王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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「ユーリ……様?」

耳元で、ユーリの声が聞こえ。後ろから、抱きしめてくれている。

「レイラ、ごめんね。怖かっただろう?  ……さて、どういう事か説明してもらおうか? 大勢で、レイラを取り囲んで何をしていたのかな?」

「ちがっ……違うのです! 殿下!!」

「私達は只、お話をしていただけで……」

「僕は、言い訳をしろとは言っていないよ?」

ユーリの声がどんどんと、低くなっていく。後ろを振り向かなくても、ユーリが怒っているとレイラは分かった。

「殿下、申し訳ございません!」

「お許しを!!」

令嬢達は、必死に頭をユーリに下げる。

「……ねぇ、何で僕に謝っているんだい? 君たちが謝らないといけないのは、レイラにじゃないのかい? 話にならないな。さぁ、レイラ行こうか」

ユーリはそう言うと、レイラの背中に手を当てて歩きだした。令嬢達が話そうとしても、聞く耳を持たなかった。
一人の令嬢以外は、ユーリの行動を見て。真っ青な顔をしながら震えている。令嬢達はやっと、気づいた。ユーリが婚約者であるレイラを溺愛している噂は、本当なんだと……。
だが、気づいた時には遅かった。
ユーリの婚約者を……それも、公爵令嬢を取り囲んでいたのだ。
王族や公爵家から、自分達の家に今日の事について抗議があるかもしれない。
そう思うと、震えるしかなかったのだ。
只。レイラを責めていた令嬢は、レイラとユーリが立ち去るのを睨み付けながら見ていた。
その事を、ユーリは気づいていた。

「……クロウ。あの令嬢を見張っとく様に言っといて」

「御意」

この国の騎士団とは別に、ユーリ自身が集めた諜報員が居る。ユーリの命令であれば、暗殺や他国の情報などを盗んでくる者達が……。

「さぁ、レイラ。向こうにお菓子を用意しているんだ。行こうか」

「はい。ユーリ様」

ユーリに連れてこられたのは、生徒達が憩いの場として使っている所だった。ちらほらと、令嬢や令息が居る。
だが、皆がユーリとレイラに夢中だ。
それだけ、二人は憧れの的でもあり。有名なのだ。

レイラが座りやすいように、ユーリが椅子を引く。その動作だけでも、周りにいた人達の視線が集まる。

「ユーリ様ありがとうございます」

「フフッ。どういたしまして。レイラが好きなお菓子を用意したよ?」

テーブルの上にのっていたお菓子は、レイラが好きな焼き菓子やフルーツがたっぷりとのっているケーキだった。

「まぁ! 美味しそう!!」

(どれを食べようか悩んでしまうわ!)

キラキラとした瞳でお菓子を見ているレイラを、ユーリは優しい笑みを浮かべながら見ていた。

「ん~! 美味しいですわ!」

「喜んでもらって良かった。全部食べていいからね?」

ユーリは、紅茶が入っているカップを持ちながら微笑んだ。

(用意されていたフォークは一つしかなかった。ユーリ様って、甘い物苦手なのかしら? でも、このケーキあまり甘くなくて食べやすいし……)


「……ユーリ様。」

「ん? 何だい?」

レイラはユーリを呼ぶと、ケーキを刺していたフォークをユーリに突き出す。

「あーんですわ?」

コテッと、首を傾げながらレイラはそう言う。
ユーリはレイラを見て。少し顔が赤くなりながらも、レイラが差し出したケーキを食べる。

「……。」

「美味しいですか?」

「あ、あぁ……ありがとう」

「はい!」

(こんなに美味しいんだから、ユーリ様が食べないなんて勿体ないわ!)

「レイラ、フォーク貸してくれるかい?」

「はい。」

(……? ユーリ様も食べたくなったのかしら?)

ユーリはレイラからフォークを貰うと、ケーキを一口大に切るとケーキを刺してレイラに向けた。 

「はい、レイラ。」

「えっ!? あ、ありがとうございます」

レイラはそう言うと、ユーリからフォークを受け取ろうとするがユーリは渡してくれない。 

「はい、あーん」

「……。」

ユーリにそう言われ、渋々差し出されたケーキを食べる。

(恥ずかしい……やる側だったら気にならなかったけれど、差し出された物を食べるの恥ずかしいわ。)

レイラが顔を赤くしながら食べているのを見て、ユーリは満足そうにまたケーキを刺して差し出した。

「えっ!? ユ、ユーリ様、自分で食べれますわ!?」

「……僕がしたいんだけど、ダメ?」

ユーリは、悲しそうな顔をしながらレイラを見る。

「うっ……分かりましたわ」

「本当? ありがとう、レイラ。じゃぁ、はい。あーん」

レイラは、反対することを諦め。差し出されたケーキを食べる。
少しすると、ユーリが差し出したケーキを食べるのに慣れて来ていた。

「あー!! 殿下狡いです!!」

後ろから大きな声が聞こえ。振り向くと、ガーネットが此方に向かってきていた。
ガーネットは、戻ってこないレイラを心配して探しに来たのだ。

「チッ……ここまでか」

「ユ、ユーリ様?」

「ん? なんだい?」

(気のせいかしら? 先程、ユーリ様から舌打ちが聞こえた様な……)

あの後、ガーネットのお願いで何故かレイラがガーネットにケーキを食べさせる事になってしまったのだった。
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