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1~10話
おそろいの……【中】
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それぞれに異なる香りの書かれた札が付けられていて、三十種類近くあるだろうか。
「随分と種類があるな」
「すごいですね。ドライフラワーとか、ドライフルーツが埋め込まれてるのまでありますよ」
私のあとを追ってきたヨルグとともに、色とりどりの石鹸を眺める。
パン屋に強い芳香はご法度で、香りものを身につけられない分、石鹸くらいは素敵な香りのものを使いたいと思っていたのだけれど。
「石鹸を買いたかったんですけど……、どれにしよう……」
ここまで種類があると迷いすぎて逆に選べない。
目についたものを手に取ってクンクンと嗅ぎ比べながら、ハッと名案が浮かんでヨルグを振り返った。
「ヨルグさんはどんな香りが好きですか!?」
ヨルグの好きな香りの石鹸を使えば、ヨルグ好みの香りをした『私』が出来上がるわけで。
ひいては『私』ごと好きになってもらえる可能性も、なきにしもあらずと言えなくもないわけで。
なんという名案!
「そうだな……。パンの香りがしているのなんか、いいと思う」
「ナルホド……」
棚ではなく私を見つめて話すヨルグに、ガックリと肩を落とす。
さすが、パン屋の常連さんだけあって素晴らしい回答だ。パンへの愛を感じる。
しかし残念ながら、こんなにたくさんの種類のなかにも『パンの香りの石鹸』はなさそうである。
「リゼットの好きな香りは?」
「私ですか? うーん……」
はちみつの香り……は、甘すぎるし。シトラスの香り……は、清涼感が強すぎるような。
手に取って嗅いでは戻し、嗅いでは戻し。
花の香りに的を絞っていくつか嗅ぎ比べていくと、白い花びらの散りばめられた一つで手が止まった。
「この香り……好きです」
実家の近くに群生していた、懐かしい花の香り。
付いている札を見れば、『カモミール』と書かれていた。
「カモミール。これにします!」
いつも買っている石鹸の二個分近い値段がするけれど、毎日頑張っている自分へのちょっとしたご褒美とでも思えばいい。
「随分と種類があるな」
「すごいですね。ドライフラワーとか、ドライフルーツが埋め込まれてるのまでありますよ」
私のあとを追ってきたヨルグとともに、色とりどりの石鹸を眺める。
パン屋に強い芳香はご法度で、香りものを身につけられない分、石鹸くらいは素敵な香りのものを使いたいと思っていたのだけれど。
「石鹸を買いたかったんですけど……、どれにしよう……」
ここまで種類があると迷いすぎて逆に選べない。
目についたものを手に取ってクンクンと嗅ぎ比べながら、ハッと名案が浮かんでヨルグを振り返った。
「ヨルグさんはどんな香りが好きですか!?」
ヨルグの好きな香りの石鹸を使えば、ヨルグ好みの香りをした『私』が出来上がるわけで。
ひいては『私』ごと好きになってもらえる可能性も、なきにしもあらずと言えなくもないわけで。
なんという名案!
「そうだな……。パンの香りがしているのなんか、いいと思う」
「ナルホド……」
棚ではなく私を見つめて話すヨルグに、ガックリと肩を落とす。
さすが、パン屋の常連さんだけあって素晴らしい回答だ。パンへの愛を感じる。
しかし残念ながら、こんなにたくさんの種類のなかにも『パンの香りの石鹸』はなさそうである。
「リゼットの好きな香りは?」
「私ですか? うーん……」
はちみつの香り……は、甘すぎるし。シトラスの香り……は、清涼感が強すぎるような。
手に取って嗅いでは戻し、嗅いでは戻し。
花の香りに的を絞っていくつか嗅ぎ比べていくと、白い花びらの散りばめられた一つで手が止まった。
「この香り……好きです」
実家の近くに群生していた、懐かしい花の香り。
付いている札を見れば、『カモミール』と書かれていた。
「カモミール。これにします!」
いつも買っている石鹸の二個分近い値段がするけれど、毎日頑張っている自分へのちょっとしたご褒美とでも思えばいい。
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