不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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71~最終話

またいつかの再会を【下】

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「誘拐された私を見つけてくれたのが君だと、隊長から聞いているよ」

 サラッサラの金の髪に、空よりも青い瞳。
 どこかで見た覚えが……。頭のなかに、無数の本棚が浮かぶ。
 本……そうだ、たくさんの本がある場所。王立図書館。そこの階段突き当たりに飾られた肖像画に似てるんだ!
 現国王の絵の隣に飾られた、あの絵は……

「おう――むぐっ!」

 ヨルグの大きな手のひらに口を塞がれ、頭上から「シーッ」と注意が降った。

 ヨルグとはじめて出会ったあの日、私が見つけ出したモノ――。
 絵でしか見たことのない王子様が、今目の前に立っている。

 本当に、『お忍び』で外出とかするんだ……。
 ぼんやりと、そんな感想が浮かんだ。

「残念ながら今日はあまり時間がなくてね。パーティーにパンはあるかい?」

「――っぷは! いつものメニューとは違いますけど、何種類かパンもありますよ」

「では、いくつか頂戴していくとしよう。――デファーロット前子爵も一緒にどうだ? 王族も口にするとあらば、貴公のも晴れるだろう?」

「い、いえ、私はこれにて御前失礼いたします」

 王子の含みのある物言いに、ヨルグのお父さんが気まずそうに顔を伏せる。
 きっとこの王子は、庶民庶民と蔑むような発言の数々を聞いていたのだろう。

「それは残念。では行こうか」

 お店へと促されかけて、踏みとどまる。
 私の話なんて聞いてくれないかもしれない。
 でも、やっぱり伝えておきたい。

「あの、私っ、直接会えたらどうしても伝えたいことがあって!」

 王子を礼で見送るヨルグのお父さんと――その後ろに停まる馬車のなかまで聞こえるように、声を張り上げる。

「ヨルグさんのお父さん、! ヨルグさんをこの世に生まれさせてくれて、ありがとうございます!!」

 たとえどんな親だったとしても、両親がいたからヨルグが生まれた。
 生まれたから、こうして出会えたのだ。

 馬車の窓に引かれたカーテンが、動揺を映すように揺れる。
 精一杯の感謝の言葉にも、返事はないけれど。

 それでも差し出した感情を突き放すことなく受け取ってもらえたような、妙な確信があった。
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