上 下
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61~70話

今夜の行為は【上】

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「リボン……」

 ヨルグは頭上のリボンに触れながら、複雑そうな表情を浮かべている。

「あんまり触ったらほどけちゃいますよ? ヨルグさんが嫌だったら外しますけど……」

「あっ、ああ、すまない」

 指摘すれば、サッと手が引っ込んだ。
 なおも頭上を気にするヨルグの動きに合わせ、黒っぽい髪の中央で白いリボンが揺れている。
 ベッドに座るヨルグの正面に立っているため、ヨルグの頭を見下ろしているのが新鮮だ。

「その、嫌というわけではないが……リズのほうが不快じゃないか? こんな不気味なものを見せられて」

「!? とんでもない! 似合ってるって言ったじゃないですか!」

 裸の上半身は筋肉でゴツゴツとしているのに、頭のてっぺんには愛らしい布リボン。そのちぐはぐさが無性に可愛くて、先ほどから胸の奥がキュウッとする。

「それは喜んでいいのか……?」

「私は大好きですよ。誰にも見せないで、一人占めしたいくらい」

 情けなく眉尻を下げ、自信なげにこちらを見上げる様子が可愛くて、可愛くて。あらわになったおでこにちゅっと口づけた。

「えへへ、おやすみなさいの挨拶で――ひぇ!?」

 向かい合った姿勢のままぐっと腰を抱き寄せられ、薄い布地越しの胸にヨルグが顔を埋める。

「ヨルグさんっ?」

「今夜も…………シたい」

 薄布を通過して、じんわりと胸を撫でる熱い吐息。見下ろした先に見えるのはリボンの付いた頭頂部だけ。
 せっかく前髪をまとめたのに、これでは顔が見えない。

「するって、ええと……『愛を確かめ合う行為』のことですか?」

「ああ」

「っ!」

 ヨルグの言葉に少なからずショックを受ける。
 昨夜はお互い、これ以上ないほど愛を伝え合えたと思っていたのに……。

「……わかりました。今日もしましょう」

 答えるなりグリンッと視界が反転し、気付けばヨルグの腕に囲われるようにしてベッドに押し倒されていた。

「いいんだな……?」

 金の瞳が、一段色を深めて揺らめく。
 どこまでも真っ直ぐな眼差しに、ともすればそのまま射抜かれてしまいそうで。向けられた強い愛情を受け止めきれるよう、私もお腹にぐっと力を込めて答えた。

「ヨルグさんが私のまで、何度だって付き合います。本当に大好きだってわかってもらえるように頑張りますから!」
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