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71~最終話

パーティーの準備【上】

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 裾に花模様の刺繍が入った、淡い黄色のワンピース。円形の布で作られたスカート部分は回るとふわりと広がって、金糸で刺繍されたツル葉がキラキラと光を反射する。
 嬉しくてじっとしていられず、真新しい姿見の前でついくるくると回ってしまう。

 髪は以前のように前髪を編み込めばいいだろう。ワンピースの共布で作られたリボンを手に鏡台の前に座ると、玄関のほうから「リゼットちゃーん!」と呼ぶ声が聞こえた。



 ドアの外に立っていたのは、お店の常連でもあるご近所の奥さん二人。おしゃべり好きでいろいろなことを教えてくれたり娘さんのお下がりの服をくれたりと、なにかと私のことを気にかけてくれる心強い存在だ。もちろん今日のパーティーにも招待している。

「リゼットちゃん、このたびは結婚おめでとう!」

「えへへ、ありがとうございます! でも二人とも、パーティーは午後からですよ?」

「準備のお手伝いをしようと思って来たの! 何かの役に立つかと思って旦那も連れてきたのよ、ほら!」

 促されて二人の背後に目を向けると、男性陣が会場の設営を手伝って、酒樽や木箱を運び込んでくれているのが見えた。

「この花はうちからのお祝い!」

「んぷっ!」

 明るい笑顔とともに、花屋の奥さんから埋もれるほど大きな花束を手渡される。

「着替えは済んでるわね。じゃあ髪とメイクをやっちゃいましょ! 道具も一式持ってきたのよ。うちのワガママ娘で鍛えられた腕が鳴るわ~!」

「そのワンピース、そのままでもとっても可愛いけど、たっぷりのお花で飾ったらもーっと可愛くなると思わない? ちょうど花もあることだし!」


 髪は左右からざっくりと編み込み、耳の後ろ辺りでくるりとまとめて小さなお団子に。淡い黄色のリボンと、白や黄色の花で飾られた。
 ワンピースの左腰元には小さなブーケのように花が縫い留められ、裾の花模様に交じるようにして一輪ずつ縫い留められた花は、模様から浮き出てきたかのようで幻想的だ。

 頼もしい二人の加勢によって、みるみる綺麗に飾りつけられていく。

「隊長さんもそろそろ支度をはじめたほうがいいんじゃない? さっき見たときはまだいつもの制服だったわよ?」

「あー、ヨルグさんは……」

 買い出しの日、悩みに悩んで私の服を決め、さあ次はヨルグの服を選ぼう! という段になって言われたのだ。『俺は騎士服に正装用マントを羽織るだけでいい。それよりもリズの髪飾りと靴を見に行こう、時間が足りない』と。
 ありのまま伝えると、「隊長さんったら、すっかりリゼットちゃんに骨抜きなのね!」とカラカラ笑われた。
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