不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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61~70話

見たかったもの【上】 ※

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「ん――っっっ、はぁ……! んはぁっ、はぁっ……!」

「っは……、はっ……」

 大きく上下する胸にもたれかかって、自分も必死に息を継ぐ。

 なにこれ。
 なにこれ、すごい……。
 全部吹き飛ぶみたい。

 変な反応をしてしまっていないかとか、ヨルグは本当に重くないのだろうかとか、早く可愛いネグリジェを買わなくてはだとか。
 いつだって頭の片隅にあるようなちょっとした心配事も迷いも何もかも吹き飛んで、すべてがヨルグ一色になる。

 触れ合った体温と、お腹の奥に広がる温もり。どこまでが自分の熱で、どこからがヨルグの熱なのか。ドクドクと鼓動までも重なって、境界が曖昧になって混ざり合う。

 なおも逃がしきれない衝撃の余韻でビクッビクッと身体が跳ねるたび、収まったままの雄芯が呼応するようにピクンと跳ねるのを感じた。

「っはぁ……。たっ……、達し、ました……」

「ああ……、俺もだ……」

 ガッチリと腰を掴んでいた手が、抱きしめるように腰に巻きつく。もう一方の手はゆるゆると、労うように私の頭を撫でてくれた。

 気持ちいい……。
 ムズムズが弾けたときとも違う、うっとりと安心するような心地よさ。
 厚い胸にもたれかかり、鼓動を聞きながら優しく頭を撫でられていると、次第に呼吸が落ち着いてくる。

「これが、愛を確かめ合う行為……なんですね……」

 ほぅ、と吐いた息が熱い。
 昨日途中で眠ってしまった私に、まだまだそこからが本番なのだと伝えたい。『挿入』なんて、行為のほんの入口に過ぎなかったのだ。

「身体は辛くなかったか?」

 顎先をくすぐられて、近い位置にあるヨルグの顔を見上げる。答えるより先に、思わずといった様子でちゅっと口づけられた。

「んっ……ヨルグさんがたくさん気遣ってくれたから、大丈夫です」

 激しい動きのせいでリボンが緩んでしまったらしく、ほどけ落ちた前髪がヨルグの片目を覆っている。
 頭上へと手を伸ばすと、応じるように頭を差し出してくれるヨルグに一層の愛情を感じながら、きゅっとリボンを結び直した。

「それに……とっても気持ちよくて、幸せでした」

「気持ちよかった、のか……?」

 私の肩に顔を埋めたヨルグが、甘えるように、すり……と頬ずりしてくる。

 首筋に吐息が触れてくすぐったい。
 頭上に回した手でヨルグの頭を抱きしめると、雄芯が気のせいでは済ませられないくらい強く反応した。

「っ……はい。ぐずぐずに煮溶かされて、ジャムになっちゃうかと思うくらい」

「それは甘そうだ」

「ふふふっ」

 疲労が引き連れてくるまどろみに思考を溶かしながら、ヨルグへの愛に満ちて笑みが零れる。

 首筋に触れるやわらかな感触。
 またチクリと痕を残されたかと思えば、熱い舌がぬるりと首筋を舐めあげた。

「ふゃ……っ」

 水面にインクを垂らしたかのように、まどろみのなかに快感が滲み広がる。
 ぴちゃぴちゃと首筋を這いながら、徐々に下へと移動してくる舌。お腹の奥には、しっかりと存在を主張する雄芯。

 これは、もしかして――?

「リズ……もう一度、シたい」

 胸の先端を浅く食みながら、前髪をリボンで留めたヨルグが上目遣いにねだった。
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