詳しい特徴を誰も言わない所を見ると恐らく、全くの新キャラって事か。ふむ?
 そういえば結局それを、ナッツからはぐらかされてないか俺?
 ……魔王8人全員の面は拝んだと思う。名前はまだ一部良くわからないが……あいつらを倒せばいいのだ、という確認したログはちゃんと残っている。いや、アインジャンがすでに亡いので残りは7人。
 しかしよく考えるとあの魔王が直接追いかけてくるはずは無いんだよな。奴ら一応『魔』な『王』なんだから、そんなのは手下にやらせるだろうと思う。

「魔王……8人?」
「どうしました?」
 俺はモニター窓を覗きこんでそこから目を逸らさずに一人呟いていた。
「……いや、何だろう。何か奇妙な感じがするんだが……一体何が妙だと思うのかよく思い出せない」
「記憶の穴があるのですね……」
「くそ、何か気持ち悪ぃな……」
 タトラメルツで拝んだ魔王の連中は7人。というかあの城で踊場に立っていた連中が全員魔王なら、という話であって実際本人らに
 『お前は魔王か?間違いないな?』『はい、俺達魔王です。間違い無いです』
 などと確認した訳じゃない。
 しかも魔王だからといって特別ゴージャスな旗が立っていたりする訳でも無い訳だし。それに……ぶっちゃけ一人魔王かどうか怪しい人物がいる。バグである印、赤旗を頭上に持たない謎の白衣のおっさん事、ナドゥ……。あいつは魔王にカウントすべきじゃいのだろうか?
 魔王の一人のアイジャンはあの場にいなかった。それもそのはず、アイジャンは南国で死んでいる。残念ながら俺達の手で葬る事はできなかったがな。現国王ミストラーデの双子の弟にて甥に当たるエルーク王子から……殺されたんだ。獄中捉えられている所を殺害され、エルーク王子は目下逃亡中。行方知れずであると言う。
 ……何が引っかかったのだろう?
 俺はアインを探す連中をモニターの中に見ながら、別の事をぼんやりと反芻していた。

『……約束しただろ!ちゃんと迎えに来てやっただろうが!』
 と、テリーのやや躊躇した叫び声に俺は、慌てて意識をモニター内に戻していた。

「何?約束ゥ?」
 そういえば……リコレクト……こいつらケンカ真っ最中じゃなかったっけ?タトラメルツで絶交状態に陥ったまま魔王の城に挑んだんだよな。
 俺が記憶する所、二人が険悪な状態から改善した様子は思い出せないのだが。だがまぁ、あの二人なら魔王を目前にして、幼稚な争いを続けたりはしないだろう。俺とアベルはともかく……などという例えは言ってて悲しいが……テリーとアインは中身が大人だ。
 中身というのはすなわち、戦士ヤトである俺を演じるサトウハヤト、的な事だな。

 テリー事テルイタテマツと、アインことフルヤアイは大人なのだ。肉体的、経験的な事じゃぁなくて……精神が大人。

 ……格闘バカと同人娘のドコが大人だと突っ込み所満載なのは分かっている、分かっているが……それは趣味の話だろ?大人ってのはアレだ。置かれている現状に対して最も的確な態度を取れる奴らだ。例え自分の気持ちや感情を殺してでも、その場で振る舞うべき行動を選べる。
 俺とアベルが絶交状態だったら多分、魔王の目の前でも遠慮なく単独行動してる。間違い無い。
 互いに『協力して貰いたかったら』お前先に謝れよ……などとに足を引っ張り合うに決まっている。
 そこん所多分、テリーとアインはいつまでも過去にこだわったりはしないだろうと思うのだ。あいつらにとっての諍いとは所詮その程度だろう、そう思っている。
 俺は……そうやってちゃんと手を取り合う結末があるなら最初からケンカすんな、と言いたい。

