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四章『トマト編』
第330話 トランテス王立学校
しおりを挟む「勇者様はおられるかーーッ!!」
俺が覚悟を決めたことろで、大声が聞こえる。冒険者ギルドの外からだ。
2階の窓から下を見ているアイナが言った。
「バーガー様、ギルドの入口前に誰かいます」
「どれ。本当だ。あの銀の鎧は聖騎士だな」
「行ってみましょう」
俺たちがギルドを出ると、高齢だがガッチリとした、スキンヘッドで長い白ひげを蓄えた聖騎士が立っている。
「俺が勇者だ!」
「おお!! お主が勇者様か! 探しましたぞ!」
このじぃさん、めちゃくちゃ声がでかいな。
「何のようだ?」
「学校の編入手続きが終わったので報告に参った次第ですぞ!」
おー、手際がいいな。これで俺も学生か。
「では、行きましょうぞ」
「え、今からなのか?」
「善は急げですぞ! 勇者様!」
俺はアイナの顔を見る。「学校かぁ」と目を輝かせている。
「よし、行こう」
小龍(ワイバーン)は後回しだ。
あんなの具材さえ揃っていればいつでも倒せる。
アイナが学校に行きたがっている。今はそれが大切なんだ。
「おっと、名乗りが遅れて申し訳ない。私は聖騎士大隊長の一人。オショーと申します」
オショーはハンバーガーの俺や子供のアイナに対しても、とても綺麗な礼をする。アイナもビシッとしている。俺も顔だけだが引き締めている。
って聖騎士大隊長ねぇ、前にあった聖騎士隊長よりも偉いってことか。
「知ってると思うが、俺はバーガー・グリルガード。そして、この子が『相棒』のアイナ・フォルシウスだ」
「相棒だなんて、足を引っ張ってばかりです」
「うむ! 良き面構えですぞ。お二人共! ムフォッフォッフォ!!」
大通りを進んでいくと中央に大きな時計台のような建造物が見えてくる。
近づくに比例して周りの行き交う人々の年齢も若くなっていく。
「あれこそが王国が誇る名門。トランテス王立学校です!」
ほう、やはりあれが学校か、王宮に引けを取らない煌びやかさだ。
「わぁ、綺麗」
アイナが学校を見て見とれている。俺はそんなアイナに見とれている。
「私の案内はここまでです。中に進んでいくと、案内人がいますので何なりと聞いてください」
学校に案内させるためだけに大隊長を使うなよと、俺はツッコミを入れようとしたが、ぐっと我慢する。それよりもアイナを見つめる方の優先度が遥かに高い。
「さぁ! バーガー様行きましょう!」
アイナは元気に歩き出す。そして校門をくぐろうとする。
「待てッ!!」
「え!?」
突然の俺の大声に、アイナは驚いた声を上げる。
「バーガー様、どうしたんですか?」
「・・・・・・いや、ちょっと待ってくれ・・・・・・」
アイナは困った顔をしている。
いや、俺も心底困惑している。
この感情は・・・・・・わかりきっている。
恐怖だ。
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