転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!

つなかん

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7章 王家の醜聞

祝福と呪い

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「マジ、なーんも楽しくねー」
「珍しいわね、意見が一致するなんて」
 何度も見たジャケ写にそっくりだった。セミロングの赤毛に緑の目。白いウェディングドレス。クロエ・バクスターがにこやかに微笑んでいる。とても幸せそうに見える。さすがヒロイン、オタクたちの理想が詰まった存在だ。
 会場中から拍手の音が鳴り響く。隣に座っているのがモードお兄様でなければ、私も同じくらい笑えたし、同じくらい祝福できたと思う。でも、現実はそうじゃない。
 隣の席のアーティが鼻を鳴らすのがわかった。私と同じくらい不満を抱いている。机に肘をついて、気だるげに、義務的に数回だけ手を叩いた。
 テーブルのワイングラスに手を伸ばし、まるで中身が水なんじゃないかと錯覚するほどのスピードで飲み干した。
「げほ……ぉえ゛、んんっ゛」
「飲みすぎ」
 アーティは激しく咳き込んだ。幸い、周囲はパイプオルガンの音楽が鳴っていて変に注目を集めることにはならなかった。アーティがゴホゴホ咳をする度に口から血が溢れ出た。口を押さえた手の平や、半ズボンで丸出しの膝、一張羅の気取ったスーツの襟なんかに鮮血が飛び散る。
「最近多くない?」
「……あぁ」
 アーティは息も絶え絶えに返事をした。魔法を使えば、服に飛び散った血はどうにかなるだろう。けれどこの症状は抑えようがない。
 ブラッドリー家の成長を止める魔法の弊害だという説が、最も有力とされる原因だった。まぁ、原因がわかったところでこの風習は改善されることがなさそうだ。
 エドワードとルドルフも、きっとこの呪い副作用に苦しめられているに違いない。殺人犯として二人は裁判の真っ最中で、毎朝新聞の一面を飾っていた。
 アーティは口を押さえたまま席を立った。私も、そう遠くないうちにああなる。壇上のモードお兄様に視線をやった。ブラッドリー家には相応しくない眩いばかりの金髪が証明に照らされて輝いた。推しが健やかであればオタクは幸せ。うん、そうだよね。絶対そう。
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