 お互いに手を取り合えない、妥協出来ないからぶつかるんだ。

 ん、そうか……奴らは互いに妥協できるって事だな。
 妥協して自分の意見や主張に対して諦めがつく奴らが大人だって言うんなら……俺は、そんな大人にはなりたくないぜ?他人に道を譲りっぱなしの人生なんてろくなもんじゃねぇ。
 俺は、俺が好きなように生きたいと心から願ってますから、ええ。

『テリー、何約束したの?』
『気になるなぁ』
 俺が野次馬精神を働かせた所、やはりアベルとナッツも気になるらしい。そりゃそうだよな。ケンカしてたはずなのに何時の間にか寄り戻してる気配だもんな。
『うっせぇよ、よく思い出せねぇよ』
『またまた、都合のいい記憶喪失~』
『真面目に思い出せねぇんだよ!』
 アベルから小さく小突かれているテリーはわしわしと頭を掻き毟った。そしてそまま自分の髪を握り掴むようにして俯いてしまう。
『くそッ!鱗……何で俺は鱗なんか受け取ったんだ?』
 ……む、どうやらマジで思い出せないらしい。
 約束はした。しかしその約束の内容を恐らく『全て』リコレクト出来ない。テリーは演技では無く、本気で苛付いている。本当の本当に、思い出せないのだろう。

『あたしも……ごめんね。上手く思い出せないわ』

 声が聞こえて、一同一斉にそちらを振り返ったのを俺は見た。
 だが……その姿をモニター越しに俺は、見れたのだろうか?



 かっと、目を開ける。まさに、カッ!だ。

 途端、今まで見ていたログがすっぱり切れる。目を覚ましたとたんに夢をド忘れした気配。
 夢を見ていたような気分はある。俺は起き上がって包帯の巻かれている首を摩り、ゆっくり記憶をリコレクトした。
 ナッツとアベルがフェイアーンまで来てくれたんだよな。それで、テリーとなんとか合流したはいいが俺は怪我して寝込んでいた……と。
 ナッツが処理してくれたから多分傷は……包帯を乱暴に暴いて俺は自分の首を撫でた。
 流石はナッツ、手で触った感じ噛みつかれた傷跡の気配は無い。失血多量だったがふらついたりもしない。頭の芯からすっきりしている。
 強引に眠らされたけど、俺は一体何時間寝ていたのだろう?
 問題なく動く首を回し、カーテンの閉まった窓に目を向ける。眩しい光が隙間から溢れ、チュンチュンという実に聞き慣れた感じのする小鳥のさえずりが聞こえて来た。


 えーっと?俺は……何時頃寝てしまったんだっけ?何か重要な事がすっぱ抜けた気がするが……思い出せない……。


 と、聞こえていた平和な鳥の鳴き声が突然けたたましく警戒を告げ、逃げ惑う悲痛な叫びのように響き渡る。羽ばたきが乱暴にバサバサと混じるのに俺は驚き、立ち上がってカーテンをあけた。
 途端眩しい太陽に目が眩む。方向的に……やっぱりこれって朝日?
 光に目が慣れ、俺は中庭になっている見慣れない風景を目にして頭を掻いた。
「……?」
 バタバタと鳥が飛び立つ。それを執拗に追いまわす……赤い鱗の小さなドラゴンが目に入ったのだ。
「んー、おっかしいなぁー、こうやって、こうやって~」
 庭で地面を突付いている鳥達をどうやら、捕まえようとどたばたやっている小竜をあざ笑うかのように、鳥達は逃げ去るでもなく一旦距離を取っては再び庭に舞い戻り地面をつついていた。
 虫でもつついているのか?小鳥は執拗に庭に固執している。
 に対しドラゴン、完全に鳥どもからは舐められてるな、こりゃ。横スライドの窓を開ける。その音に気がついて小竜が首を上げた。
「お前、朝っから何やってんの?」
「あ!ヤト!」
 ぴょんと中庭を蹴り、小竜は俺に向かって突進してきた。
「ぐおッ!」
 窓の枠に手を掛けていた俺は、小竜の突然の突進を避けきれず身体で受け止める事になってしまった。勢いに押され、背後の床に張り倒されてしまう。アインが倒れた俺の上に乗っかっていた。
「ごめーん、なんか加減が利かなくって」
「お、重いッ、退いてアインさん!」
「あらッ、重いとは失礼ね?」
 ぐいと小竜の首が覗き込んでくる。心なしか……その足に力が入ってますって!
「つ、爪ッ、爪が俺の腹に食い込んでますッ!」 
「あらら、ごめん」
 アインは羽ばたいて慌てて飛びのいた。俺は慌てて腹を擦ってみたが……血こそ出て無いが赤く蚯蚓腫れが出来てるし。
「ピンポイントで体重掛かると結構痛いのよねぇ、猫飼ってたから経験あるわぁ。あれ、痛いのよ。体の上とか歩かれると結構」
 俺は腹を撫でながらため息を洩らして再び、床に仰向けに倒れこんだ。そのまま手を伸ばしその手を、長い首を持つドラゴンの頭の上に載せて軽く叩く。
「……俺が寝てる間にちゃんと、ログイン出来たんだな。よかった」
「うん。……心配かけちゃった?」
「俺の方こそ、色々前回暴走しちまったし……こうやって無事会えて嬉しいよ」
 ドラゴンはその顔を、硬い鱗に覆っているのだから表情など変わる訳が無い。そんな訳でドラゴンのアインは笑ったりはしない。でも、きっと彼女は今にっこりと嬉しそうに微笑んでいるのではないかと思う。
 そのイメージを……脳内妄想で補間、完了。
「あたしもよ、」
 中身はともあれ。やっぱり彼女は可愛い。

