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三章『ギア編』

第273話 報酬無き仕事は無責任な趣味だ

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 魔王への報告が終わってすぐに、俺はプレハブ小屋へ赴いた。

「レイ、レイはいるか」
「はい! ここにいます!」

 レイは俺の席で優雅にスイーツタイムをキメている。

「早いお帰りですね、もっと時間のかかるものかと思っていました」
「何があったかはこの報告書を見ろ。レイもここでの状況報告をしろ」
「はい、こんなこともあろうかと私も報告書は毎日作成してました」

 俺とレイは互いの報告書に目を通す。


 俺がいる時と同程度の仕事をこなしている。

「上手く分担したようだな」
「はい!  そりゃもう大変でしたよ。それで分かったんですけどギアは働きすぎです」
「誰よりも働いてねぁ奴が上に立てるわけがねぇだろ」
「はぁ・・・・・・」
「なんだそのため息は」
「そっちも大変だったみたいですね。聖騎士大隊長のロイさんに魔法使いのルフレオさん、無傷で帰ってこれたのは九大天王の方々のお陰として、いい経験になりました?」
「なった。それでだな、今までのやり方を一新する」
「え」
「今までのは甘かった、仕事を増やす」
「ええ? ええええ!? 頭沸いてんじゃないですか!」
「熱されてねぇのに沸くわけねぇだろうが」
「本気・・・・・・ギアは冗談なんて言わないですよね。仕事を増やすんですね」
「おう」
「死にますよ沢山」
「承知の上だ」

 俺は計画書を広げる。そしてある一点を指さす。

「これを作る」
「これは・・・・・・名前はなんていうんですか?」


「キラーキラーだ」


「キラーキラーですか、いまギアが使っている機体はキラーですよね」
「ああ、いま使ってるキラーの最新型だからキラーキラーという」
「それならキラー2の方がいいんじゃないですか?」
「俺もそうしたかったんだが、ポラニアがどうしてもって言うんでな、仕方ねぇ」
「これ強いんですか?」
「強いはずだ、レイも協力するんだからな」
「え、私もですか?」
「これからキラーキラーに仕込もうとしているギミックには呪いやら魔法陣やらのノウハウが必要不可欠だ」
「私の知識が人殺しに使われちゃうんですね」
「嫌か?」
「嫌ですよ」
「だがやれ」
「やりますよ、やるしかないんですから。でも完成しても私のいない所で使ってほしいです」
「時と場合による」




「ねぇギア」
「なんだ」
「本当に全てが終わったら姉さんの所に返してくれますか?」
「当たり前だろうが、仕事には報酬が必要だ。報酬無き仕事は無責任な趣味だ」
「でも私って洗脳されているじゃないですか。全てが終わったらやっぱり奴隷でいろって言うんじゃないかなって」
「なんだ?  俺の仕事が信じられねぇのか?」
「いえ、ギアは仕事にだけは忠実ですから、きっと報酬として私を返してくれるんだろうなとは思ってるんです、けど、こう・・・・・・人殺しに加担するとなると、怖くて」
「ちぃ、なら先払いとして洗脳を解いてやろうか?」
「え、本当ですか!?」
「ああ、パロムに頼んで解いてもらってもいい(旅してわかったがここから逃げるなんて無理な話だ)」
「お願いします!」


「それはダメだよ」


「え、あ、や・・・・・・」

 レイはへたり込んで頭を抱える。
 プレハブ小屋に入ってきたのはパロムだ。

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