ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

８１～９０話

８９c、私は怪我の原因をわかっていない

　深夜２時を過ぎた頃。
　カチャッと扉の開かれる微かな音に、まどろみに揺蕩たゆたっていた身体がビクッと大袈裟に跳ねた。

「……マヤ？　まだ起きていたのか？」

　ガルがソファに私を見つけ、目を見開く。

「ん、ふゎあぁ……。ガルさま、おかえりなさい……」

「ああ、ただいま」

　ガルに向けて腕を伸ばせば、嬉しそうに抱き上げられて軽い口付けが落ちる。
　私は眠気で重い頭をガルの首筋に凭れかけた。

「風呂はもう入ったか？」

「ん……」

　首筋におでこを擦り付けるように緩慢な動作で頷くと、再びゆるゆると船を漕ぎだす。
　ガルはよしよしと私の頭を撫で、寝室に歩を進めるとそっとベッドに寝かせてくれた。

「俺は風呂に行ってくる。先に眠っていていいぞ」

　寝そべる私の前髪をさらりと横に流し、剥き出しの額にちゅっと口付ける。

　瞼は閉じてしまったけれど夢うつつの状態で必死に睡魔と戦っていれば、しばらくしてぐっとマットレスが押し下がり、ガルが隣に寝そべった気配がした。

　起こさないよう慎重に、風呂上がりの温かな腕がふわりと私を包み込む。
　すりすりと胸に頬を寄せながら、私もようやくほっと息を吐いて眠りに落ちた。