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第一章

リーオ・フレリア

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長い金の髪を後ろで一つにまとめ。水色の瞳を細め微笑みながら、ルミエールを見ている女性はリーオ・フレリア。

「リーオ!!」

「お久しぶりでございます。リゼリア様、お会いしたかった……。貴女様の今の名を、私に教えて下さいませ?」

「ルミエール……ルミエール・リフェアよ」

「ルミエール様……また貴女様の名を呼べて、リーオは幸せでございます」

リーオはそう言うと、深々と頭を下げた。
リゼリアの頃からそうだった、人族であるリゼリアを馬鹿になんてせずリーオは慕ってくれていた。
諜報部隊と呼ばれる所に居たリーオは、リゼリアがブランの婚約者になってからは、侍女として就いてくれていた。

リゼリアがブランの噂を聞いたパーティーの少し前に、リーオのご両親が倒れたから。リーオは実家に帰っていた。だから、死ぬ直前リーオには会えなかったのだ。

「リーオ。皇帝である私の扱いが雑じゃないか?」

そう言いながら、近くにいた騎士にモブリアンを連れていく様に指示をする。

「何を言ってらっしゃるんですか? 私が、皇帝であるブラン様にそんな事するわけないじゃないですか。リゼリア様を死なせ、私の愛する夫に後始末を全て任せ。眠りについていたブラン様になんかに、そんな事するわけないじゃないですか。」

(これは、怒っているわね。)

リーオは、夫であるネス・フレリアとは凄くラブラブなのだ。ブランやネスの事も小さい頃から知っているらしい。

「フフッ。リーオとブランは、本当に仲良しね~」

「「違う!! (います!!)」」

前と全然変わらない。いつも二人が言い争って、リゼリアとネスは呆れながらも見ているのだ。

「ルミエール様、ブラン様より聞きました。今すぐには戻ってこられないんですね……。」
 
「リーオ。私は、もう一度ブランとやり直したいの。それも一から……。だから、私は今普通の民よ? だから、様付けは駄目よ?」

「……分かりました。ルミエールさん」

ルミエールがそう言うと、リーオは渋々納得してくれた。

「ブラン様!! 早く惚れるようなかっこいいことをしなさい!」

「格好いい事って……無茶を言うな!」

「フフッ。ブランは、いつも格好いいわよ?」

ルミエールの事を常に思い、助けてくれる人なんだから。

「ルミエール!!」

ブランは、いきなり抱きついてきた。

「フフッ。ブラン、苦しいわ?」

「ルミエールが可愛すぎるのが悪い……。」 

(……? 私、可愛い事なんか言ったかしら?)

首を傾げていると、リーオが近づいてきた。

「ブラン様。ルミエールさんから離れなさい」

リーオは、ブランを引き剥がすと。ルミエールの前に立った。

「まだ結婚もしていない異性と抱き合わない! 城なんかで抱き合ったら、誰が見ているか分からないですよ! 抱き合うんだったら、部屋とかバレない所でしなさい!!」

「そうだな。次からそうする。」

ブランは納得したみたいだ。

「……リーオ。バレない所でも、婚約者や結婚していないんだから駄目だぞ?」

後ろからそんな声が聞こえた。

「あら、ネスにシル」

「 ルミエールさん来られたんですね。」

「えぇ。」

後ろを振り向くと、ネスとシルが此方に向かってきていた。

「ネス様!!」

「リーオ。良かったですね、ルミエールさんと会えて」

リーオがネスを見つけて抱きつく。そんなリーオを、ネスは受け止める。ネスの前では、いつもの格好いいリーオではないのだ。

「はい! ネス様が言って下さなければ、この器の小さい男に私はずっと知らされなかったでしょう……。」

「おい。私は器の小さい男ではないぞ?」

「あら! 何を言ってらっしゃいますかブラン様。リゼリア様と私が、仲良かったのを羨ましそうに見ていたのは知っていますよ? それに嫉妬して、直前まで言わなかったつもりでしょ?」

「うぐっ……。」

「ブラン、そうなの?」

確かに、リーオとは友達の様に接し。姉の様に慕っていた。

「ルミエール、違うよ!? ちゃんと落ち着いたら、言おうと思っていたんだ……。」

ブランは膝をつくと、心配そうな目で下から見上げてきた。

「フフッ。大丈夫よ? ちゃんと、ブランの事は信じているわ? 只、ブランがリーオと私が仲良かったのを嫉妬していたのが嬉しくて……。」

(ちゃんと私を見て、愛してくれていると実感が出来る。そう思うと、凄く嬉しい。)

ブランも嬉しそうに、ルミエールを抱き締めてくれる。

「絶対、私達の事を忘れていそうですね」

「ルミエールさんに抱きつくなんて……ブラン様、そこを変わりなさい!」

「こらこら、リーオ。邪魔しては駄目ですよ?」

後ろから、シルとリーオ。ネスの声が聞こえ、我に返る。ネスは、リーオが此方に来ようとしている所を止めていた。

「ブ、ブラン離して頂戴? 恥ずかしいわ」

「大丈夫。前世でも、よく抱き締めていたんだよ?」

何が大丈夫なのか分からないわ!
離れようとブランを押すが、びくともしない。

「フフッ。じゃぁ、抱き締めるのはこの辺にしてそろそろお茶にしようか?」

「……意地悪だわ」

ルミエールが必死に離れようとしているのを、ブランは微笑みながら見ていた。

(でも、ブランから離れようと言われたらそれもそれで寂しい……。)

「……ブラン様!! お茶のご用意が出来ましたので、席へ!!」

「はいはい。リーオが、怒りそうだからまた後からだね。ルミエール」

「なっ!! 後からも、しませんからね!!」

恥ずかしくなりながらも、ルミエールはブランにそう言うと。そそくさとテーブルの方へと歩いていく。
テーブルでは、リーオがお菓子の用意もしていた。

「さぁ、お好きだったお菓子もご用意させて頂きました!」

「わぁ~! ありがとう! リーオ」

「リーオは、ルミエールさんのその笑顔が見れて幸せです。」

リーオはそう言うと、嬉しそうに笑った。

「リーオ、貴女も一緒に座って?」

「はい。ルミエールさんの仰せのままに」

リーオは、頭を少し下げるとネスの隣に座った。

「ねぇ、何で私のお茶の用意が無いんだい?」

「えっ!? ブラン様、いるのですか?」

「リーオ!! 酷いぞ!」

「ふん。ルミエールさんを一人占めしていた罰です」

リーオとブランの言い合いはいつもの事なので、気にせずネスと喋る。


「本当に仲良しね~」

「まぁ、小さい頃から知っていますからね」

「ねぇねぇ、リーオって小さい頃からネスが好きだったの?」

リーオは、ネスと他の人達との差が激しすぎるのだ。

「はい! ネス様は、昔から聡明で。かっこよくて、優しくて……私の好きな方ですわ!」

「……リーオ。その辺にしておくれ。」

リーオの話を聞き、ネスは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

(……ああやって、気持ちを素直に伝えれるのが羨ましい。)

二人を見ながら、そんな事を考えていた。
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