 ぶっちゃけるよ?

 俺は彼女は可愛いと思う。この小さなドラゴンの彼女も、実際人間のフルヤアイの方も。
 確かにチビドラゴンの動作は可愛らしいし、あっちのアインは何度も言うが中身はどうあれ間違い無く可愛い子だ。美人とか美形とかじゃなくて……可愛い。
 そう、何度も何度も言うようであるが中身がどうだ、とか外見がどうとか、そんなんじゃない。可愛いというのは総合的な属性みたいなもんじゃないかと、俺はアインの頭を撫でながら思うのだ。

 俺は割と、可愛い子に弱い。

 守備範囲が広いなどとアベルから言われるが、あいつはこっちの世界に疎いからな、分かってらっしゃらない。俺は年上だろうと年下だろうと、可愛いという属性に弱いのだ。ツンデレだろーが眼鏡だろうが、娘や姉妹であったり果てにツンデュレイだろーが何だろうが……。
 要は二面性?意外性に弱いのか?ちょっとしたボケた仕草やセリフにツボる、まぁマイナー好きは自覚する訳だし。
 トビラの中では小竜であるアイン。
 彼女は存外頭がよく、物凄く気配りさんだ。
 リアルで見ていてもそうだと思う。同人女なんて自分勝手な妄想でハァハァいっちゃってる……あいや、ぶっちゃけあまり人の事は言えないのですが……とにかく、オタクの中ではトップ独走自分勝手ザ・ワールド!な連中ばかりだと思っていた。
 ……世のオタクの何割かは確かにこういう連中である事は否定しないがな。
 キモオタは男ばっかりじゃないのだ。むしろルールを守らないで自分勝手をやっているのは女性陣だったりするとか。……友人の友人である18禁同人作家からそんな話を力説されて俺は素直にそれを信じていた。
 というか同人作家って何やねんというツッコミが入るだろうから手短に先に説明するが、同人ってのは『自費出版』で創作している人たちの事な。マンガや小説に限らない。今でこそオタクなレッテルを貼られているが、同人な人が力説するに同人と言う歴史はそれはそれは深いものであるらしい。
 俺はよく理解できなかったが、アベルの姉が俺に向かって力説していたなぁ……という事実は思い出せる。
 そうだ、アベルの姉も同人だ。そういや、どういう縁だったかと思い出したらそもそも『姉さん』はアインの相方だったよな。『姉さん』というのは俺がアベルの姉を呼ぶ渾名みたいなものだが、彼女らの趣味が何なのかは推して量るべし。

