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11~20話

私の知らない話【中】

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 私の耳元に顔を寄せ、二段階ほど声のトーンを下げる。

「『不能』っつったら、コレがたないって意味に決まってんだろ」

 立てた親指をクイクイッと上下する不思議なジェスチャーをじっと見つめ…………ようやく意味を理解して、勢いよくテオの側から飛びのいた。


「な……っ、なによそれ!! バカなこと言わないでよ! だってヨルグさんは――っ」

 ハッと気付いて口をつぐむ。
 ヨルグが毎晩ソレを屹立させているなんて、本人以外知るはずのない情報である。

「『ヨルグさんは』、なんだよ?」

「……なんでもない」

「まさか、あいつとヤってんのか?」

「だからそんな関係じゃないって言ってるでしょ!!」

 口にはできない、証明もできないけれど、ヨルグが不能だというのは完全なデタラメだ。
 ヨルグは不能なんかじゃない。
 わかっているのに、不名誉な噂を否定できないことがもどかしい。

 そして私がヨルグの『行為』をのと同様に、テオだってヨルグの下半身事情について知るはずはないのだ。

「大体なんでテオにそんなことがわかるのよ!? いい加減な嘘を広めるのはやめなさいよね!」

「確かな情報なんだな~、これが」

 テオの勝ち誇ったような笑みに眉根を寄せる。

「どういうことよ?」

「娼館街ナンバーワンのミランダっているだろ?」

「知るわけないでしょ」

 半目でジトリと睨めば、テオは意に介した様子もなく話を続けた。

「まぁまぁ、ミランダっつって、最大手の高級娼館のなかでも一番人気の嬢がいるわけよ。これがもんのすごい美人でさ、胸もでっかくて色気ムンッムンで、一晩明かせばその後毎晩夢に見るってんで男なら誰もが憧れ――」

「で、その人がなんだっていうのよ」

「ああ、そうそう! そんなミランダのに、不能隊長だけは勃たなかったんだと。一、二年前だったっけか? よっぽどプライドが傷ついたんだろうなー、ミランダ本人が方々で言いふらしてたぜ? あの隊長は不能だー、っつって」

 魅力たっぷりの女性に誘われて、『反応』の有無がわかる状況――?
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