233 / 486
51~60話
54a、ご主人様は私の想いをわかっていなかった
しおりを挟む
これは賭けだった。
そんなことをしそうには見えなくとも、愛玩奴隷から逃れたいがために口八丁俺を欺こうとしている可能性もゼロではない。
契約の首輪を外した途端、これ幸いと逃げ出すのかもしれない。
それでも賭けてみたかった。
俺と共にいたいと言ってくれたマヤの言葉に。
もし騙されることになるのだとしても、最後のその瞬間まで、幸せな嘘を信じていたかった。
とっぷりと日も暮れた頃、急く気持ちを抱えて屋敷の階段を駆け上がる。
バタンッ
「マヤっ」
「ガル様! おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
愛しい愛しい存在を腕に抱き上げ、口付けを一つ。
ソファへと歩を進めれば、ローテーブルの上に並んだ皿が目についた。
「ん? マヤはまだ夕食を食べてないのか」
「あ、えっと、ガル様と……」
マヤがもじもじと言い淀む。
「俺を待っていてくれたのか? ああ、本当に……」
どこまで愛を募らせればいいんだ。
俺抜きで食事を終えられることなど、とうに慣れていたはずなのに。
俺の帰りを待っていてくれる相手のいることが、こんなにも嬉しいだなんて。
抑えきれない愛しさのまま再びマヤに口付けを落とす。
「マヤ、腹が空いている所悪いが、先に大事な話を聞いてくれるか?」
懐にしまった小さな革袋がそわそわと落ち着かない気持ちにさせる。
このままでは食事など手につくはずもなかった。
そんなことをしそうには見えなくとも、愛玩奴隷から逃れたいがために口八丁俺を欺こうとしている可能性もゼロではない。
契約の首輪を外した途端、これ幸いと逃げ出すのかもしれない。
それでも賭けてみたかった。
俺と共にいたいと言ってくれたマヤの言葉に。
もし騙されることになるのだとしても、最後のその瞬間まで、幸せな嘘を信じていたかった。
とっぷりと日も暮れた頃、急く気持ちを抱えて屋敷の階段を駆け上がる。
バタンッ
「マヤっ」
「ガル様! おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
愛しい愛しい存在を腕に抱き上げ、口付けを一つ。
ソファへと歩を進めれば、ローテーブルの上に並んだ皿が目についた。
「ん? マヤはまだ夕食を食べてないのか」
「あ、えっと、ガル様と……」
マヤがもじもじと言い淀む。
「俺を待っていてくれたのか? ああ、本当に……」
どこまで愛を募らせればいいんだ。
俺抜きで食事を終えられることなど、とうに慣れていたはずなのに。
俺の帰りを待っていてくれる相手のいることが、こんなにも嬉しいだなんて。
抑えきれない愛しさのまま再びマヤに口付けを落とす。
「マヤ、腹が空いている所悪いが、先に大事な話を聞いてくれるか?」
懐にしまった小さな革袋がそわそわと落ち着かない気持ちにさせる。
このままでは食事など手につくはずもなかった。
11
お気に入りに追加
3,300
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる