41 / 196
11~20話
私の知らない話【中】
しおりを挟む
私の耳元に顔を寄せ、二段階ほど声のトーンを下げる。
「『不能』っつったら、コレが勃たないって意味に決まってんだろ」
立てた親指をクイクイッと上下する不思議なジェスチャーをじっと見つめ…………ようやく意味を理解して、勢いよくテオの側から飛びのいた。
「な……っ、なによそれ!! バカなこと言わないでよ! だってヨルグさんは――っ」
ハッと気付いて口をつぐむ。
ヨルグが毎晩ソレを屹立させているなんて、本人以外知るはずのない情報である。
「『ヨルグさんは』、なんだよ?」
「……なんでもない」
「まさか、あいつとヤってんのか?」
「だからそんな関係じゃないって言ってるでしょ!!」
口にはできない、証明もできないけれど、ヨルグが不能だというのは完全なデタラメだ。
ヨルグは不能なんかじゃない。
わかっているのに、不名誉な噂を否定できないことがもどかしい。
そして私がヨルグの『行為』を知りえないのと同様に、テオだってヨルグの下半身事情について知るはずはないのだ。
「大体なんでテオにそんなことがわかるのよ!? いい加減な嘘を広めるのはやめなさいよね!」
「確かな情報なんだな~、これが」
テオの勝ち誇ったような笑みに眉根を寄せる。
「どういうことよ?」
「娼館街ナンバーワンのミランダっているだろ?」
「知るわけないでしょ」
半目でジトリと睨めば、テオは意に介した様子もなく話を続けた。
「まぁまぁ、ミランダっつって、最大手の高級娼館のなかでも一番人気の嬢がいるわけよ。これがもんのすごい美人でさ、胸もでっかくて色気ムンッムンで、一晩明かせばその後毎晩夢に見るってんで男なら誰もが憧れ――」
「で、その人がなんだっていうのよ」
「ああ、そうそう! そんなミランダのお誘いに、不能隊長だけは勃たなかったんだと。一、二年前だったっけか? よっぽどプライドが傷ついたんだろうなー、ミランダ本人が方々で言いふらしてたぜ? あの隊長は不能だー、っつって」
魅力たっぷりの女性に誘われて、『反応』の有無がわかる状況――?
「『不能』っつったら、コレが勃たないって意味に決まってんだろ」
立てた親指をクイクイッと上下する不思議なジェスチャーをじっと見つめ…………ようやく意味を理解して、勢いよくテオの側から飛びのいた。
「な……っ、なによそれ!! バカなこと言わないでよ! だってヨルグさんは――っ」
ハッと気付いて口をつぐむ。
ヨルグが毎晩ソレを屹立させているなんて、本人以外知るはずのない情報である。
「『ヨルグさんは』、なんだよ?」
「……なんでもない」
「まさか、あいつとヤってんのか?」
「だからそんな関係じゃないって言ってるでしょ!!」
口にはできない、証明もできないけれど、ヨルグが不能だというのは完全なデタラメだ。
ヨルグは不能なんかじゃない。
わかっているのに、不名誉な噂を否定できないことがもどかしい。
そして私がヨルグの『行為』を知りえないのと同様に、テオだってヨルグの下半身事情について知るはずはないのだ。
「大体なんでテオにそんなことがわかるのよ!? いい加減な嘘を広めるのはやめなさいよね!」
「確かな情報なんだな~、これが」
テオの勝ち誇ったような笑みに眉根を寄せる。
「どういうことよ?」
「娼館街ナンバーワンのミランダっているだろ?」
「知るわけないでしょ」
半目でジトリと睨めば、テオは意に介した様子もなく話を続けた。
「まぁまぁ、ミランダっつって、最大手の高級娼館のなかでも一番人気の嬢がいるわけよ。これがもんのすごい美人でさ、胸もでっかくて色気ムンッムンで、一晩明かせばその後毎晩夢に見るってんで男なら誰もが憧れ――」
「で、その人がなんだっていうのよ」
「ああ、そうそう! そんなミランダのお誘いに、不能隊長だけは勃たなかったんだと。一、二年前だったっけか? よっぽどプライドが傷ついたんだろうなー、ミランダ本人が方々で言いふらしてたぜ? あの隊長は不能だー、っつって」
魅力たっぷりの女性に誘われて、『反応』の有無がわかる状況――?
