ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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91~100話

97a、私は奥に秘められたものをわかっていない

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 式まで残り一ヶ月を切った。
 気候も春めいて、式の準備は着々と進んでく。

 ガルが多忙の間私一人で打ち合わせをしていたドレスは、せっかくならこのまま見せずに当日驚かせてはどうかということで、渋るガルを説き伏せてその後もガル不在の日中にフィッティングを重ねた。
 途中、靴や宝飾品についての打ち合わせにはガルも同席したけれど、完成したドレスや靴はメイド長がまとめてガルの目に触れない場所に保管してくれている。

 ウェディングドレスを着た私を見たら、ガルは驚いてくれるだろうか?
 少しでも、綺麗だと……思ってもらえるだろうか?

 当日を楽しみにする気持ちと、驚かせたいというちょっとした悪戯心を抱き、わくわくと式への期待が膨らんでいく。



「……よし! 出来たーっ!」

 枠から外した布をぴらりと掲げる。
 そこには手の平サイズで、この家の家紋が刺されていた。

 刺繍ハンカチといっても私の技術ではそんなに大層なものはできないので、その分余りある布を使ってハンカチを複数枚作ることにしたのだ。
 何枚もあれば日替わりで毎日持っていてもらえるんじゃないかという下心も、ちょっぴりある。

 シルクへの刺繍は初めてで、引きつれやすいやわらかな生地に苦戦して布も幾らか無駄にしてしまったけれど、どうにかこうして形になった。

 ガルのイニシャルや庭の植物をモチーフに、刺繍を施した布が五枚。
 後は切りっぱなしになっている五枚の布すべての縁をぐるりとまつっていけば、ハンカチの完成だ。
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