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51~60話

私の番【下】 ※

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「んうぅ……、まだ、ですか……っ?」

「ああ。香油かオリーブ油でも付ければ滑りがよくなるらしいが……、っは……、あいにく我が家には置いてなくてな……」

 香油は高くてもったいない気がするけれど、オリーブ油ならうちに戻ればいくらでもあるのに。
 潤滑油代わりにと唾液を馴染ませるようにしながら、何度も指を抜き差しされる。

 標的の『穴』は私にもちゃーんと開いていたようで、ヨルグは「濡れている……」と嬉しそうに呟いて、つぷりと指を挿し入れた。
 最初は一本でも圧迫感があったヨルグの指も、じっくりと慣らしながら徐々に本数を増やされ、今や三本も入っている。
 「指三本……、指三本までは……」とヨルグがうわ言のように唱えていたので、おそらく目標に到達したのだろう。

「そろそろいいか……? いや、もう少し慣らすべきか……」

「もう、十分です!」

 ヨルグの自問に答える。
 なかを指でほぐしながら穴の縁や敏感な一点を散々舐めまわすものだから、あれからさらに二度も達して疲労困憊だ。
 それに、このままの調子では夜が明けてしまう。

「しかし、リズの身体に負担が……」

「しっかりほぐしてもらいましたし、多少の痛みくらい覚悟もできてます! もう、ひと思いにグサッとお願いします!」

 びっしょりと汗だくで、ぐったりと疲れ果てて、大変な一日を経て眠気だって限界だ。
 これ以上、ひとほぐしだって耐えられない。

 ギシッとマットレスを沈ませて、ヨルグが覆い被さる。

「……本当にいいのか?」

「当然――」

 見上げた瞳が不安げに揺れる。
 ……ああ、この質問は挿入のことだけを差しているのではない。もっと、根本的な……。

「ヨルグさんが大好きだから、全部受け止めたいんです。――愛してます。一緒に幸せになりましょうね」

 抱擁を求めて腕を伸ばせば、たくましい腕がおそるおそる私を囲み、そして力強く抱きしめた。

「リズ、愛している。愛している、ずっと……!」

 秘部に熱が触れる。
 ピタリと狙い定められれば、やっぱり痛みへの恐怖は湧いてくるけれど。そんな不安なんてどうでもよくなるくらい、ヨルグが愛おしくてたまらないから。

 受け止めたい。
 ヨルグのすべてを。
 私に向けられた思いの丈を。

「んっ……ひゃうっ!?」

 ぐっと力が込められた途端、狙いがずれてズルンッと勢いよく切っ先が滑った。
 何度も達して敏感になっている『一点』を思い切りこすり上げられ、ビクビクとうち震える。

「っ、くぅっ……」

「す、すまない! 今度こそ……」

 焦ったような余裕のない声。
 抱きしめた身体はひどく強張って。

 ここまで来てようやく気付く。
 初めての行為に不安と緊張を抱えているのは、私だけではなかったのだ。
 それなのに私ときたら、何もわからないからとヨルグに頼りきりで。

 再びピタリと触れた切っ先に、そっと自分の右手を添える。

「リズ……?」

「私も、支えておきますね」

 火傷しそうなほどに熱く、ドクドクと脈打つ雄芯は、まるでむき出しの情熱のようだ。

 愛を確かめ合いたいと思っているのは、私も同じ。二人一緒なら大丈夫。きっとなんだって乗り越えられる。

「はっ……」

 熱い吐息。
 狙いを定め、ぐぐっ……と切っ先がめり込んだ。
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