 ま、俺もそんなに詳しい訳じゃないわけだが……この同人というジャンルにはゲームの分類があってだな。
 ゲーム趣味であるからして、実はその界隈に限って俺は詳しい方であろう。自費でゲームを開発している人達ってのは結構いるもので、割とバカに出来ない完成度を誇るものも少なくない。同人から商業ソフトとして販売される作品もかなりあったりする。
 で、ここが同人のややほの暗い事情なのだが……。
 万人向けの良い作品もあれば、万人には向かない一部嗜好品としか言えない作品も多くある世界であったりするのだ。つまり……俺が何を言いたいのかというとアレだ。要するに、エロ本とか結構スゴいのだ。あと、エロゲーも。有り余るパトスとリビドーを全開にして、一般向けに売るには偲びがたい偏った愛を詰め込んだ作品というのがそらもー、わんさかあるわけですよ。
 エロというと男性向けだと思う無かれ。エロとは言われないが、お前それ結局エロスだろうよという女性向けというジャンルがある。ええと……8割越えヘタすると10割が同性愛モノであるというのが末恐ろしい。なぜに女性陣はエロスを開放すると男と男でなければいけないのか。勿論それだけではないのだが比率的に高いという事情、まったく俺には理解不能だ。
 アベルの姉さんにこれも、何度か力説された気がするが覚えてねーや。てゆーかどんなに力説されても理解したくありませんから!興味が無いという訳ではないが、馴染む事は無いだろう。

 ヤルかヤラれるかに愛だの恋だのはいらんのだよ君。

 女性向けというのはそういうのが重点的だったりして辟易する。
 違う、確かにそれがあると割と胸キュンしちゃったりするんだが、男の欲求はそっちよりもむしろその後が重要なんだよ。ヤルか、ヤレるか、ヤラれるかだ。

 ……む、激しく話が脱線したが……まぁとにかくこれでそのドージンとやらがどんなもんで、成人向けの男性・女性に向けられたベクトルの方向性が分かっていただけたと思う。

 で、俺の友人の友人であるとあるエロ作家の話だったな。……18禁作家と銘打っている訳だから、基本的に18歳以下には自分で作った本を売る事が出来ない。つか、売っちゃうとタイホされますから。同人というのはノールールな世界ではない。法律に違反した事をすると逮捕されてしまう、ちゃんとした現実の延長線上の世界なのだ。でだ、その友人の友人が酒の勢いでくだ巻いて言うんだよ。腐女子の連中は酷いんだぜ……と。……この、腐女子というのはすなわち、ホモ同人を作ったり愛読している女性陣を差して言う言葉だ。蔑視語であったはずなのだが、なぜか女性陣は嬉々として自らこれを名乗る。世の腐女子全員がそうだとは思わないが……少なくとも知っている某二人はそういう筋金入りの腐女子だ。
 ……友人の友人が言うにはこうだ。
 18禁を売る場合にはちゃんと本などにその旨を記載しなければいけなくて、法に触れるから描写してはいけない部分は塗りつぶしたり、ボカしたりして隠さないといけないのな。
 男性向けエロ作家はそう言うところ、ちゃんと守ってやっているのに……女性向の女性陣はこれを守らないというのだ。明らかに18禁であるだろうに、表紙や本のデザインやらの問題から(彼女らはそういうのに物凄く拘るのだそうだ)表記していなかったり、堂々とモノを描き出してみたり……。割と社会問題化した事があるらしいのな。
 俺は当然そんな話は全く知らなかったけど。あと、あんまり関係無いんだけど。
 友人の友人である作家さんは嘆く訳だ。俺らはちゃんと色々約束守って、太古の昔から気を使って表現しているというのにあの腐女子どもと来たら……。
 結構、覆面監査とか入って大変なんだと。ヘタすると即売会(そういう同人作品を売り買いする集まりだ)が即刻中止に追い込まれるとかで……かなり憤っていた。
 俺はその話を聞き、即座にアベルの姉さんを思い出し、ホント女性同人って自分勝手な連中ばっかだよな……とやけに納得してそれ以来、そういう目でしか彼女らを見てこなかった。

