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21~30話
手作りのランチ【中】
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ヨルグが最初に手にしたのは私イチオシの力作だ。さすが、お目が高い!
「これは愛らしい形をしているな。よく出来たア――」
「でしょう!? 自分でも可愛く出来たと思ってたんです、このウサギ! 前回一緒に行ったパン屋さんで、植物モチーフのパンが売ってたでしょう? 形を工夫するだけで魅力が増すってすごいことだと思って、取り入れてみたんです! なのにおじいちゃんったら『アヒルパンか』なんて言うんですよ!?」
「…………ふむ」
ヨルグは短く相槌を打つと、それ以上の言葉を押し込めるかのように大きな口でパンに噛りついた。
両手を胸の前で組み、緊張の面持ちでヨルグの反応を見つめる。
もぐもぐと顎が動いて、ゴクリと喉が上下して。
「――うん、美味い。やはりどことなくガファスさんの味に似てる気がするな」
「本当ですか!? よかったぁー! 材料も配合もおじいちゃんのレシピ通りなんですけど、どうしてもおじいちゃんと同じ味にはならなくて……」
ヨルグが通い詰めるほど気に入っている『おじいちゃんのパン』の味を再現できれば、ヨルグに気に入ってもらえるだろうと思ったのだ。そしてあわよくば胃袋を掴み……というのはさておき。
再現は失敗に終わってしまったけれど、美味しいと言ってもらえたなら成功だ!
「全く同じである必要はないだろう。丁寧に心を込めて作ってくれたのだと伝わってくる、美味いパンだ」
そう言ってヨルグは、手にしたパンの残りをたった二口で平らげてしまった。
本当に気に入ってくれたらしく、すぐさま二個目のパンを手に取っている。
「よかったぁ……」
その反応に心から安堵の息を吐いて、私もようやくパンに手を伸ばした。
ぽかぽかと暖かな日差しに、草葉を揺らす涼やかな風。しっとりと水気を含んだ心地よい緑の香りと、美味しい昼食。
そして目の前には、何よりも大好きな人。
美味い美味いとあっという間に三個目のパンを食べ終えたヨルグは、ふと食事の手を止めて言った。
「実を言うと今日は……、リズに来てもらえないのではないかと思っていたんだ」
「えっ!? なんでですか!?」
思いもかけない言葉に目を見開く。
ヨルグとのお出かけなんて楽しみに決まっているのに。風邪でも引いて行けなくなろうものなら大泣きする自信があるのに。
「俺が、その……『デート』なんて言葉を使ったものだから、避けられてしまうのではないかと……。待ち合わせ場所を大通りにしたのも、馬の都合よりも……家の前で変にプレッシャーをかけてはならないとの思いからで……」
明後日の方向に心配を募らせるヨルグに、ぐっと眉根を寄せる。
「これは愛らしい形をしているな。よく出来たア――」
「でしょう!? 自分でも可愛く出来たと思ってたんです、このウサギ! 前回一緒に行ったパン屋さんで、植物モチーフのパンが売ってたでしょう? 形を工夫するだけで魅力が増すってすごいことだと思って、取り入れてみたんです! なのにおじいちゃんったら『アヒルパンか』なんて言うんですよ!?」
「…………ふむ」
ヨルグは短く相槌を打つと、それ以上の言葉を押し込めるかのように大きな口でパンに噛りついた。
両手を胸の前で組み、緊張の面持ちでヨルグの反応を見つめる。
もぐもぐと顎が動いて、ゴクリと喉が上下して。
「――うん、美味い。やはりどことなくガファスさんの味に似てる気がするな」
「本当ですか!? よかったぁー! 材料も配合もおじいちゃんのレシピ通りなんですけど、どうしてもおじいちゃんと同じ味にはならなくて……」
ヨルグが通い詰めるほど気に入っている『おじいちゃんのパン』の味を再現できれば、ヨルグに気に入ってもらえるだろうと思ったのだ。そしてあわよくば胃袋を掴み……というのはさておき。
再現は失敗に終わってしまったけれど、美味しいと言ってもらえたなら成功だ!
「全く同じである必要はないだろう。丁寧に心を込めて作ってくれたのだと伝わってくる、美味いパンだ」
そう言ってヨルグは、手にしたパンの残りをたった二口で平らげてしまった。
本当に気に入ってくれたらしく、すぐさま二個目のパンを手に取っている。
「よかったぁ……」
その反応に心から安堵の息を吐いて、私もようやくパンに手を伸ばした。
ぽかぽかと暖かな日差しに、草葉を揺らす涼やかな風。しっとりと水気を含んだ心地よい緑の香りと、美味しい昼食。
そして目の前には、何よりも大好きな人。
美味い美味いとあっという間に三個目のパンを食べ終えたヨルグは、ふと食事の手を止めて言った。
「実を言うと今日は……、リズに来てもらえないのではないかと思っていたんだ」
「えっ!? なんでですか!?」
思いもかけない言葉に目を見開く。
ヨルグとのお出かけなんて楽しみに決まっているのに。風邪でも引いて行けなくなろうものなら大泣きする自信があるのに。
「俺が、その……『デート』なんて言葉を使ったものだから、避けられてしまうのではないかと……。待ち合わせ場所を大通りにしたのも、馬の都合よりも……家の前で変にプレッシャーをかけてはならないとの思いからで……」
明後日の方向に心配を募らせるヨルグに、ぐっと眉根を寄せる。
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