ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

８１～９０話

８１c、私はご主人様の家族をわかっていない

誰も彼もこちらを見てさえくれないのに、悪意ある言葉だけは耳に入る。
母親を苦しめた元凶だと母方の親戚には距離を置かれ、母親の不義理を疑う父方の親戚からは縁を切られているも同然なこと。


ガルはどれほど長い間、独りで孤独に耐えてきたのだろうか。

「……ガル様……」

逞しい首筋に腕を回し、抱き寄せる。
幼き日のガルも、こうして抱きしめてあげられればいいのに。

「私はずっと、側にいますからね」

「ああ……」

優しい腕が、しっかりと私を抱きしめ返す。

過去を変えられないのなら、これからの未来が愛に満ち溢あふれたものになるといい。
ガルへの愛ならば、私がいくらでも注げるのだから。


「遅くなってしまったが、式の前にマヤの両親にも挨拶しておきたい。今度一緒に墓参りに行かせてくれ」

「！」

ああ、そうだ。まだ伝えていないことがあった。
いつか言わなければいけないとは思いつつ、不安で口にできなかったこと。

ガルもすべて話してくれたのだ。
そろそろちゃんと、話しておかなくては。

「ガル様…………私の話も、聞いてくれますか？」

「ああ、勿論」

首筋に顔を埋めたまま小さく問いかける。
私の深刻な様子に、ガルも私の髪を弄ぶ手を止めて神妙に頷いた。