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11. 私が「密かに愛する彼と繁殖活動を行う部屋」に向かう途中で固めた決意

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 ……私、とんでもない淫乱女になってる?!

 昼食後の行為のあと、私はお風呂で焦りを感じていた。

 シャワーを浴びたことで、昂りは落ち着いたものの、落ち着けば落ち着く程、自分の痴態を思い出しては羞恥に悶えてしまう。

 どんどん蕩けるスピードが早くなっているのは自覚していた。
 だけど、さっきなんて二の腕やお腹や太ももに触れられただけなのに勝手に高まって、しかも1回達したのに収まらないなんて。

 もーやだ!恥ずかしい!恥ずかしすぎる!!

 ……そうだ。恥ずかしいと言えばもう一つ。
『妊娠しないと出られない部屋』が色々間違っていたこともだ。

 まず、『ドラゴンはそもそも妊娠しない』こと。
 前世が人間で、今世もヒト型で生活することが多かった私。
 ドラゴンが卵生動物ということと、自分がドラゴンということは理解していたのに。
 自分が卵生ということがうまく繋がっていなかった。

 次に、『部屋から出ても良かった』こと。
 職員がユークリッド様を私の番にしようとしているのを、無理矢理『繁殖活動に強力していただくだけ』と説得した時。
 前世や今世の飼育生物の繁殖活動のイメージが湧いて、『繁殖成功するまで出られない』と思い込んでしまった。
 その思い込みのせいで、ユークリッド様を部屋に拘束してしまったなんて、私、余りにも酷すぎる。

 そこまで考えたところで、ユークリッド様と初めて言葉を交わした時のことを思い出す。

 ユークリッド様に「ここはどこだ?」と聞かれた時、「ここは『妊娠しないと出られない部屋』です」と答えた私。
 部屋の特徴を端的に表すフレーズを思い付いたと、正直、良い気になっていた。
 あの時の私、絶対に自信満々の得意気な顔をしてたと思う。

 ひゃーーー!恥ずかしい!!恥ずかしすぎる!!!

 ……なのに、そんな私の恥ずかしい間違いにも、ユークリッド様はどこまでも優しかった。

『妊娠』が間違っていた件は、「俺はヒト型でいることが多いから、全く気付かなかった!」と笑い飛ばしてくれた。
『出られない』が間違っていた件は、「お前と心ゆくまで愛し合うのに都合が良かった」なんて、リップサービスまでしてくれた。

 ユークリッド様の優しさを実感して、また恋心が高まった。

 ……だけど、そうだ。
 私の心に一抹の不安がよぎる。

『お前と心ゆくまで』という言葉。

 この時、ユークリッド様は私との繁殖活動を「愛し合う」という言葉を使って表現したのだと思う。

 でも、ユークリッド様と初めて体を重ねた後ぐらいから、ずっと感じていた違和感。
 ユークリッド様は、まるで私を本当に愛しているかのように振る舞う。
 さっきなんか、私の体型を『最高の身体だ』というリップサービスまでしてくれた程だ。本当はスレンダーな美女が好みのはずなのに!

 最初は、繁殖活動のための行為とはいえ、擬似的にでも相手を愛した方が楽しめるから、そのように振る舞うのかなと思った。
 きっと、過去の一時のお相手にも、そのように振る舞ってきたのだろうなとも思った。

 だけど、ソファでユークリッド様が言った言葉。

『アイデシアを旅に連れて行きたい』

 昨日は、「一人で自由気ままな旅を続けたい」と言っていたのに?

 その変化のスピードに違和感を感じる。

 そうだ。そういえば、ユークリッド様が昨日、この部屋に連れてこられたあと目覚める前。
 私は、ユークリッド様の匂いに対し「理性が溶かされる」と感じたんじゃなかった?

 ユークリッド様も、私の匂いに対し、同じことを感じていたら?
 ユークリッド様の今の状態が、理性を溶かされている状態だったとしたら?
 もしかして、今のユークリッド様の言葉に、ユークリッド様の意思は反映されていない可能性があったら?

 私の心臓が嫌な音を立てる。

 そうだ。前世、『番』という言葉が指す関係性には、私は2種類あると感じていた。

 一つ目は、本人の意思でコントロールできるもの。
『人間の結婚相手』などを差す『番』がそうだ。
 こちらは、一度番っても、本人の意思で、番う相手を変えることだってできる。

 二つ目は、本能にコントロールされてしまうもの。
 前世のオオカミや文鳥など『生涯唯一の番と添い遂げる』動物の『番』がそうだ。
 こちらは、一度番うと、番う相手を変えることができない。
 オオカミや文鳥が、本人の意思で唯一の番と添い遂げる訳ではないと思うので、きっと、『番の本能』みたいなものが、唯一の番をインプットするのだと思う。

 今まで、『ドラゴンの番』は『人間の結婚相手』のようなもので、本人の意思でコントロールできるものだと思っていた。

 だけどもし、ドラゴンの『番の本能』が唯一の番をインプットしてしまうものなら?

