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三章『ギア編』

第293話 サンライト14

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 魔王城にはあっさりと侵入できた。
 強さ至上主義が主流な魔界では強さこそが身分証明なのだ。

 魔王軍の新兵として俺は侵入する。ここからは程々に活躍しつつ諜報活動に勤しまなければならない。

 連れてきた人間のコスモと、大型魔犬のダリアについて入隊の際に何度か質問されたが、Sクラス冒険者という肩書きのお陰で特に何も言われなかった。

 形式上、人間は趣向品として、魔獣は武器として扱われた。不服な話だ。もちろんそれには意を唱えなかった、そこで感情をあらわにするようなら、そもそも俺はこの任務を任されていないのだ。

 一般の新兵よりも、多少優遇され俺たちには個室があてがわれた(通常は魔王城の端っこにある大部屋行きだ)、それは当然といえる、血を纏えばSランク上位はある魔犬をつれているのだ、九大天王直属の兵士とも遜色ない、十分な実力があると判断されたのだ。

 魔王場内でも中部あたりに来れたのは有難い話だ。
 魔王城の中心部分に近づけば近づくほど情報は密度を増し、その価値を高めていく。

 ふと、窓から見える魔王城の中心部分にそびえ立つ二つの塔に目がいく。

 ここからまだ距離があるのにも関わらずその存在感を伝えてくる。片方の塔は俺のいる建物同様な作り、つまり黒と基調とした重厚なデザインだが、もう一つの塔はこの魔王城にはそぐわない灰色だ。たぶん鉄板か何か硬い金属を打ち付けたまま外装をつけなかったのだ。

「急いで作ったのか? 情報によれば塔は一つだったはずだが・・・・・・」

 まぁいい、変化があるということはそこに何かあるということだ。いずれ赴いてみよう。

「ら、くにはいれた」
「入隊試験も無しで入れるのは有難いが、誰でも入れるような場所にはどこにでも転がっている情報しかないもんだ」
「ど、うするの?」

 珍しく仕事のことでコスモが聞いてくる。
 俺が王国の人間でここにスパイに来たことは2人には説明済みだ。やはり気になるのだろう。

「ここで働いて魔王城攻略の鍵でも握れれば、おさらばするつもりだ」
「わ、たしも、てつだう」
「ダメだ、これは危険な任務だ、それに誰が聞いているかわからない、その話は禁止だ」
「わ、かった」

 コスモはしゅんとしている。

「でも、気持ちは嬉しいぞ、ありがとう」
「う、ん」

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