32
お気に入りに追加
1,022
あなたにおすすめの小説
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています
つゆり 花燈
恋愛
『一年後に死亡予定の嫌われ婚約者が、貴方の幸せのために出来る事~モブで悪女な私の最愛で最悪の婚約者~』が、タイトルを『余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています』に変更し、2月15日ノーチェブックス様より書籍化しました。
応援して下さった皆様にお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
お知らせ:
書籍化該当シーンや類似シーンが本編から削除されています。
書籍とweb版は設定が大きく異なります。ご了承ください。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
この物語は失った少女の魂を追い求め望まぬ永遠を手に入れた青年と、必ず18歳で死んでしまう少女の物語。
『リーベンデイルの生きた人形』 それは、奴隷制度のないこの国で、愛玩用に売買される美しい愛玩奴隷の隠語だ。
伯爵令嬢と王家の影、二つの顔を持つアリシティアは、幼い頃からリーベンデイルの生きた人形を追っていた。
この世界は、アリシティアが前世で読んだ物語と類似した世界で、アリシティアは番外編で名前が出た時点で死んでいるモブ中のモブ。
そんな彼女は、幼い頃、物語のヒーローの1人ルイスと出会う。だが、この先アリシティアが何もしなければ、ルイスは19歳で物語のヒロインであるお姫様を庇って死んでしまう。
そんなルイスの運命を変えたいと願ったアリシティアは、物語の中では名前すら出てこない、ルイスの死の間際ですら存在さえも思い出して貰えない彼の婚約者となり、ルイスの運命を変えようとする。だが、アリシティアは全てに失敗し、幼いルイスに嫌われ拒絶される。そしてルイスは、物語通りお姫様に恋をした。
それでも、1年後に死亡予定の彼女は、リーベンデイルの生きた人形を追いながら、物語のクライマックス、王太子暗殺事件とルイスの死を阻止するため、運命に抗おうとする。
だが彼女は知らぬ間に、物語の中に隠された、複雑に絡み合う真実へと近づいていく。
R18のシーンには、【R18】マークをつけています。
※マークは、改定前の作品から変更した部分です。
SSとして公開していたシーンを付け加えたり、意図をわかりやすく書き直しています。
頂いたコメントのネタバレ設定忘れがあります。お許しください。
※このお話は、2022年6月に公開した、『モブで悪女な私の最愛で最悪の婚約者』の改訂版です。
【R18】利害一致のお飾り婚だったので初夜をすっぽかしたら大変なことになった
春瀬湖子
恋愛
絵に描いたような美形一家の三女として生まれたリネアだったが、残念ながらちょっと地味。
本人としては何も気にしていないものの、美しすぎる姉弟が目立ちすぎていたせいで地味なリネアにも結婚の申込みが殺到……したと思いきや会えばお断りの嵐。
「もう誰でもいいから貰ってよぉ~!!」
なんてやさぐれていたある日、彼女のもとへ届いたのは幼い頃少しだけ遊んだことのあるロベルトからの結婚申込み!?
本当の私を知っているのに申込むならお飾りの政略結婚だわ! なんて思い込み初夜をすっぽかしたヒロインと、初恋をやっと実らせたつもりでいたのにすっぽかされたヒーローの溺愛がはじまって欲しいラブコメです。
【2023.11.28追記】
その後の二人のちょっとしたSSを番外編として追加しました!
※他サイトにも投稿しております。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【R-18】後宮に咲く黄金の薔薇
ゆきむら さり
恋愛
稚拙ながらもHOTランキング入りさせて頂けました🤗 5/24には16位を頂き、文才の乏しい私には驚くべき順位です!皆様、本当にありがとうございます🧡
〔あらすじ〕📝小国ながらも豊かなセレスティア王国で幸せに暮らしていた美しいオルラ王女。慈悲深く聡明な王女は国の宝。ーしかし、幸福な時は突如終わりを告げる。
強大なサイラス帝国のリカルド皇帝が、遂にセレスティア王国にまで侵攻し、一夜のうちに滅亡させてしまう。挙げ句、戦利品として美しいオルラ王女を帝国へと連れ去り、皇帝の後宮へと閉じ籠める。嘆くオルラ王女に、容赦のない仕打ちを与える無慈悲な皇帝。そしてオルラ王女だけを夜伽に召し上げる。
国を滅ぼされた哀れ王女と惨虐皇帝。果たして二人の未来はー。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。R作品。ハッピエン♥️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる