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1~10話

毎夜のおたのしみ【上】 ※

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 お風呂上がりの濡れた髪を拭きながら、窓の外を見る。

 通りを挟んで向かい側にあるこぢんまりとした一軒家の窓からは、家主の帰宅を知らせる部屋灯りが漏れていた。

「帰ってきてる!」

 急いで窓辺にしゃがみ込み、よくよく

 きっちりとカーテンの引かれた二階の一室。
 大きなベッドに空間のほとんどを占領されたその寝室には、小さな家に似合わぬ大柄な男の姿があった。

 厚い騎士服越しにもわかる筋肉。
 しょっちゅうドア枠に頭をぶつけている巨躯。
 黒い髪は襟足をすっきりと刈られ、しかし前髪は目元を覆い隠すほどに長く表情が読めない。

 窓側こちらを向いてベッドに座る男は、サイドチェストから大事そうに一枚の布切れを取り出した。

「間に合ったみたいね」

 窓枠から目元を覗かせ、込み上げる唾液をゴクリと飲んでその瞬間を待つ。

 男がためらいもなく下衣をくつろげると、布地の間から重そうな雄芯がボロンとまろび出た。

「——っ!」

 想い人の秘められた部分を目にして鼓動が跳ねる。

 誰にも見せない姿。
 誰もの姿。

 片手に布切れを握りしめたまま、男がもう一方の手を雄芯に添えてゆるくしごけば、芯はみるみるうちに屹立していく。

「おっきい……」

 感嘆の声が漏れてしまう。
 他を見たことがないから『普通』がどれくらいかなんてわからないけれど、それでもこれは大きい気がする。
 あの清廉で質実な騎士服の内側に、こんなにも大きく凶悪そうなモノを隠し持っているなんて。

 レースの付いた薄桃色の布切れに鼻先を押しつけながら、雄芯を握りしめる手が規則的に上下する。
 最初のうちは女性用下着かと思っていたけれど、どうやらあの布切れは女性物のハンカチらしい。
 持ち主はどんな女性だろうと巡らせかける詮無い思考に蓋をして、今は男の行為に集中する。

 むき出しの首筋がほのかに朱を帯びて、聞こえないはずの息遣いまでも徐々に荒くなっていくのを感じる。

「はぁ……っ、気持ち良さそ……」

 で繰り広げられる光景に、自分の呼吸までも乱されていく。

 こんなとき、女性はどうやって発散すればいいのだろう。
 男性の『やり方』ならわかるのに、女性には握ってしごけるような『芯』もない。

 お腹の奥に渦巻く熱を持て余し、男を見つめながら山なりに抱えた膝をもじもじと擦りあわせる。
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