315 / 1,167
三章『ギア編』
第315話 餞別に言質
しおりを挟むセラが驚いたような声をあげた。
「な、ちょっと待ってくれ! キラーキラーを破壊しろと言うのか!?」
「ああ、そこまで行かれると回収は不可能になる。だから秘密保持のためキラーキラーを破壊する」
「ポラニアの遺品を私に破壊しろと言うのか」
「ああ」
「・・・・・・ッ。分かった、その場合は潔く葬ってやろう」
「損な役回りだが、それがセラの仕事だ」
「分かっている! 私は剣でその剣を振るうのはギアだ!」
セラはそう言って意気込んでいるが、正直セラにキラーキラーを仕留めきれる実力があるかと言われると不安が残るな。
「これを貸してやる。確実に破壊しろ」
「これは・・・・・・Kソード!?」
「プロトタイプだ。前にセラも使いたいと言っていただろ? それにこの剣なら退魔鉱石製のボディーを持つキラーキラーの機体を切り裂くことができる」
「本当にいいのか?」
「ああ、それだけ重要な仕事ということだ。プロトタイプじゃない完成したKソードは俺が持っているしな」
「・・・・・・ありがたく借り受けよう」
俺からKソード・プロトタイプを受け取ったセラは扉の方に歩を進める。そして何かに気づいたのか、振り向いた。
「これも可能性の話だが」
「なんだ?」
「もし仮にだが、王国領土内で勇者と出会ったら」
「・・・・・・あん?」
「倒してしまっていいか?」
俺の目的は勇者を殺すことだ。俺自身が殺さなくても俺の親衛隊が殺せばそれで俺の仕事は達成される。少し前の俺なら俺が倒すと言っていただろうが、今となってはバカな話だ。仲間に仕事を任せられねぇで何が最高の仕事だ。
「構わん、殺せるならな」
「もし勇者を倒せた場合、私が絶者になるがいいのか?」
現時点での絶者は他の絶者候補に勝った俺だ。
だがそれはあくまで仮だ。勇者を殺した者が本当の絶者だ。
俺は絶者になるのが目的じゃねぇ。勇者を殺すのが仕事だ。そして勇者を殺して現実世界に帰って仕事を再開するのが当面の目標だ。
「いいだろう。殺せるもんなら殺してみろ」
「おお! ならば! 勇者を倒した暁には、ギアを婿として貰うぞ!」
「あ? ああ? そんなことをしてなんの意味がある」
「強い者の遺伝子を残す。これ以上の意味が番にあるか?」
「ねぇな。俺は無機物だが、何とかなるのか?」
「何とかさせる! だからいいな!」
「構わねぇが(それが済んでから現実世界に帰ればいいしな)。いつになく興奮してんじゃねぇ」
「あ、ああ、すまない。言質は取ったからな! では行ってくる!」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる