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31~40話

おばあちゃんのこと【下】

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「……おばあちゃんはこの場所から、どこでも好きな場所のものが見られたの?」

「らしいが、俺ぁ詳しいこたぁさっぱりだ。確かめてえなら自分でみりゃあいい」

 私が透視を使うのはいつも、探し物やかくれんぼをするときだった。必然的に『見えたもの』も近くにあったから、この能力がただの『透視』だと信じて疑わなかったし、遠くが見えるかもしれないなんて考えたこともなかった。

 もし、安全な場所にいながらにしてドラゴンの居場所を把握することができたなら――。
 間違いなく、大きな助けになれるはずだ。

「試して……」

 答えを求めるようにヨルグを見れば、ぎこちない頷きが返ってくる。
 よかった、『協力したい気持ち』をこばまれなくて。

 遥か遠くのものが見えるのか、見えないのか。とにかく実践してみないことには始まらない。
 いきなり本番に挑むのは怖いので、手始めに少し離れた場所で試してみよう。ドラゴンが飛んでいった方角で、目標にしやすいものというと……。

「試しに、南門を見てみるわ!」

 目標を定め、ひとまずお店の前の通りを。これくらいの距離はいつも通りだ。
 そこから大通りを歩くように、グングンと視線を進めていく。
 まだ見える。まだ進める。
 道行く人々も、露店も、通りの中央を走る馬車もすり抜けて、視界はあっという間に南門に達した。

「見えた……。南門が見えたわ!」

「その場に門衛は何人いる?」

「えっと、門の手前に二人……あ、詰め所にもいますね。一、二、……全部で四人います」

 ヨルグの問いかけに、視界を確認しながら答える。現在門に通行者はなく、詰め所の二人が暇そうにチェスをしているのが見えた。……あ、あくびした。

「左腕につけた腕章の色は?」

「モスグリーン、っていうのか……すすけた深緑色をしてます。そこに黒字で、み……『みなみ』? あとは何を見ればいいですか?」

「いや、見えていることは十分わかった。ありがとう」

 『わかった』?
 ヨルグが、私の能力を信じてくれた……?
 視界にしっかりと南門を捉えたまま、張り詰めていた全身にジワリと血が通う。
 
 おばあちゃんが見られたという『離れた場所のもの』を、私の目でも見ることができた。自分でも知らなかった能力を知れたことに感動が込み上げるけれど、今それを喜んでいる時間はない。

「じゃあ、このままドラゴンが見えるか試してみますね!」

 ――さて、ここからが本番だ。
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