王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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その後、授業が始まるという事でレイラはユーリから離れられた。 
だが、ユーリは別れ際。「……逃がさないからね?」とレイラに言い残し、自分の席へと戻って行った。
ユーリのそんな言葉を聞き、レイラは心の中で焦っていた。

(どうしよう、ユーリ様にバレてしまったわ……。)

授業中なのに、全然内容が頭に入ってこない。
本当の事を言ってしまったら、ユーリに変な子だと思われないだろうか。嫌われないだろうか。変な目で見られるんじゃないだろうか。と、そんな心配ばかりしてしまう。
前までは、自分自身婚約破棄した後。
のんびりと暮らせれる様に、ユーリとあまり関わらないでおこうと思っていた。だが、いつの間にかレイラはユーリに嫌われたり離れたりするのが嫌になっていた。

(物語と同じなら、ヒロインであるガーネット様とユーリ様が結ばれる……それが嫌だなんて……。)

そんな事を思っていても、どんどんと時間は過ぎていく……。
授業が終わり、ユーリにバレないようにこっそりと帰ろうとレイラは考えた。

(ヴィオラが待っている門の所まで走ればいいんだわ!)

今、ユーリと話し合いをしてしまったらこの気持ちをぶつけそうになる。

授業が終わったのか、生徒達が立ち上がる。
レイラがこっそりとユーリの方を見ると、生徒達に囲まれていた。

(今しかないわ……。)

ユーリが周りに居る令息や令嬢と話している間に、レイラはユーリに見つからない様に後ろから教室を出る。
端から見れば、レイラの動きは不審だった。
だが、そんな事も気にせずにユーリから離れる事だけをレイラは考えていた。

「レイラ様~!!」

ガーネットが、レイラの方に駆け寄ってくる。

「ガ、ガーネット様……。」

「レイラ様、一緒に帰りましょ?」

「いえ、ごめんなさい? 今日は、急いでいて……。」

「そうなんですか? ……じゃぁ、また一緒に帰りましょうね!」

レイラはそう言うと、ガーネットと別れた。
後ろでは、レイラに向かってガーネットが大きく両手を振りながらにこやかに笑っている。

レイラは、すれ違い生徒達に挨拶しながらも早歩きをし、ヴィオラが待つ門の所に向かう。
いつも、ヴィオラが待っていてくれている門が見えてきた。

ヴィオラは、誰かと話しているみたいだった。
相手は木に隠れていてこちらからは見えない。

(誰かしら? ヴィオラのお友達?)

友達だったら話の邪魔だろうかと、レイラは思ったが早く此処から離れないとユーリが追い付いてしまう。
そう思うと、レイラの歩みは早まった。

ヴィオラの元へと一歩。また一歩と近づいていく。
レイラがヴィオラに声を掛けようとしたが、ヴィオラの隣に居た人を見てレイラは固まった。

(何で……? 何で、ユーリ様が居るの? 先ほどまで、教室に居たはずじゃ?)

レイラは混乱していた。
さっきまで、教室に居たであろうユーリが何故かヴィオラの隣に立っているのだ。

二人は、驚愕したような表情で立ち尽くしているレイラに気づく。
ヴィオラはレイラが固まっているのを見て、訝しげに首を傾げている。
ユーリは、レイラを見ながら目を細めて微笑んでいるだけだった。

「お嬢様? そんな所で何をしているんですか?」

「……何でも無いわ。さぁ、ヴィオラ帰りましょう。ユーリ様、お先に失礼致します」

「えっ? 今日は、殿下と一緒に帰られるんじゃないんですか?」

「えっ!?」

「そうだよ、レイラ。約束したのに忘れたのかい?」

レイラがヴィオラの言葉に驚いていると、ユーリはレイラの腰に手を当て自分の方に引き寄せた。

ユーリは、レイラが逃げることを見越して先回りをしていたのだ。
レイラはそんな事も知らず、いつの間にそんな話になっているのかと混乱していた。

「では、お嬢様。お先に失礼致します」

「えっ!? ヴィオラは一緒に来ないの?」

「はい。殿下の従者の方も居ますし、お城でしたら警備もしっかりしているので大丈夫だと思います。それに、私は仕事がまだ残っているので……。」

(……私、いつの間にユーリ様の家でもある。お城に向かう事になったの?)

ヴィオラは二人に頭を下げると、そそくさと帰っていってしまった。

「さぁ、レイラ。行こうか」

「あ、あの……ユーリ様!!」


「レイラ。これまで僕はレイラが話してくれるのを待っていたんだよ? でも、僕から離れる様なら待つのはやめるよ?」

ユーリの目の奥が笑っていない。
レイラはユーリから一歩離れる。

ユーリはレイラを逃がさまいと、一歩。また一歩近づいてくる。

(……どうしよう。ユーリ様が怖い)

オロオロした表情をしているレイラの方に、ユーリは一気に近づいていく。
レイラの側まで一気に近づくと、レイラの腰に手を回し。自分の方に引き寄せる。

「……ユ、ユーリ様」

「レイラ、行こうか」

ユーリはレイラの手を引きながら、ユーリが乗って来た馬車へと誘う。
馬車の前では、ユーリの従者が立っている。

従者の人は、二人が近づいて来たのを確認すると馬車の扉を開ける。

「レイラ乗って?」

(もう、逃げられない……。覚悟を決めないといけなかもしれない。)

レイラは覚悟を決め、ユーリに導かれるまま馬車へと乗り込んだ。

    
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