 ドラゴンの『番の本能』が、本人の「番わずに自由でいたい」という意思や、異性の好みを捻じ曲げてしまうものだったら?

 その時、前世、元カレが私に別れを告げた時の顔が脳裏に浮かんだ。

 元カレの顔がユークリッド様の顔に変化していく。

 痛切な表情を浮かべたユークリッド様は、口を開いた。

『俺は、自由になりたいんだ。アイデシア、解放してくれ』


 ーーー絶望感で、視界が真っ暗になった。

 ……待って待って待って。
 絶望するのはまだ早い、私。

 そうだ。ユークリッド様がまだ『番の本能』にコントロールされていると決まった訳ではない。

 単に、その方が楽しいから、私を愛しているかのように振る舞っている可能性も高いんだし。

 でももし、ユークリッド様が『番の本能』に支配されている状態だった場合は、……と私は考える。

 ユークリッド様には、自分の意思で、自由に生きてほしい。
 番になるなら、ちゃんと好み通りのスレンダー美女と番って欲しい。

 もちろんそんなの、想像なんてしたくない。
 でも、私の恋心なんかより、ユークリッド様の自由の方がもっと大事だ。

 私は、どうしたらいい?
 ……そうだ。万が一のために調べておくのはどうだろう?

 ーーー『番の本能』からユークリッド様を解放する方法を。

 私は資料室で、ドラゴンの番について調べることを決意した。


 ◇


 私が「番について調べよう!」と使命感に燃え、お風呂から出ると、ユークリッド様が駆け寄ってきた。
 何やらものすごく焦った様子だ。

「アイデシア、大丈夫か?収まったか?」

 ……すっかり忘れていた。
 私はお風呂に入る前の自分の痴態を思い出す。
 そうでしたね。高まりが収まらなくてお風呂に入ったんでしたね。
 ついでに『妊娠しないと出られない部屋』の間違いまで思い出した。
 そうでしたね。あんなに得意気に答えたのに、間違ってたんでしたね。

 うわぁーーーーー!恥ずかしい!!!恥ずかしすぎる!!!!!

「~~~~~!!!」

 一気に顔に熱が集まる。
 羞恥が許容量を超えた私は、ユークリッド様についツンとした態度を取ってしまった。

「……研究室へ向かいます」

 私はやっとの思いで一言告げて、部屋を出た。

「おい、アイデシア?!」

 焦った様子のユークリッド様が、慌てて私を追いかけてきた。


 ◇


 研究室へ向かう途中、ユークリッド様と仲直りをした。
 ユークリッド様は私が嫌な態度を取ってしまったことも気にせず、手を繋いでくれた。
 本当に優しい。大好き。

 ユークリッド様と手を繋いで歩いていると、ふと前世の動物園のことを思い出した。
 動物園といえば、この研究所でも、飼育している生物を観覧できる。

 ユークリッド様と動物園デートをしたい!

 そう思った私は、ユークリッド様を誘ってみた。

「……ユークリッド様。今度、一緒に観覧しませんか?」

 どうしよう。嫌だって言われないかな。大丈夫かな。
 私の鼓動が早くなる。

 すると、ユークリッド様が言った。

「ああ、もちろんだ。アイデシア、一緒に行こう」

「ユークリッド様、ありがとうございます!楽しみです」

 私がそう言うとユークリッド様が心底幸せそうに笑った。
 その笑顔を見て、私は幸せを噛み締めた。

 そして、ユークリッド様の笑顔を、自由を守りたいと、改めて決意した。


 ◇


 ユークリッド様を研究室に送った後、私は資料室でドラゴンの生態に関する本を探し回った。

 ドラゴンの番に関しては、『繁殖相手』という意味で使用されているものが多かった。
 それが本能にコントロールされているものなのかは、判断がつかない。

「うーん、やっぱりここにも書いてないか」

 調べるのを諦めかけた、その時、資料室のドアがガチャリと開く。

「やぁ、アイデシア」

 私の飼育を担当してくれる職員がやって来た。

「こんにちは」

「ユークリッド君と話が終わって、ユークリッド君は部屋に戻ったよ」

「そうなのですね」

「アイデシアはどうしたの?」

「ええと、ドラゴンの生態について、調べたいことがあったのですが全然資料がなくて」

「ドラゴンの生態かー……。アイデシアのおかげでかなり研究が進んだけど、まだまだドラゴンは未知の生き物だからね。わからないことが多いんだよね」

「……そうなんですね」

「どんなことを調べたいの?」

「ええと……研究所で飼育している生物の中に、『唯一の番と添い遂げる』生物っていますよね?」

「うん、いるね」

「それってやっぱり、本能が『唯一の番』をインプットするんでしょうか?」

「うーん、そうだね。高度な知性や意思を持っている生き物じゃないから、恐らく本能がインプットするんだと思うよ」

「それって、どのタイミングで『番』とインプットするんでしょう?」

「うーん……多分、初めての交尾の時じゃないかな?」

 ああ、そうだ。
 ユークリッド様の変化を顕著に感じたのは、確か初めて体を重ねた後だった。

「やはり……そうなのですね」

「アイデシア?どうかしたの?」

「……いえ、あの、ドラゴンの番は、……人間の結婚相手のようなものと、唯一の番を持つ生き物のようなもの、どちらだと思いますか?」

「それ、丁度ボク達もさっき考えてたんだよね。難しい質問だけど……」

 職員はうーんと考える。

「僕の予想では、ドラゴンは、唯一の番を持つ生き物なのかなと思う」

「……!」

「だってさ、今日のアイデシアとユークリッド君の様子を見てると、本能が求め合っているとしか思えないほどラブラブなんだもん!
 とはいえ、この結論は『ユークリッド君には本能的にもアイデシアを求めて、アイデシアを生涯愛し続けて欲しいな~』というボクの親心的な願望も入ってるんだけどね!」

「そう……でしたか」

 やっぱり……!
 職員から見ても、ユークリッド様の今の状況は『本能が求めているとしか思えない』んだ。

 恐らく、職員としては私を笑わせたくて冗談めかして言ったのだと思う。
 それなのに、笑うことができず、ただただ呆然とする私を見て、職員が心配そうな表情を浮かべた。

「……アイデシア?顔色が悪いよ?大丈夫?」

「……すみません、大丈夫です。あの、ドラゴンの番から話は変わるのですが。
 研究所で飼育している『唯一の番と添い遂げる』生物で、……例えば、他の組み合わせで番わせたい時などに、『唯一の番』をリセットする方法はあるのですか?」

「うーん、唯一の番を持つ生物を、他の組み合わせで番わせることはしないけど。……そうだね。たまに唯一の番を持つ生物の片割れが死んでしまった時に、もう片方も後を追うように死んでしまうことがあるんだ」

「え……!」

「それをボク達は番の『後追い死』って呼んでるんだけど。例えば残された片割れが若かった場合は、後追い死しないように、記憶操作の魔道具で、番がいた時の記憶を消すこともあるよ」

 記憶?記憶を消す……?!
 ユークリッド様の?
 二人で過ごした時間の記憶を?

 ユークリッド様と過ごした時間が私の脳裏を走馬灯のようによぎる。
 まだ1日も経っていないのに。
 その記憶は、既にすっかり私にとってかけがえのない物になっていることに気付いた。

 ユークリッド様の記憶を消したら?
 ……ユークリッド様は自由な旅に戻るのだろう。
 子育てが終わった後、ユークリッド様がまた私に会いに来てくれるなんてこともなくなる。

 もし、ユークリッド様がまた私に会いに来てくれるという話を忘れてしまって、二度と会えなかったとしても。
 私のこと、覚えていて欲しい。ほんの少しだけでもいいから。

 ーーーユークリッド様の記憶を消したくない!
 心が叫ぶのを感じた。

「そう……なんですね」

「アイデシア?大丈夫?本当に顔色が悪いよ」

「ええ、すみません、大丈夫です。……では、そろそろ部屋の方に戻りますね。色々教えてくださって、ありがとうございました」

「ううん、何かお役に立てたなら、嬉しいよ。……顔色も悪いし、送ろうか?」

「いえ、大丈夫ですよ。ご心配かけてすみません。では、失礼しますね」

「うん、ではまたね」

「はい、ではまた」

 必死に涙を堪えながら、私は資料室を出た。


 ◇


 部屋への帰り道、私は必死に思考を整理した。

 ドラゴンは唯一の番を持つ可能性がある。
 その場合、『番の本能』が、初めての交尾で唯一の番をインプットすると思われる。
 そして、『番の本能』は、本人の意思を捻じ曲げる可能性がある。

 もし、ユークリッド様が『番の本能』に意思を捻じ曲げられていたら?

 ……私は、ユークリッド様を解放する。
 だって最初に、『繁殖活動が終わり次第、ユークリッド様を自由にする』と約束したのだ。

 ユークリッド様は、昼寝中に攫われて、偶然ここに連れて来られただけなのだ。
 その優しさから、期間限定の繁殖活動に協力してくれただけなのだ。
 そのせいで『番の本能』によって、唯一の番を勝手にインプットされ、自分の意思を捻じ曲げられるなんて予想できたはずがない。

 私はユークリッド様に『番の本能』などに支配されず、大空を舞っていてほしい。
 愛しい人には、自分の意思で、自由に生きてほしいのだ。

 ーーーでも。
 まだだ。まだ大丈夫。

『ドラゴンが唯一の番を持つ生き物』だというのは、あくまで予想だ。
 まだ、ユークリッド様が『番の本能』にコントロールされていると決まった訳じゃない。

 ……だけど。
 もし、ユークリッド様が、『番の本能』に意思を奪われ、ユークリッド様の自由を縛る選択をすることがあったら。

 私はーーー。

『解放してくれ』

 ユークリッド様の痛切な表情が脳裏に浮かぶ。

 ーーー私は、ユークリッド様の記憶を消さなくてはならない。
 たとえ、それがどんなに辛くても。
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