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61~70話
誓いの儀式【上】
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支度を終えて一階に戻ると、ヨルグはまだ朝食に手をつけていなかった。
「手紙を書け」
唐突な発言におじいちゃんを見る。
私がいないあいだに、二人でなんの話をしていたのだろう。おじいちゃんが結婚に反対している、というわけではなさそうだけれど。
「何もお伺いを立てろってんじゃねえ。報告だけでもいいから手紙を書くんだ。……出せなかった手紙を、後悔する日が来ねえように」
『出せなかった手紙』
その言葉が示すものを、私は一つしか知らない。
隠すようにしまい込まれた、何通もの――。
自身が悔いを残しているかのように話すおじいちゃんにも、もしかしたら伝えられなかった想いがあるのだろうか。
「……ヨルグさん、ご両親にお手紙を出すんですか?」
「いや、まだそうと決めたわけでは……。送ったところで、目を通すかどうかも怪しい人たちなんだ」
上体ごとこちらに向いたヨルグの前にしゃがみ込み、膝に置かれた拳にそっと手を重ねる。覗き込むように見上げても前髪に隠された表情は見えないけれど、私の想いは伝わるはずだ。
「近況を伝えることでヨルグさんに不都合が生じるのでなければ……出してほしいです。たとえ読まれないとしても。……もしお手紙を書くときは、私もひと言ご挨拶を書かせてもらっていいですか?」
グッと息を詰まらせたヨルグが、観念したようにガクリと項垂れた。
「…………リズが、そう望むのなら」
「ありがとうございます!」
不仲の家族に手紙を出すのは気が進むことではないだろう。強引なお願いをして申し訳ないとは思いつつも、遺されたお父さんの手紙を思うとどうしても見過ごすことはできなかった。
読まれないだけならともかく、相手からの返事によってはヨルグが傷つくことになるかもしれない。そのときには精一杯寄り添って支えよう。どんな痛みも苦しみも、二人一緒なら乗り越えられると信じて。
「ヨルグさんには、私がついてますからね!」
「……そうだな。今なら空だって飛べそうだ」
「ふふっ、じゃあ急いで朝食にしましょう! 今お茶を淹れますね!」
「手紙を書け」
唐突な発言におじいちゃんを見る。
私がいないあいだに、二人でなんの話をしていたのだろう。おじいちゃんが結婚に反対している、というわけではなさそうだけれど。
「何もお伺いを立てろってんじゃねえ。報告だけでもいいから手紙を書くんだ。……出せなかった手紙を、後悔する日が来ねえように」
『出せなかった手紙』
その言葉が示すものを、私は一つしか知らない。
隠すようにしまい込まれた、何通もの――。
自身が悔いを残しているかのように話すおじいちゃんにも、もしかしたら伝えられなかった想いがあるのだろうか。
「……ヨルグさん、ご両親にお手紙を出すんですか?」
「いや、まだそうと決めたわけでは……。送ったところで、目を通すかどうかも怪しい人たちなんだ」
上体ごとこちらに向いたヨルグの前にしゃがみ込み、膝に置かれた拳にそっと手を重ねる。覗き込むように見上げても前髪に隠された表情は見えないけれど、私の想いは伝わるはずだ。
「近況を伝えることでヨルグさんに不都合が生じるのでなければ……出してほしいです。たとえ読まれないとしても。……もしお手紙を書くときは、私もひと言ご挨拶を書かせてもらっていいですか?」
グッと息を詰まらせたヨルグが、観念したようにガクリと項垂れた。
「…………リズが、そう望むのなら」
「ありがとうございます!」
不仲の家族に手紙を出すのは気が進むことではないだろう。強引なお願いをして申し訳ないとは思いつつも、遺されたお父さんの手紙を思うとどうしても見過ごすことはできなかった。
読まれないだけならともかく、相手からの返事によってはヨルグが傷つくことになるかもしれない。そのときには精一杯寄り添って支えよう。どんな痛みも苦しみも、二人一緒なら乗り越えられると信じて。
「ヨルグさんには、私がついてますからね!」
「……そうだな。今なら空だって飛べそうだ」
「ふふっ、じゃあ急いで朝食にしましょう! 今お茶を淹れますね!」
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