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11.美味しい物は正義

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その日、ミオはいつもより早く起きてしまい準備を済ますと、シルベットを探そうと廊下へ出た。
廊下へ出ると、少し先の方で二人の侍女が立ち話をしていた。


話によると、クラウド達が話していた街で子供達が居なくなるという事件はクラウド自身が解決したらしい。
ミオが迷子になっている際、クラウドはしらみ潰しに街を捜索をしていたらしい。その途中で、街から少し離れた所に拐われていた子供達が居たそうだ。その場所には子供達を拐った者も居たそうだが、その時ミオを見つけられないという焦りと。子供達を拐った人達への怒りとで、虫の居所が悪かったクラウドに一撃でヤられたみたいだ……。
その後どうなったかは、侍女達の話を立ち聞きしていたミオをシルベットが連れて行ってしまったので詳しくは分からなかった。

(でも、拐われてた子供達が見つかって良かった~。さすが、クラウド様!!)

「ミオ。人の話を立ち聞きなんて駄目ですよ?」

「あい。ごめんなちゃい」

シルベットに注意され、ミオは直ぐ様謝る。

(確かに、立ち聞きは駄目だよね……。やっぱり、堂々と聞かないとね!!)

「ミオ。今貴女が考えていることも、本当は駄目な事ですからね?」

シルベットにそんなツッコミをされつつ。
ミオは、シルベットに手を引かれながらクラウドが待つ部屋へと着いた。

「おはよう、ミオ。よく眠れたかい?」

「あい! クラウドしゃまおはようごじゃいまちゅ」

「さぁ、食事にしましょうか」

「あい!」

シルベットに促され、ミオは椅子に座らされる。ミオの身長では、椅子に座るとテーブルが高すぎるので椅子の上にはクッションが置かれている。
このクッションは、クラウドがミオを連れ帰った後にすぐ用意された。

クラウドとミオが席に着くと、テーブルの上に料理が運ばれてくる。
パンにスープの食欲をそそる匂いが鼻を擽る。

(この世界に来て嬉しいのは、日本と変わらないほど食事が美味しい事だな~)

パンも手でちぎれる程柔らかい。
スープや料理の味も、濃くも薄くもなくほどよい味加減だった。

「……ミオ、美味しいか?」

「あい! おいちー」

食べるのに必死だったミオは、チラリと前を見るとクラウドが此方を目を細めながら見ていた。
ミオが美味しいと言った瞬間、扉の向こうからは歓喜の声が聞こえてきた。その声を聞いたシルベットは、呆れた様な表情をすると扉の向こうに出ていってしまった。
それを不思議そうに見ていたミオだったが、食欲には勝てなかったのか食事を再開した。

(そう言えば、あんまり見たことないけれどお菓子とかってあるのかな? )

街に行った時、果物に飴をかけたチーゴ飴を見たがそれ以外のお菓子を見ていなかったのだ。

「ミオは、食事が終わった後は何をするんだ?」

クラウドにそう聞かれ、何をすれば良いのか分からなかったミオはシルベットの方を見る。

「そうですね。ミオ、何かしたいことはありますか?」

「んーっとね。おかちちゅくりたい!」

「「お菓子?」」

ミオの言葉を聞き、二人は驚いた様な表情を見せた。

「ミオ、お菓子を作りたいのですか?」

「あい!」

「……でも、火を使うのだろう? 子供に料理は危ないぞ」

「クラウドしゃまにおかちちゅくりたいの……めっ?」

ミオは、自分を拾ってくれたクラウドに感謝の意味を込めてお菓子をプレゼントしたかった。

(……やっぱり、子供の姿だから駄目かな? 日本に居た時によくお菓子作りしていたから、久々にしたいなって思ったんだけど……。)

「……分かった。だが、火を使ったり危ない所は違う者に任せるように」

「あい! クラウドしゃまとシルベットしゃんにおいちーのちゅくるね!」

クラウドから了承を貰えるとは思わず、ミオは嬉しくなった。

「そうか。楽しみにしているぞ」

「楽しみにしていますね?」

「あい!」

食事を終わり次第、シルベットさんが厨房に案内してくれることになった。

「仕事があるので、ずっとは居れませんがちゃんと言うことを聞くのですよ? 危ない事はしてはいけませんからね?」

「あい! おいちーおかちちゅくるね!」

シルベットは母親の様に、何回もミオに言い聞かせてくる。

(シルベットさんは心配性だな~。そんな危険な事はしないから大丈夫なのに。)

ミオは、日本に居た頃からお菓子作りをするのが好きだった。この世界の料理は凄く美味しいが、あまり甘い物がないこの世界。
甘い物が無性に食べたくなったミオは、日本の時によく作っていたプリンを作る事にしたのだ。


クラウドとシルベットに手を振りながら別れると、ミオは厨房に行く為に歩きだす。
クラウドから貰ったぬいぐるみは、邪魔になるだろうから置いてこようと思っていたが、クラウド達が必ず持っていく様に言われた為、ミオの腕にはぬいぐるみが抱き抱えられている。

(ぬいぐるみ抱きながらだと歩きにくい……。前はぬいぐるみが歩いた事があったけど、また自分で歩いてくれたり……しないよね~)

ミオがそう思ったのが通じたのか、ぬいぐるみはいきなり光を放つとミオの腕から抜け出し床に立った。
ウサギのぬいぐるみが立つと、ミオの腰位まで高さがある。

「おぉ~!! うさちゃん、いっちょにおかちちゅくりにいこ!」

ミオは、ぬいぐるみと手を繋いで厨房を目指す事にした。
ぬいぐるみが意思を持って動いている事に、すれ違う人達は驚愕した様な表情をしていたが、ぬいぐるみから感じるクラウドの魔力を感じとり皆が微笑ましい表情でミオの事を見ていたなんてミオは気づく事はなかった……。

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