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4c、ネモフィラの海と結界魔法
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ダーナンと連れだってドアを開ける。
家の中にも、外観と同じ真っ白な空間が広がっていた。
「……空が見えますね」
「ええ、天井だけは光が入るように透明なまま残したの。目には見えないけれど、ちゃんと風雨や外敵の侵入は防ぐから安心してちょうだい」
キッチンストーブに、煙突、腐食から守る結界でできた小さなパントリー。
ダイニングに立って祈りを捧げ、忘れていたテーブルと椅子も作りだす。
うろうろと室内を見回ったダーナンが、困り顔で声をかけてきた。
「あのー、寝室らしき部屋が一部屋しか見当たらないんですが……」
「『中の空気を守る結界』でダブルベッドを作ってみたの! なかなかいいでしょう?」
「いや、ベッドは立派なもんですが……数の問題が……」
「? 旅のあいだだって、ずっと一緒に寝てたじゃない?」
「それはシスティーナ様の演技のせいでしょう」
「ダンと一緒だと温かいんですもの。一緒に寝たいわ。……どうしてもダメ?」
手を組んでじっと見つめると、大きく顔を背けられてしまった。
「あ゙ぁーーー……まあ、細かいことは追い追い考えるとしましょう。今日はもう日が沈んじまう」
「そうね。周りにもいくつか結界を張ったら、今日は休みましょう」
「そんなに連続で結界魔法を使って大丈夫ですか? 魔力切れしてしまうんでは?」
心配そうにこちらを見つめるダーナンを安心させるため、自信たっぷりに胸を張ってみせる。
「これくらいの家なら、あと十軒は余裕で建てられるわ。それに結界は一度発動してしまえば、維持にはほとんど魔力がかからないの。だから大丈夫よ」
「くれぐれも無茶はしないでくださいよ?」
「ええ、任せてちょうだい!」
「…………」
馬が逃げてしまわないための結界と、一定サイズ以上の生き物の立ち入りを防ぐ結界で、大きく周囲を囲う。
湖の周りは、水を飲みに来る動物たちのため結界の範囲に含めずにおいた。
綺麗な水があり、道すがら採ったたくさんの木の実もある。
狩りをすればきっと肉も手に入るし、薪にする枝ならそこら中に落ちている。
「ねえダン、なかなか素敵な生活になりそうだと思わない?」
「ええ、……あなたのお側ならどこでも」
家の中にも、外観と同じ真っ白な空間が広がっていた。
「……空が見えますね」
「ええ、天井だけは光が入るように透明なまま残したの。目には見えないけれど、ちゃんと風雨や外敵の侵入は防ぐから安心してちょうだい」
キッチンストーブに、煙突、腐食から守る結界でできた小さなパントリー。
ダイニングに立って祈りを捧げ、忘れていたテーブルと椅子も作りだす。
うろうろと室内を見回ったダーナンが、困り顔で声をかけてきた。
「あのー、寝室らしき部屋が一部屋しか見当たらないんですが……」
「『中の空気を守る結界』でダブルベッドを作ってみたの! なかなかいいでしょう?」
「いや、ベッドは立派なもんですが……数の問題が……」
「? 旅のあいだだって、ずっと一緒に寝てたじゃない?」
「それはシスティーナ様の演技のせいでしょう」
「ダンと一緒だと温かいんですもの。一緒に寝たいわ。……どうしてもダメ?」
手を組んでじっと見つめると、大きく顔を背けられてしまった。
「あ゙ぁーーー……まあ、細かいことは追い追い考えるとしましょう。今日はもう日が沈んじまう」
「そうね。周りにもいくつか結界を張ったら、今日は休みましょう」
「そんなに連続で結界魔法を使って大丈夫ですか? 魔力切れしてしまうんでは?」
心配そうにこちらを見つめるダーナンを安心させるため、自信たっぷりに胸を張ってみせる。
「これくらいの家なら、あと十軒は余裕で建てられるわ。それに結界は一度発動してしまえば、維持にはほとんど魔力がかからないの。だから大丈夫よ」
「くれぐれも無茶はしないでくださいよ?」
「ええ、任せてちょうだい!」
「…………」
馬が逃げてしまわないための結界と、一定サイズ以上の生き物の立ち入りを防ぐ結界で、大きく周囲を囲う。
湖の周りは、水を飲みに来る動物たちのため結界の範囲に含めずにおいた。
綺麗な水があり、道すがら採ったたくさんの木の実もある。
狩りをすればきっと肉も手に入るし、薪にする枝ならそこら中に落ちている。
「ねえダン、なかなか素敵な生活になりそうだと思わない?」
「ええ、……あなたのお側ならどこでも」
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