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三章『ギア編』

第274話 文化の極みなんだよ仕事ってのはよ

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「パロム」
「いやぁ、久しぶりだねギア。調子はどうかな?」
「何しに来た」
「随分な挨拶だね。たまたま通りかかったから挨拶にと思っただけだよ?」

 たまたまパロムの話をしている時に、都合よく会いに来るか? それも数年ぶりに、まぁこっちとしても都合がいい。

「丁度いいところに来たな、レイの洗脳を解け」
「普通に断るよ」
「ここから逃げられるわけねぇんだからよ、構わねぇだろ?」
「ギアとレイは洗脳関係以外に契約関係でもあるんだったね」
「ああ」
「けどさ、それって何の制約もない、言っちゃえば口約束だよね、洗脳下にあるうちはレイは奴隷だ、生殺与奪の権利はボクたちが握っているんだよ」
「そうだったな」

 俺は視線を落としてレイを見る。

 身を縮め頭を抱えて震えている。俺が視線を向けるとビクッと体を震わせて涙を流して俺を見つめる。

 その顔には絶望が張り付いている。俺がレイの願いを叶える理由がないからな。だがな、違うんだよ。


「バカが」
「え?」
「パロム、お前は最高の仕事がなんだか知ってるか?」
「最高の仕事? うーん、人によって定義が変わる話をされてもボクは困るな」
「いいから答えろよ」
「そうだね、雇い主の想像以上のものを提供した時かな」
「そういうのもあるな」
「そういうのも? じゃあギアにとって最高の仕事ってなに?」
「決まってんだろ。俺が満足できるかだ」
「え、それはただの自己満足じゃ?」
「リスクを負い、達成し、報酬を受け取る。人にしかできねぇ、文化の極みなんだよ仕事ってのはよ」
「君も狂ってるね」
「不本意ながらよく言われる。だからだ、レイに仕事を任せた以上、達成して、報酬を受け取ってもらわねぇとならねぇんだ」
「じゃあ、そのリスクってのがいま来ているんだよ」
「そのリスクはリスクでも何でもねぇ、俺の『仕事』に支障が出る以上好きにはさせねぇ」
「平行線だね」

 「でも、ま」っとパロムは腕を広げる。

「洗脳は解かないよ」
「どうしてもか? 条件も出せねぇくらいにか?」
「そうだね、今のところボクが欲しいものをギアは持っていないね」
「そうかよ、じゃあとっとと消えやがれ」
「しょっぱい対応だなぁ、ポラニアとは仲良くしているのに、なんでボクの事はそう敵視するのかな」
「してねぇし、邪魔な時はポラニアだろうと出ていかせてるっつーの」
「はいはい、じゃあキラーキラーの製造頑張ってね。困ったらボクが力になるから、それだけは忘れないでね」

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