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11~20話
お待ちかねのデート【下】
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「すまない、これは愛馬のニュイだ」
ヨルグの言葉に、鼻面を押し当ててくる大きな体躯の黒馬を見上げる。
「えっと……ニュイ? はじめまして、リゼットよ。今日は私も乗せてくれる……?」
ベルベットのような頬を撫でつつ恐る恐る話しかければ、ブルルンッと力強い返事をくれた。
「ふふっ、見た目は怖そうだけど人懐っこいんですね」
「まあ、主人に似たんだろうな……」
「??」
果たしてヨルグは人懐っこかっただろうか?
どちらかといえば人見知りそうな気がするけれど。
私の荷物を手際よく馬の背にくくりつけ終えると、ヨルグが私へと手を差し出した。
「では乗ろうか」
「はい!」
差し出された手に掴まり、片足を鐙に……。
鐙に…………。
「んぐぐ……っ」
…………届かないっ!!
「リズ……こちらを向いて真っ直ぐ立ってもらえるか? ――失礼」
「? わわっ!?」
腰の左右を支えて一気に持ち上げられたかと思えば、ポスンッと優しく馬の背に着地した。
「スカートなら横座りのほうがいいだろう」
話しながら、ヨルグ自身も軽々と乗り込む。
ぐっと身体が寄せられ、馬に跨がったヨルグの脚のあいだに私が横座りしている状態になった。
この姿勢、まるで抱きしめられてるみたい……!
二人乗りというものがここまで密着するものだとは思っていなかった。うるさく騒ぎだした鼓動までも伝わってしまいそうな距離にうひゃぁぁと顔を赤らめていると、頭上でヨルグが言った。
「俺も支えるが、場合によっては両手で手綱を握ることもある。無論、あまり速度を出すつもりはないが……念のため、リズもしっかりと掴まっていてほしい」
「掴まる……?」
――って、え? どこに??
おろおろと見渡し、鞍の前面にあるちょっとした段差に手を伸ばそうとすると、誘導するようにグッと上体を抱き寄せられた。
「こっちだ」
「あぅっ、ひ、ひゃい……」
ふわりとカモミールの香りがして、頬にシャツ越しの熱が触れる。
思考はもうダメだ。許容値を超えて停止した。
何も考えられないまま、そろりと腕を回してヨルグの腰にしがみつく。引き締まって細く見えていた腰も、抱きついてみれば意外とがっしり筋肉の質量を感じる。
抱きついてみればって! 抱きついてみればって――!!
足をばたつかせて叫びたい気持ちだけれど、馬を驚かせてはいけないとなんとか堪える。
俯いてふるふると震える私をどう勘違いしたのか、逞しい腕がぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「絶対に落としたりはしない……。安心してくれ」
「ふぁぅ……」
呂律も、もうダメそうだ。
ヨルグの言葉に、鼻面を押し当ててくる大きな体躯の黒馬を見上げる。
「えっと……ニュイ? はじめまして、リゼットよ。今日は私も乗せてくれる……?」
ベルベットのような頬を撫でつつ恐る恐る話しかければ、ブルルンッと力強い返事をくれた。
「ふふっ、見た目は怖そうだけど人懐っこいんですね」
「まあ、主人に似たんだろうな……」
「??」
果たしてヨルグは人懐っこかっただろうか?
どちらかといえば人見知りそうな気がするけれど。
私の荷物を手際よく馬の背にくくりつけ終えると、ヨルグが私へと手を差し出した。
「では乗ろうか」
「はい!」
差し出された手に掴まり、片足を鐙に……。
鐙に…………。
「んぐぐ……っ」
…………届かないっ!!
「リズ……こちらを向いて真っ直ぐ立ってもらえるか? ――失礼」
「? わわっ!?」
腰の左右を支えて一気に持ち上げられたかと思えば、ポスンッと優しく馬の背に着地した。
「スカートなら横座りのほうがいいだろう」
話しながら、ヨルグ自身も軽々と乗り込む。
ぐっと身体が寄せられ、馬に跨がったヨルグの脚のあいだに私が横座りしている状態になった。
この姿勢、まるで抱きしめられてるみたい……!
二人乗りというものがここまで密着するものだとは思っていなかった。うるさく騒ぎだした鼓動までも伝わってしまいそうな距離にうひゃぁぁと顔を赤らめていると、頭上でヨルグが言った。
「俺も支えるが、場合によっては両手で手綱を握ることもある。無論、あまり速度を出すつもりはないが……念のため、リズもしっかりと掴まっていてほしい」
「掴まる……?」
――って、え? どこに??
おろおろと見渡し、鞍の前面にあるちょっとした段差に手を伸ばそうとすると、誘導するようにグッと上体を抱き寄せられた。
「こっちだ」
「あぅっ、ひ、ひゃい……」
ふわりとカモミールの香りがして、頬にシャツ越しの熱が触れる。
思考はもうダメだ。許容値を超えて停止した。
何も考えられないまま、そろりと腕を回してヨルグの腰にしがみつく。引き締まって細く見えていた腰も、抱きついてみれば意外とがっしり筋肉の質量を感じる。
抱きついてみればって! 抱きついてみればって――!!
足をばたつかせて叫びたい気持ちだけれど、馬を驚かせてはいけないとなんとか堪える。
俯いてふるふると震える私をどう勘違いしたのか、逞しい腕がぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「絶対に落としたりはしない……。安心してくれ」
「ふぁぅ……」
呂律も、もうダメそうだ。
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