 アインとは確かに以前から、少しだけだが面識が在る。

 所が彼女の事を余り覚えていなかったのは、つまりそういう事情なのかもしれない。俺は彼女もどうせろくでもない奴だと思って、関わり会うのを避けていたのだろう。リアルだと基本、俺は人見知りの激しい内向的な性格である、というのも理由の一つではあるものの……。

 一緒にゲームしてみて、演じられていると知っている側面を見ているだけで、俺は勝手な思い込みで判断していた事が多いんだなと思い知る。
 例え公言して腐女子でも、それでも人は千差万別で全員が全員我が侭で自分勝手だとは限らない。少なくともアインはいい奴だ、腐女子思考さえしてなければなお良いのだが……とは今は、不思議と思わない。
 腐女子、だけど可愛い。てゆーか、別にそんなの関係無いじゃん?

 そんな意外性に何時の間にか、俺はノックアウトされてしまっていたみたいで。

 俺は天井を見上げて今だ手は、アインの頭を撫でていた。……多分半分以上無意識。
「アイン、」
「?」
 眉間を撫でられるのが気持ちいいらしい。……お前は猫か?鼻が利く犬でもなくってドラゴンなのだが。
 俺が執拗に頭を撫でているのを邪険にはしない。
「お前、可愛いな」
「んー?ヤトもドラフェチだったの?」
 ドラフェチって、ドラゴンフェチズムの略か?俺は体を起こして何故か慌てて否定の言葉を口にする。
「そんなんじゃねぇよ。俺はお前だから……」
 って、俺。ちょっと待て俺?
 慌てて口を閉じ、しまったと思ったがもう時すでに遅し。今更だが頭に血が上ってきた。顔を逸らし、撫でていた手を引っ込めて俺はその手を、自分の額に置いていた。
 多分顔が真っ赤だろうなと思う。ヘンな汗を掻いている気がする。

 何、突然告白しようとしてんの俺?

「まぁねー、あたしサイズもこんなんだし、俗に言う幼生な訳だからまぁ、可愛いいのはしょうがないのかもよ。動物も人間も、子供のうちってみんな可愛いでしょ?」
 しかしアインはわざとなのか、惚けた解答をよこした。
 まさか。
 彼女は決して鈍感じゃない。むしろ鋭すぎるくらいだと思っている。それなのに何を惚けて……。

 爪を立てないようにして、俺の肩にアインは飛び乗ってきた。バランスを取るためにぴったりと俺の首と頭に寄り添って、小さな手で俺の頭に捕まる。

「……って事にしておきましょ」

 耳元で囁かれた言葉は、柔らかな拒絶の言葉だ。俺は苦笑、というより自嘲して自分の頭をぐしゃりと鷲掴む。
「悪ぃ、……寝ぼけてたかも」
 ま、答えを引っ張られるよりマシだよな。俺はそう素直に思う。
 ……ショックが無い訳じゃない。多分……後でクると思う。うん……じわじわ来たっぽい。
「バーチャルなら大胆になれるのねぇ?うーん……でもこっちだとちょっと成立しないでしょ?マジメに言って。あたし十歳だし」
 俺は口から笑いを漏らす。
「それとも……?ヤトってロリコンだったの?」
「……どーせ……」
 酷く、おかしな気分だ。
 そうさ、どうせ俺の本性はバーチャルでしかまともに社交性を発揮できないダメ人間ですよ。この仮想現実でどんなに足掻いたって無駄だ。そして変わる事は無いだろう。この世界とあの世界、コッチとアッチ、トビラの中と外は別世界『異世界』だ。ここでの俺は、あっちので俺とは別だ。ぶっちゃけ別人だ。その自覚がある。
 なら、アインだってそうだろ。
 アッチとコッチは別だ。それなのに、俺はいつしか二つの世界を混ぜて考えてしまう。それは危険だと自分で分かっているのに。
 分かっているのに変えられない。それが俺の、ダメな本質なのかもしれない。
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